これは、清末の家産官僚制が抱えていた「構想なき権威主義」の再来とも言える。英国船焼払い事件(1840年)は、官僚が国家のためではなく、体制維持と自己保身のために動いた結果である。この事件が、清国滅亡へ繋がったことは有名だ。こうした悪しき伝統は、現代中国の官僚機構にも引き継がれている。その結果、鉱山国や先進国は中国から距離を取り、日本や他の信頼できる国々と連携関係を深めている。
日本の近代官僚制(実務主義型)と中国の家産官僚制(権威主義型)では今後、対外外交でさらに大きな違いを生むであろう。中国の政治制度が権威主義(専制主義)である以上、家産官僚制は改まらないからだ。日本へのレアアース輸出禁止は、中国家産官僚制がもたらした「亡国的政策」となろう。日本が、ますます重要鉱物特恵市場充実へと加速するからだ。これが、中国のレアアースを巡る外交的位置を押し下げるであろう。
日本への協力で25ヶ国
日本が、具体的にレアアース資源確保に向けて動き出したのは、23年6月に策定された「GX(グリーントランスフォーメーション)を見据えた資源外交の指針」に基づくものである。この選定は、以下の4つの視座に基づいて行われた。
- 潜在的資源量と経済性 銅、リチウム、ニッケル、コバルト、レアアースなどの埋蔵量と採掘コスト
- インフラ整備状況と輸出余力 港湾・道路・電力などの整備状況と、安定的な輸出能力の有無
- 脱炭素社会構築への貢献可能性 EV、再エネ、蓄電池などのグリーン産業に資する鉱物の供給力
- 日本との関係性と成長余地 政治的安定性、二国間関係、技術協力の可能性、現地企業の受容性など
これらの観点から、JOGMECの分析や日本企業の関心度なども踏まえて、日本への資源・燃料の供給潜在力が高い国々が選ばれた。
経済産業省が選定した「重点資源国」25カ国(鉱物資源関連)は、次の通りである。
地域:国名
アジア:インド、フィリピン、インドネシア、ベトナム、タイ、マレーシア
オセアニア:オーストラリア、パプアニューギニア
北米:アメリカ、カナダ
中南米:アルゼンチン、チリ、ブラジル、ペルー
中東:サウジアラビア、アラブ首長国連邦、オマーン、カタール
アフリカ:ナミビア、ザンビア、コンゴ民主共和国、南アフリカ、モザンビーク、マダガスカル
欧州:ノルウェー
これら重点資源国25ヶ国をみると、先進国はアメリカ、カナダ、オーストラリア、ノルウェーだけである。後はグローバル・サウスの国々だ。これら諸国にとって、日本が「重点資源国」として明確に位置づけていることは、「自国を信頼し、長期的なパートナーと見なしている」という強いメッセージになっていることである。
前記のグローバル・サウスの国々はこれまで、中国へ鉱石を売る以外に方法がなかった。それが、日本の化学的精錬法技術によって、自前で精錬が実現することで、経済的にも大きな意味を持っている。高市首相が、今回の衆院選で大勝したことで、海外首脳からの多数の祝意が寄せられた。その中には、まだ会見していない30人以上の首脳による祝意があった。これには、日本から重点資源国に指定された国の首脳が含まれているのであろう。
鉱山国が、日本の味方になろうという視点はなんであろうか。まず、日本への信頼性と予測可能性の高さであろう。日本は契約を守り、政治的な恫喝や一方的な制裁を行わない国として、国際的に高い信頼を得ている。鉱山国にとっては、長期的な安定供給先として非常に魅力的な存在であるにちがいない。製品買い叩きの懸念がないからだ。
次は、日本から技術・投資・人材育成の支援を期待できることだ。日本は単に資源を買うだけでなく、採掘技術の提供、精錬施設の建設支援、現地人材の育成など、持続可能な産業基盤の構築に貢献している。これは、中国による「資源の囲い込み」と極めて対照的な存在である。
中国には、「威圧外交」という他国を恫喝する警戒感がつきまとっている。中国のように、政治的紛争を経済的圧力へ転化する外交姿勢は、他国の警戒心を高める要因になる。今回は、日本企業を名指しで輸出規制している。鉱山国にとって、「明日は我が身」と映る可能性が強いのだ。こういう政治リスクを避けるには、中国と関係を深めないことが、最大の防御策になる。
将来の日本への市場アクセスも評価点になっている。日本はEV、半導体、再エネなどの先端産業を牽引している。特に、日本が最先端半導体ラピダスを育成強化している信頼感が好影響を与えているのだ。鉱山国にとっては、確実に「自国の資源が高付加価値製品に変わる」ことで、より大きな経済的リターンを期待できるにちがいない。