マンション向けインターネット回線の販売を手がけてきた株式会社ブロードエンタープライズ(4415)。一見よくあるWi-Fiの会社と思いがちですが、実は同社は近年、独自の金融スキームを武器にサービスを拡大し、急成長を見せています。過去6年間で売上高は年平均36%成長し、26年12月期にはついに100億円の大台に挑みます。経営陣のコミットも凄まじく、将来的には米国進出までを見据えているそう。いったい、驚異的な成長率の背景には何があるのでしょうか。今回は、ブロードエンタープライズ社の畑江一生常務取締役にインタビュー取材を行い、成長を支える「BRO-ZERO」の仕組みと成長戦略の全貌に迫りました。(『勝ち株ガイド | Invest Leaders公式メルマガ』石塚由奈)
取材・執筆:石塚 由奈(いしづか ゆうな)
日本投資機構株式会社 経済メディア『インベストリーダーズ』編集、証券アナリスト(CMA)、テクニカルアナリスト(CMTA®)。国内株式、海外株式、外国為替の領域で経験豊富なアナリスト・ファンドマネージャーのもと、金融市場の基礎・特徴、マクロ経済の捉え方、個別株式の分析、チャート分析、流動性分析などを学びながら、日本投資機構株式会社では唯一の女性アナリストとして登録。自身が専任するLINE公式など各コンテンツに累計7,000名以上が参加。X(@yuna_investment)のフォロワー数も3万人を超える人気アナリスト。
成長の起爆剤「初期導入費用ゼロ円」はこう生まれた
2000年に大阪で創業されたブロードエンタープライズ社。当初は、NTT西日本の光ファイバー回線「Bフレッツ」の販売代理店としてスタートしました。2005年からは、マンション居住者が無料で使えるインターネット「B-CUBIC」を自社開発し、全国に広げてきました。
マンションオーナーにとって、空室率の改善は大きな課題です。自身で契約せずとも無料でWi-Fiを使えることは入居者にとって大きなメリットとなり、空室率の改善に寄与します。
しかし、このサービスが当たり前になるとともに競合は増え、価格競争が激しくなっていきました。
<サービスの普及で価格競争が激化>
当時「B-CUBIC」が抱えていた問題について、畑江氏はこう語ります。
「インターネット無料設備は、賃貸マンション業界ではかなり認知が上がって、サービスとしては当たり前の位置づけになってきました。他社でもできることは当社でもできるし、当社ができることは他社でもできる。結局価格勝負になって、利益の削り合いになってしまうんです」
そこで代表取締役社長の中西良祐氏が発案したのが、初期導入費用ゼロ円モデルでした。インターネット回線をマンションに導入するにあたって、従来はオーナーが120万円といった工事費用を自前で用意する必要がありました。ブロードエンタープライズ社は、この費用を毎月の分割払いで支払える仕組みを作りました。具体的には、同社がいったん資金を準備して立て替え、マンションオーナー側は現金の用意も借入やローン、各種リース契約も不要となる仕組みです。金融機関の審査を受ける必要もなく、与信枠・融資枠を使わずに済むので、スピーディーに導入を進められます。従来の資金調達では避けられたなかった審査待ちや融資枠の消費がなくなり、多くの不動産オーナーに支持されるファイナンススキームとなりました。
<ゼロ円モデルを支える「債権流動化」>
資金を立て替えた後、同社はオーナーとの契約で発生した売掛債権(毎月の分割払いを受け取る権利)を金融機関にまとめて売却します。これが「債権流動化」と呼ばれる手法で、同社は将来の入金を待たずに即座に現金を手にでき、その資金で次の工事に取りかかれます。オーナーは頭金ゼロで設備を導入でき、金融機関は安定した利回り商品を取得できる。この3者にメリットがある仕組みが、他社にはない差別化ポイントになりました。
なお、金融機関へのスムーズな売却のために、債権流動化の際には工夫も施されています。ブロードエンタープライズ社は債権を「優先部分(約9割)」と「劣後部分(約1割)」に分けて流動化を行っており、劣後部分を自社で引き受けることでリスクの低い優先部分を金融機関が安心して購入できるようにしています。さらに、様々なオーナーとの契約で発生した売掛債権をまとめて流動化することで、特定顧客への偏りを防ぎリスクを分散。これらの工夫によって高い格付けを取得し、流動化にかかるコストを抑制しています。
<オーナーの一言から生まれたリノベーション事業>
「債権流動化」の仕組みに支えられた初期導入費用ゼロ円モデルは、さらなる広がりを見せます。
「ある時マンションオーナー様から、この初期導入費用ゼロ円モデルをリノベーションに使えないか、という話が出たんです。それなら1回やってみます、というところから(初期導入費用ゼロ円でリノベーションができる)BRO-ROOMが生まれました」と畑江氏は語ります。
古い物件は、どうしても新しい入居者に選ばれづらくなってしまいます。しかしリノベーションをするには、融資が下りなかったり費用がかかりすぎてしまったりする。そんなマンションオーナーの課題を解決するため、2023年7月に「BRO-ROOM」の販売が開始されました。

「BRO-ROOM」の活用事例
https://broad-e.co.jp/bro-room/より引用
<初期導入費用ゼロでリノベも外壁塗装もできるように>
リノベーション事業を始める上では乗り越えるべき壁もありました。
「管理体制を整えたり、有資格者を採用したり、会社として必要な許認可を取ったりということが必要になります。そこはWi-Fiビジネスとは違うところですね」と畑江氏は説明します。
同社は特定建設業許可を取得し、建築士や施工管理技士などの専門人材を確保。2024年10月には外壁塗装・修繕工事の「BRO-WALL」もスタートさせ、内装から外装まで一気通貫で手がけられる体制を築きました。サービスを開始した23年12月期には3億2,700万円だったBRO-ROOMの売上高は、25年12月期にはBRO-ROOMとBRO-WALLを合わせて38億4,800万円にまで成長しています。
6年間で年平均36%成長、100億円の大台へ
こうした事業拡大の結果、25年12月期の売上高は前期比57.8%増の74億1,300万円に拡大しました。10期連続の増収・過去最高を更新し、直近6年間の年平均成長率(CAGR)は36.1%に達しています。
さらに26年12月期は売上高100億円(前期比34.9%増)、営業利益17億円(同73.9%増)を見込んでいます。中期経営計画の当初目標であった売上高74億8,000万円を大幅に上回る100億円の大台に到達する計画です。
<ストックオプション「達成が当たり前」の手応え>
ブロードエンタープライズ社では、26年12月期・27年12月期の2期合計で経常利益25億円の達成を行使条件として、有償ストックオプションが取締役執行役員に付与されています。26年12月期の経常利益見通しが11億円なので、来期に14億円の上積みが求められます。
これについて、畑江氏は「2期合計25億円に関しては、達成するのが当たり前という心意気でいます」と話しました。経営陣が自らの報酬をかけて利益目標にコミットしている点は、個人投資家にとって心強い材料です。
さらに同社は、税引後当期純利益が5億円以上となった場合、配当性向20%を基本とする方針を掲げています。26年12月期の純利益予想6億5,000万円が達成されれば、上場以来初となる配当(1株当たり約21.16円)が開始される見込みです。



