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シュッピン Research Memo(1):2026年3月期中間期は外部要因により減収減益。下期での巻き返しを目指す

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■要約

シュッピン<3179>はカメラや高級腕時計など「価値あるもの」に特化したEC(eコマース)企業である。中古品と新品のそれぞれのニーズの違いや商品特性の違いを生かし、中古品と新品が相互に作用し合いながら会員基盤の拡大や業績の伸びを実現してきた。最近では独自のEC買取やOne to Oneマーケティング※1、CGM※2の活用などにも取り組み、プラットフォーム型事業モデルとして進化を続けている。この数年間を振り返ると、コロナ禍が店舗売上に影響を及ぼしたほか、戦略的な在庫投資に取り組んできた「時計事業」は世界的な価格相場の下落を受けて落ち込む局面もあった。しかし、主軸である「カメラ事業」はAI活用による新たな機能の導入※3などによりECを軸に順調に業績を伸ばし、事業モデルの進化という点においては着実にステージを上げてきた。「EC小売企業から変革し、最先端テクノロジーを駆使し続けるEIC※4企業になること」を目指し、リバリューとテクノロジーの掛け合わせをさらに進化させる方向性を掲げている。

※1 顧客の購買履歴や行動履歴を読み取り、顧客一人ひとりに合わせたマーケティングを展開すること。
※2 Consumer Generated Mediaの略。掲示板や口コミサイトなど一般ユーザーが参加してコンテンツができるメディアのこと。
※3 AIMD(AI技術を用いたマーチャンダイジングシステム)や、AIコンテンツレコメンド(同社が作成し保有している大量のコンテンツ記事をAIが顧客の嗜好性を分析して配信)など。
※4 Electronic Intelligent Commerceの略。EC(Electronic Commerce)にIntelligenceを掛け合わせた同社オリジナルの標語。

1. 2026年3月期中間期の業績
2026年3月期中間期の業績は、売上高が前年同期比7.9%減の24,424百万円、営業利益が同53.5%減の939百万円と減収減益となり、売上高、各段階利益ともに期初予想を下回った。主力の「カメラ事業」及び「時計事業」がともに外部要因により落ち込んだ。「カメラ事業」ではEC売上が総じて堅調に推移したものの、新製品発売がなかったことによる影響(前年同期の反動減や買替サイクルの停滞等)が下振れ要因となった。また、「時計事業」では米国関税政策による一時的な停滞感や急激な円高進行に伴う免税売上高の減少、並びにラインナップ拡充の遅れが業績の足を引っ張った。損益面では、減収による収益の押し下げに加え、販売促進費や人件費、越境ECに関わる運送費など販管費の増加により大幅な減益となった。

2. 2026年3月期の業績予想
2026年3月期の業績について同社は、中間期業績の落ち込み等を踏まえ、通期予想を減額修正した。売上高を前期比1.8%減の51,699百万円、営業利益を同26.8%減の2,486百万円と減収減益と見込んでいる。下期業績の前提として、新製品発売による買替サイクルの活性化(カメラ事業)に加え、商品在庫の入れ替え完了に伴うラインナップ拡充効果(時計事業)を見込んでいる。特に、下期は年末商戦や年度末に向けた需要喚起が期待できるため、しっかりと需要を取り込むことで巻き返しを図る考えだ。一方、2026年3月期の期末配当については期初予想を据え置き、前期比7.0円増配となる1株当たり47.0円を予定している。

3. 今後の成長戦略
同社は毎年、向こう3ヶ年の中期経営計画を更新しており、2025年5月にも新たな中期経営計画を公表した。今回、2026年3月期の業績予想を減額修正したものの、今後の方向性に見直しはなく、2026年5月に新たに更新する予定である。引き続き「カメラ事業」のEC売上が高成長を維持し業績の伸びをけん引する計画である。一方、市況の影響を受けやすい「時計事業」はいったん保守的に見込むも、2027年3月期から回復に転じ、2本目の柱として軌道に乗せる見通しである。また、基幹システム及びデータウェアハウスへの投資を進め、今後の成長基盤を強化する方針だ。中長期的な目標としては経常利益率8%以上、ROE30%以上を目指す。

