■ダイナムジャパンホールディングス<06889/HK>の2027年3月期の事業方針
1. パチンコ事業
(1) 事業方針
同社は2027年3月期の事業方針として、パチンコ事業では客数回復に向けた還元増加施策やSNSを通じた広告プロモーション施策を継続することで、収益回復を目指す。還元増加施策によって粗利率は低下するものの、客数及び貸玉収入の増加でカバーし、事業収入の増加につなげていく戦略である。
パチンコ機の稼働率が前期低迷した要因として、射幸性を重視した新機種が市場に多大に投入され、顧客ニーズとギャップが生じていることが一因と見られる。実際、業界団体が実施したアンケート調査によれば、娯楽として気軽に遊べるパチンコ機種を求める声が増えている。こうした声を反映して、メーカー側でも娯楽性を重視した新機種の開発に方針転換し始めている。ただし、これら新機種の市場投入は早くても2026年末ごろとなる見通しであることから、それまでの期間は稼働率の高いパチスロ機の増設を先行させることで、事業収入の堅調な維持及び拡大を図る方針を掲げている。
(2) 出店方針
出店計画については、引き続き優良な売り物件を対象にM&Aを検討するものの、財務状況を勘案して慎重に判断する方針に変わりはない。同方針に基づき、2026年4月に1店舗(修善寺店)をM&Aにより取得した。設置台数350台の小型店舗であるが、商圏内で唯一のパチンコ店であり、地域密着型の強固な営業基盤を有することから、子会社の(株)キャビンプラザが事業承継を行っている。
一方、閉店状況については、2026年6月までに6店舗の閉店(愛知県2店舗、大阪府、石川県、富山県、香川県で各1店舗)を実施した。人口減少が進む地方圏では、競合店とも協議しながら双方が相乗効果を得られる形で店舗の継続または閉店を決定するケースも出てきており、当面は店舗当たり収益力の回復を優先していく。
(3) 事業費用の見通し
2027年3月期の事業費用として、遊技機購入費について前期から12〜13%程度の削減を見込んでいる。これは、貸玉収入の確実な拡大に寄与し、1台当たりの粗利益を安定的に確保できる定番の人気機種へ投資を厳選して進める方針によるものである。購入額自体は減少するものの、前期における購入額の増加に伴い、減価償却費ベースでは一転して増加する見通しである。また、水道光熱費についても原油高の影響に加えて電力料金の値上げが予定されており、前期比で数億円程度の増加が見込まれている。一方で、店舗人件費に関しては、引き続きオペレーションの抜本的な見直しに伴う総労働時間の削減及び人員の最適配置を推進することで、上昇の抑制を図る方針を維持する。
(4) スマート遊技機の特徴と導入メリット
2022年11月から導入が開始されたスマート遊技機は、メダルや玉に直接触れずに遊技できる点が特長である。パチンコでは玉が遊技機内で循環し、スロットではメダルを使用せず、いずれも出玉情報は電子情報として保存される仕組みとなっている。また、遊技機設置情報や出玉情報は、業界の健全化を推進するため、遊技機メーカー組合が設置する「遊技機情報センター」へ送信され一元管理される。
スマート遊技機のメリットは、ユーザー視点では規制緩和によって遊技機の開発の自由度が広がり、スペックの大幅な向上によって出玉・メダルの獲得期待値やゲーム性が高まること、玉・メダルレスになることで利便性と感染症対策への安心感が向上する点などが挙げられる。
店舗側のメリットとしては、玉・メダルの持ち運びや洗浄が不要となり、店舗スタッフの業務負荷軽減となるほか、島設備(補給機装置等)が不要となるため、新規店舗では初期投資負担の軽減、既存店舗ではランニングコストの削減につながる。さらに店舗レイアウトの自由度も増し、既成概念に囚われない店舗づくりによって新たな顧客層の開拓余地が生まれるといった点も挙げられる。
パチンコホール業界全体としては、出玉情報等を外部の第三者機関で一元管理することによって、セキュリティ強化や不正遊技の撲滅、のめり込み防止対策となり、業界の健全化が一層進むことで遊技者人口の増加につながると期待されている。
2026年6月時点におけるスマート遊技機の設置率は、業界全体でスマスロが60%台、スマパチが20%台と見られ、当初の想定よりもスマパチの普及スピードがやや遅れている。スマスロについては、メダルを使用して遊技するジャグラータイプが一定割合残るため、当面は60%台で頭打ちになると見られる。一方、スマパチについては、今後緩やかな上昇が予想される。将来的にはスマート遊技機にすべて置き換わる方向性であることに変わりはないことから、同社では今後もスマート遊技機の動向を注視し、商機を逃さないよう適切なタイミングで投資を継続するとしている。
(5) 新たな取り組み
同社は閉店店舗及び人材の有効活用による収益性改善を目的として、新設した子会社のネクストプレイズを通じてクレーンゲーム事業に新規参入する方針を明らかにした。ファミリー層を主要ターゲットに据え、景品の約80%を生活必需品が占めるスーパーマーケット型のクレーンゲーム専門店「クレーンマート」を展開する。日常的な購買行動とアミューズメント要素の融合を図ることで、地域密着型の新たなインフラ拠点の構築を目指す。
2026年9月までに3店舗を直営で出店し、初期の収益状況を見極めたうえで追加出店の是非を判断するとしている。1店舗当たりの投資額は4~5億円を想定しており、クレーンゲーム機を130~150台(1台当たりの価格は約150万円)設置する。既に先行して同市場へ参入している事業者によれば、1店舗当たり営業収入でパチンコ店を上回る店舗もあるとされ、今後の状況次第ではさらに直営店舗数を拡大する可能性も考えられる。足元におけるクレーンゲーム市場はメディア露出に伴う一時的なブームの側面も否定できず、人気の沈静化や競争激化に伴う収益性の下振れといった事業リスクについては留意が必要である。
また、閉店店舗の有効活用として、他社のクレーンゲーム事業者や食品スーパーマーケット、衣料製造販売会社、トレーラーホテル、コンビニエンスストアなど様々な業種・業態とリーシング契約を締結し、安定的な賃貸収益を獲得している。賃貸収益はその他の収入に含まれており、2026年3月期の実績は前期比171百万円増の983百万円となった。
(執筆:フィスコ客員アナリスト 佐藤 譲)
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