■成長戦略
1. 中期経営計画(2025~2027)
加藤製作所<6390>は2025年3月に中期経営計画(2025~2027)を策定した。テーマに「飛躍、そして次の時代へ」を掲げ、基本方針は企業価値の向上、成長戦略の推進と有効投資、収益性のさらなる向上、サステナビリティ経営の実践としている。目標値として、1期目の2026年3月期は売上高570億円、営業利益17億円、営業利益率2.9%、ROE3.7%、2期目の2027年3月期は売上高660億円、営業利益25億円、営業利益率3.7%、ROE5.4%、最終年度の2028年3月期は売上高790億円、営業利益36億円、営業利益率4.5%、ROE8.0%を掲げている。これに対して2026年3月期は財務体質改善に向けた弾力的な販売施策に加え、一過性要因も影響して計画未達となった。2027年3月期もこの販売施策を継続するため計画未達の見通しとなっている。ただし2028年3月期については在庫水準適正化が進展し、弾力的な販売施策から転じて販売価格適正化施策を強化する方針のため、現時点では当初計画を据え置いた。また次期中期経営計画では、将来のありたい姿に「あらゆるステークホルダーから共感と支持を得られる企業へ」「更なる飛躍と持続的な成長の実現」を掲げ、売上高1,000億円超、営業利益率5%以上の達成を目指す。
企業価値を向上するため、PBR1倍割れの解消を目指し、重点領域への集中投資及び低ROIC事業の戦略再構築(インド事業開始、中国事業撤退など)により収益性と資本効率の向上を図るとともに、資本市場との対話促進や株主還元の強化なども推進し、株主資本コスト(現状想定7.5%程度)を上回るROE8.0%、WACC(現状想定4.5%程度)を上回るROIC5.0%の実現を目指す。株主還元については1株当たり配当金の下限を70円に設定し、一過性損益を除いた経常利益の30%を目安に配分する方針だ。また資本政策を加味しつつ、発行済株式数の5%を目安にした自己株式取得も検討する。
成長戦略の推進と有効投資を進めるため、業績伸長に向け事業力を強化・拡大する。具体的な取り組みとして、国内では営業・サービス拠点の再編、マーケティング強化、環境配慮型製品の開発・市場投入、工場のDX推進など、海外ではインド事業の確立、インドを起点にしたアジア・中東での販売拡大、販売ネットワークの強化・拡充などを推進する。インドでは2026年4月に合弁会社ACE KATOを設立し、インド国内及び海外市場向けの移動式クレーンの生産拠点とする。また欧州では2025年5月にイタリアの子会社KATO Construction Machinery Europe S.p.A.(イタリア)への出資比率を引き上げた。日本国内での研究開発強化と生産設備への投資、アジア展開拠点のインドへのシフト、欧州市場での競争力強化、北米での販売ネットワーク強化などにより、グループシナジーを高めてグローバル展開を加速する。なお海外売上高比率については本中期経営計画では30%超、次期中期経営計画では40%超を目指す。
収益性のさらなる向上を目指し、マーケットインによる新機種投入や製品ラインナップ拡充、HV型建設用クレーンや電動型小型建機など環境配慮型製品の市場投入、遠隔操作・自動運転・画像処理といった新技術・新機能の強化、サービス拠点の再編や物流の強靭化により付加価値を提供していく。製造コスト・間接費用の削減としては開発プロセス強化による部品点数削減、生産体制見直しと生産設備投資による製造効率改善、サプライチェーンの拡充、インドにおける低コストモデル製品の開発、全社的な業務効率化などを推進する。
サステナビリティ経営の実践では、5つのマテリアリティ(「社会を豊かにするイノベーションの創出」「持続可能な地球環境への貢献」「働きがいのある職場づくり」「サプライチェーンの強化」「責任ある組織体制の確立」)に取り組むことで、あらゆるステークホルダーから共感と支持を得られる企業を目指す。環境配慮型製品の開発では、建機のサイズにあわせて環境配慮モデルを順次投入し、2051年3月期にカーボンニュートラルを目指す。さらに2026年6月に群馬工場にて太陽光発電の運転を開始したが、これらの省エネ活動の取り組みによって、2031年3月期での達成目標に掲げていた2019年3月期比CO2排出量38%削減を2027年3月期に前倒し達成する見込みだ。社会貢献活動では、能登半島地震復興支援としてショベルカーの無償講習や日本航空大学校 石川への建機寄贈などを行った。人的資本投資関連では2025年9月に、同社の従業員を対象とした「従業員持株会支援信託ESOP」の導入(信託期間は2025年12月〜2030年11月の予定)を決議した。
配当は一過性損益を除いた経常利益の30%を目安
2. 株主還元策
株主還元については、本中期経営計画では1株当たり配当金の下限を70円に設定し、一過性損益を除いた経常利益の30%を目安に配分する方針としている。この方針に基づいて2026年3月期の配当は前期と同額の70.0円(第2四半期末35.0円、期末35.0円)とした。2027年3月期の配当予想は前期と同額の70.0円(第2四半期末35.0円、期末35.0円)としている。なお自己株式取得については、2025年5月15日~6月11日に400,000株を取得、同年11月14日に東証の自己株式立会外買付取引(ToSTNeT-3)によって200,000株を取得した。
2028年3月期からの収益回復本格化を期待
3. 弊社の視点
同社は、基本方針として掲げている「株主などのステークホルダーを意識した経営」に向けて、新製品投入による競争力強化、在庫水準適正化による収益性向上、インドを起点とするアジア展開、さらに株主還元の強化といった重点施策については評価するべきだろうと弊社では考えている。また2027年3月期の業績は回復途上の形だが、2028年3月期については在庫水準適正化が進展し、弾力的な販売施策から転じて販売価格適正化施策を強化する方針のため、収益回復が本格化することが期待される。したがって引き続き新製品開発・販売の強化、販売価格の適正化、原価低減や業務効率化、インド事業の立ち上げ、欧州事業の基盤強化、新たなM&Aなど、中長期的な収益性向上施策の進展に注目したいと弊社では考えている。
(執筆:フィスコ客員アナリスト 水田 雅展)
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