■Key Points
・2026年3月期中間期は「カメラ事業」「時計事業」がともに外部要因により落ち込み、減収減益
・2026年3月期通期予想を減額修正するも、下期での巻き返しを図る
・2026年3月期の期末配当は期初予想を据え置き、前期比7.0円増配となる1株当たり47.0円を予定
・中期経営計画では「カメラ事業」が引き続き業績をけん引。「時計事業」を2本目の柱へ成長させる方針

■事業概要

カメラや高級腕時計など価値ある「新品」「中古品」に特化したEC事業を展開

同社は、カメラや高級腕時計など「価値あるもの(新品と中古品)」に特化したEC(eコマース)企業である。EC市場の拡大などを追い風として、専門性の高い商材に特化したポジショニングやインターネットを活用した独自の事業モデルの確立により、高成長を実現してきた。最近ではAIMDやAIコンテンツレコメンドの導入など、テクノロジーを駆使した専門性の高いECサイトとして進化を続けている。

現在のWeb会員数(累計)は75.6万人に上る(2025年9月末時点)。毎月約4,600人ペースで純増を続ける会員獲得により順調に積み上げてきた。店舗数は1商材1店舗を基本方針とし、東京都内に4店舗を構えている(2025年10月末時点)。店舗も一定の業績貢献をしているが、情報発信基地としてEC事業を補完する機能を果たしている。同社における「新品」「中古品」はそれぞれに重要な役割を担っており、相互に作用しながら相乗効果を生み出してきた。

事業セグメントは、「カメラ事業」「時計事業」「筆記具事業」「自転車事業」の4つ※で構成されており、主軸の「カメラ事業」が売上高の約80%を占めている。「時計事業」については、世界的な高級腕時計相場の下落による影響からは回復したものの、足元では為替変動に伴う影響により軟調に推移しており、適切な仕入・在庫投資のための「仕組み化」を進めながら、戦略的商品ラインナップの拡充とグローバル展開により軌道に乗せる方針である。

※ カメラ事業は「Map Camera」、時計事業は「GMT」及び「BRILLER」(レディースブランドサロン)、筆記具事業は「KINGDOM NOTE」、自転車事業は「CROWN GEARS」の屋号にて展開している。ただ、自転車事業については業績不振や市場環境等を踏まえ、2026年3月末をもって完全撤退する方針である(2025年10月末をもってECサイト及び店舗は閉鎖済み)。

また、越境ECによるグローバル展開にも取り組んでおり、これまで「カメラ事業」において2017年8月に「Map Camera」にて世界最大級のオンライン・マーケットプレイス「eBay」へ出店したほか、「時計事業」においては「GMT」が2019年5月に世界最大級の高級腕時計マーケットプレイス「Chrono24」、2020年7月には「eBay」にそれぞれ出店すると、2022年には海外向け販売サポートサービス「Buyee Connect」※1を導入し、事業拡大に向けた体制を着実に整えてきた。サービスの質を重視した展開が奏功し、海外において同社のブランドが広く認知されつつある。特に「Map Camera」は、「eBay Japan Awards 2024」※2にて販売実績や顧客満足度などの総合的評価トップのセラーに贈られる「Seller of the Year」を3年連続で獲得した。2025年5月に「eBay」にてカナダ及びドイツ、10月にはイギリスへ出店した。

※1 BEENOS(株)のグループ会社であるBeeCruise(株)が運営する海外向け購入サポートサービス。
※2 イーベイ・ジャパン(株)が運営する「eBay(イーベイ)」において、上位の販売実績や顧客満足度などを達成した日本のセラー(販売者)を表彰する賞。顧客満足度では約32万件のフィードバック中、99.9%のポジティブフィードバックを獲得中である。

(執筆:フィスコ客員アナリスト 柴田 郁夫)
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