3. 株価低迷の主因:中国市場の深刻な課題
シスメックスは、海外の売上比率が87%にもなるグローバル企業です。その内訳は、米国(約26%)、欧州/アフリカ(約27%)、そして中国(約23%)が大きな割合を占めています。

直近の第1四半期の売上減少要因を地域別に見ると、日本と中国が目立ちます。
<日本での一過性の要因>
日本の売上は27億円減少していますが、これは一過性の要因であると説明されています。具体的には、基幹システムの入れ替えに伴い、一時的に試薬などの受注を制限した影響が出たためです。営業利益ベースでも、このシステム切り替えの影響として24億円が計上されており、これは一時的なものであるため、過度に気にする必要はないとされています。
<中国市場の「持続する」ネガティブな状況>
しかし、中国の売上減少は懸念材料です。中国では現在、政府主導の医療費抑制政策が実施されており、これにより検査機器の売上だけでなく、試薬やサービスの売上も下がっています。
この政策には主に以下の二つの動きがあり、試薬のような消耗品にまで影響を与えています。
1. 集中購買による検査単価の引き下げ
- これまでは各検査センターや大規模病院が個別に試薬などを購入していました。
- 政府主導で、消耗品を共同で仕入れるための連合軍を作り、共同仕入れを推進。
- 大量購入を背景に仕入れ価格が引き下げられ、結果としてシスメックス側の販売価格が下がってしまう状況が起きています。
2. 検査数の適正化(検査データ施設の共有)
- 日本では病院が変わると同じ検査を受け直すことがありますが、これはカルテなどのデータが共有されていないためです。
- 中国では政府主導でカルテなどの共有を行い、検査数自体を減らす動きが起きています。
シスメックスは、この中国市場における医療費抑制の影響は一過性のものとしてではなく、基本的に持続するものとして捉えているとの見解を示しています。全社売上の23%を占める中国でのネガティブな状況が続くことは、株価の評価を下げる要因となっています。
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