かつて回転売買に明け暮れた筆者は、バブル崩壊を経て長期投資へと舵を切った。その過程でたどり着いたのは、市場から見放され、低評価に放置された「安い銘柄」にこそリターンの源泉があるという考え方だ。本稿では、その代表例として食品セクターに着目し、成長性の乏しさやイメージの悪さゆえに敬遠される企業群が、なぜ長期投資において有利に働き得るのかを、配当・需給・市場構造の観点から整理する。(『鈴木傾城の「フルインベスト」メルマガ編』鈴木傾城)
※有料メルマガ『鈴木傾城の「フルインベスト」メルマガ編』2026年4月6日号の一部抜粋です。ご興味を持たれた方はこの機会にバックナンバー含め今月すべて無料のお試し購読をどうぞ。
プロフィール:鈴木傾城(すずき けいせい)
作家、アルファブロガー。政治・経済分野に精通し、様々な事件や事象を取りあげるブログ「ダークネス」、アジアの闇をテーマにしたブログ「ブラックアジア」を運営している。
株式市場で「博打」をやっていた
若い頃の私は馬鹿げたほど株の回転売買をしていた。まぎれもなく博打だった。たまたま時代がバブルだったのでそれでも何とかなったのだが、いま考えるとそんなことをしなくてもただ黙って持っているだけのほうがずっと資産を増やせただろうと思う。
1990年にバブル崩壊したあと、何をしても勝てなくなりやがて株式市場からも離れてしまったのだが、そのあいだに私も大人になったのか、2000年代の後半から米国株で株式市場に戻ったときは完全に長期投資派になっていた。
最初からそうであれば良かったが、自分のスタイルがわかるまでは試行錯誤も必要だったのかもしれない。私が落ち着くのは、今は傷つき、皆から見捨てられて放置されているが、しぶとく生き残って株主に還元してくれる「安い銘柄」だ。
見捨てられている銘柄にも価値はある
思えば私は社会から見捨てられている人たちや社会から嫌われている人たちと一緒に過ごしてきたし、そういう人たちにたまらなく愛や共鳴を感じる。だとしたら、株式投資でも他の投資家に嫌われている企業や、見捨てられている企業のほうに関心が向くのも当然だったのかもしれない。
皮肉なことだが、世間から嫌われていても見捨てられていてもしぶとく生き残って投資家に報いている企業やセクターは山ほどある。
そもそも、株式市場では、注目されていない領域ほど「長期的なリターンが高くなる」という事実が繰り返し確認されている。米国市場では1970年代以降、低PER銘柄群は高PER銘柄群を年平均で約3~4%上回る成績を残しているのだ。
なぜ、こんなことになるのか。答えはシンプルだ。人気のある銘柄には期待が織り込まれすぎており、逆に人気のない銘柄には過剰な悲観が織り込まれている。この「ゆがみ」が時間とともに修正されることで、リターンの差が生まれるのだ。
さらに、高配当銘柄の優位性も無視できない。S&P500の長期リターンのうち、配当再投資が占める割合はおよそ40%前後に達している。つまり、株価の値上がりだけではなく、安定した配当収入こそが資産形成の中核を担っているという現実がある。
そういう「優位性」が、見捨てられたセクターや銘柄にはある。だから、私は派手派手しい話題をさらっている銘柄よりも、むしろそういう銘柄を持ちたいという気持ちが強い。
そういう観点で、いま時点で私が注目しているセクターや銘柄は「ここ」にある。
砂糖水、ジャンクフード、タバコへの嫌悪
今、市場から資金が抜け落ち、評価が意図的に抑え込まれている領域があるとしたら、それは「食品」セクターにあると私は考えている。
近年では、GLP-1受容体作動薬の普及が食品需要を減少させるという見方が広がり、肥満や食欲にかかわる消費行動そのものが変わるという前提で、食品企業の将来性がひたすら低く見積もられている。
実際、食品セクターの企業群の売上成長率は年2~4%程度にとどまり、急拡大するビジネスモデルも存在しない。投資家が好むのは年10%以上の成長が見込める企業であり、この時点で食品企業は投資対象から外される。
S&P500における情報技術セクターの売上成長率が年8~12%で推移しているのに対し、食品関連企業はその半分以下にとどまっている。この差が評価の差としてそのまま反映されているのだ。