■シンカ<149A>のカイクラ事業の特徴及び強み
カイクラ事業は、コミュニケーションプラットフォーム「カイクラ」をクラウドサービスにより提供している。サービスの特徴及び強みは以下のとおりである。
1. 「カイクラ」の3つの機能
(1) コミュニケーション履歴統合(カイクラコミュニケーション)
固定電話や携帯電話、SMS、メール、ビデオ通話、LINEをはじめとするメッセージアプリなど、様々なコミュニケーションの履歴を自動的に記録・整理し、顧客情報と紐付けて、クラウド上で一元管理できる。音声通話は自動で録音及びテキスト化される。さらに要約や感情ラベリング※1、タスク抽出※2などの視点でAI分析できるところに大きな特徴がある。
※1 通話内容から感情の起伏を読み取り、「喜び」や「怒り」といったラベリングを行う。
※2 フォローアップ事項を自動で抽出できる。
(2) クラウドCTI(カイクラCTI)※
固定電話への着信時に、紐付けられた顧客情報とコミュニケーション履歴がPCやタブレットに自動的にポップアップされる。検索の手間が省け、顧客対応が効率化されるうえ、顧客を特定して電話対応できるため、上質なおもてなし対応が可能となる。
※ CTI(Computer Telephony Integration)とは、電話やFAXとコンピューターを連携させるシステムのこと。
(3) クラウド電話(カイクラフォン)
2025年1月より開始したサービスである(現在は改良版をテストマーケティング中)。PCやスマートフォンアプリを用いて、「カイクラ」から固定電話の発着信ができる。オフィス以外でも固定電話の発着信が可能なため、テレワークや外出先での効率的な電話対応が実現できる。一般的なクラウド電話との違いは、カイクラCTIが標準搭載されているところである。
2. カイクラ導入効果
(1) 顧客対応の効率化
「カイクラ」の導入により煩雑なコミュニケーションコストを圧縮できる。例えば、顧客検索の手間の削減、「言った、言わない」の防止、MA(マーケティングオートメーション)機能による一斉自動連絡など、顧客対応時の手間を大幅に削減できる。
(2) 顧客満足度(CS)の向上
スピーディーな対応は顧客満足度を高める要素となるうえ、顧客情報との紐付けにより顧客へのおもてなし対応が可能となる。
(3) 従業員満足度(ES)の向上
クレーム対応がスムーズとなり、従業員満足度も向上する。
3. 選ばれる理由(差別化要因)
(1) 幅広いコミュニケーションチャネルに対応
他社が単一もしくは限定されたチャネルを対象としている一方、「カイクラ」は多様なコミュニケーションチャネルに対応している。とりわけ固定電話に対応できることや携帯電話も取り込んでいるところに強みがある。また、複数のコミュニケーションチャネルを一元管理ができることや、固定電話とSMS、もしくは固定電話とビデオ通話といったアナログとデジタルをシームレスにフル活用できるところが特徴的と言える。
(2) サービスの継続性
他社を利用する場合、サービスの乗り換えが前提となる一方、「カイクラ」は現在利用している環境を変更せずに利用可能であり、顧客にとってはカイクラ導入のハードル(スイッチングコスト)が低いところにメリットがある。
(3) クラウド電話にCTIが標準装備
他社は電話のクラウド化に対応しているにすぎないが、「カイクラフォン」にはCTIが標準装備されている。
(4) 顧客情報の紐付け
他社の場合、顧客情報とコミュニケーション履歴の紐付けが困難である一方、「カイクラ」はそれらを自動で紐付ける機能が備わっている。
上記(1)~(4)の要素をすべて備えているサービスはほかにはなく、「カイクラ」はユニークなポジションを確立している。では、他社が模倣できない理由は何かと言えば、
1) 電話番号を変えずに利用できるアダプターを開発するスキル
2) アダプター設置のための全国規模の工事網の構築
3) 心理的なハードル(今さら電話回線などにかかるスキルの習得やハードウェア開発に積極的に取り組むモチベーションが働かない)
などであり、これらが同社のユニークなポジションを作り上げている。さらに今後は6億件以上の会話データの蓄積とAI機能を組み合わせたソリューションの提供が、他社にとってますます追い付けない障壁になると考えられる。
4. 導入実績及び業種構成
2025年12月期末の導入企業数は3,182社、拠点数は6,202拠点となっており、全国規模で展開している。導入企業の業種構成は、自動車関連業界が37%、医療・介護業界20%、不動産業界が15%と上位3業種で70%超を占めており、特にこれまでは自動車業界(自動車ディーラーなど)をメインターゲットに拠点数を積み上げてきた。今後は、第2の柱として不動産業界にも注力するとともに、販売チャネルの強化を通じて対象市場を広げる戦略である。
5. 販売チャネル
これまでは直販を中心として中規模企業にアプローチをかける一方、大企業に対しては販売パートナーであるNTT<9432>グループとの協業でカバーしてきた。今後は、大塚商会<4768>やSB C&S(株)などを加えた販売パートナー※との協業や、OEM提供を通じた販売チャネルの強化により拠点数の拡大に拍車をかける考えだ。
※ 2024年7月に大塚商会、2024年8月にソフトバンク<9434>の100%子会社であるSB C&Sと販売代理店契約を締結した。
6. 料金体系
最大の特徴は、拠点単位のライセンス体系となっていることである(1つの拠点内で、何人使っても料金は変わらない)。導入時の1拠点当たりの初期費用(定価)は約33万円、月額費用(同)は約5万円※となっている。また、月々のランニング費用としては月額費用(定額)のほかに、従量課金(各種オプションやSMS、カイクラフォンの使用量に応じたもの)が追加される。なお、現在の月額費用(約5万円)とARPA(約1.9万円)との差異については、1)過去契約分(低い料金体系)及び2)単価の安いOEMの2つの要因が影響している。したがって、2)による影響を除くと、今後は従量課金による上乗せ分に加え、新規契約の積み上げや値上げ効果によりARPAが上昇する余地が大きい。
※ 「カイクラ スタンダードプラン」の初期費用及び月額費用の定価
7. 収益モデル
拠点数拡大とARPA向上が業績の伸びをけん引するストック型の収益モデルである。同社KPIとして、1)顧客数、2)ARPU、3)拠点数、4)ARPA、5)ARR、6)平均月次解約率をモニタリングしている。なお、これまで拠点数を順調に積み上げることができたのは、著しく低い解約率(直近四半期の平均月次解約率は0.16%)も大きく寄与しており、「カイクラ」に対する満足度の高さ(カスタマーサクセスチームによる寄り添った対応など)はもちろん、ユーザーの業務にしっかりと組み込まれていることを実証するものとして評価できる。
8. 収益構造
原価は労務費、サーバ利用料、外注費で構成されるが、売上総利益率は80%を超える水準で推移しており、SaaS特有の収益性の高いサービスと言える。一方、販管費には人件費のほか、サービス開発費や広告宣伝費などの先行費用が含まれており、コスト戦略が営業利益率の水準を決定する。したがって、売上成長と利益率改善のバランスをどう取っていくのかがポイントとなるが、そもそも変動費率が著しく低いうえ、固定費負担も少ない事業特性から、売上高の拡大とともに利益率は大きく改善する可能性を秘めている。
(執筆:フィスコ客員アナリスト 柴田 郁夫)
いま読まれてます
記事提供: 
元記事を読む