セブン&アイを迷走させた「10年間のリーダーシップ不在」
なぜ、王者はここまで苦境に立たされたのでしょうか。
私はその根本的な原因が、この10年間にわたる「リーダーシップの不在」にあると考えています。
大きな転換点は2016年でした。
セブン-イレブンを日本に根付かせた中興の祖、鈴木敏文氏が退任した出来事です。
当時、創業家である伊藤家との間で、経営方針を巡る対立があったとされています。
鈴木氏は食品開発力を武器に国内を固めるべきだと考え、一方でその後の経営陣は海外へと目を向けていきました。
鈴木氏という強力なリーダーを失って以降、セブン&アイの経営の歯車が噛み合わなくなっていったように感じます。
創業家と雇われ社長の対立、そしてアクティビストの圧力
鈴木氏が去った後の10年間は、創業家の意向と資本の論理がぶつかり合う闘争の期間でした。
創業家は、素業であるイトーヨーカ堂の食品開発力がコンビニの強みを支えていると信じ、その切り離しに抵抗してきました。
しかし、投資家の目から見れば、不採算のスーパー事業はコンビニの利益を食いつぶす重荷でしかありません。
2020年以降は、アクティビストである「バリューアクト」などが参入し、「コンビニ事業に集中せよ」「非中核事業を整理せよ」という強い圧力がかかりました。
カナダのコンビニ大手「アリマンタシォン・クシュタール」からの買収提案なども話題になりましたが、結局は創業家によるMBO(マネジメント・バイアウト)構想も資金調達の難航から頓挫するなど、経営の方向性が定まらないまま時が過ぎていきました。
投資家が注視すべき「正念場」のポイント
ようやくイトーヨーカ堂の切り離しが決まり、2025年からは初の外国人トップであるデイカス氏がCEOに就任するなど、体制は一新されようとしています。
しかし、未だに「リーダーらしいリーダー」がいるのかという点については未知数です。
セブン-イレブンが日本で成功したのは、鈴木敏文氏が毎週、全国のオーナーを集めて会議を行い、地道な努力で「セブン流の考え方」を叩き込み、一種の宗教的とも言える強い文化を作り上げたからです。
これを価値観も文化も異なる北米で再現しようと思えば、当時以上のエネルギーが必要となります。
単に「フランチャイズを増やせば儲かる」という単純な話ではありません。
セブン&アイは、日本が世界に誇るシステムと文化を持った素晴らしい企業であることは間違いありません。
しかし、そのポテンシャルを再び解き放てるかどうかは、まさに今が正念場です。
国内の「コンビニ離れ」にどう打ち手を講じるのか、そして北米で「食の輸出」を本当にやり遂げられるのか。
不透明感は依然として強いですが、この巨大なインフラが新しい時代に即した形に生まれ変われるのか、投資家としてその熱量と実行力を冷静に見極めていく必要があります。
YouTubeでも詳しく解説しておりますのでそちらもぜひご覧ください。
※上記は企業業績等一般的な情報提供を目的とするものであり、金融商品への投資や金融サービスの購入を勧誘するものではありません。上記に基づく行動により発生したいかなる損失についても、当社は一切の責任を負いかねます。内容には正確性を期しておりますが、それを保証するものではありませんので、取り扱いには十分留意してください。
『 バリュー株投資家の見方|つばめ投資顧問 バリュー株投資家の見方|つばめ投資顧問 』(2026年7月8日号)より※記事タイトル・見出しはMONEY VOICE編集部による
無料メルマガ好評配信中
バリュー株投資家の見方|つばめ投資顧問
[無料 ほぼ 平日刊]
【毎日少し賢くなる投資情報】長期投資の王道であるバリュー株投資家の視点から、ニュースの解説や銘柄分析、投資情報を発信します。<筆者紹介>栫井駿介(かこいしゅんすけ)。東京大学経済学部卒業、海外MBA修了。大手証券会社に勤務した後、つばめ投資顧問を設立。