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「ボルカールール」発動なら日経大暴落も!?1990年の「行政指導」との類似点を指摘

昨年末にドッド=フランク法が2年延長されましたが、いまだ心配事のひとつであるボルカールール。山崎和邦教授は2年の延長も油断はできないと言っています。

最近誰も言わなくなったが、天災は忘れたころにやってくる

『山崎和邦 週報「投機の流儀」』(2015年3月29日号)より一部抜粋

一時は、ボルカールールと言えば、泣く子も黙ったくらいに市場で恐れたものだが、最近誰も言わなくなった。「天災は忘れたころにやってくる」(寺田寅彦)。

30年くらい前に「大統領の言うことを聞かないFRB議長」としてポール・ボルカーと言う、2m越す長身のFRB議長がいた。明晰な頭脳と禿げ頭の故にエッグ・ヘッドとあだ名されて恐れられた。レーガン大統領さえ恐れた。それでレーガンがFRB議長をグリーンスパンへ代えた。

ボルカーはチェース・マンハッタン銀行の役員からニクソン時代の財務次官となって、金兌換(きんだかん)を廃止して円ドルの固定為替制度を止めさせた大舞台の回し役だった。要するにニクソン・ショックの計画の立役者であり実践者である。彼ほどの力があればチェース・マンハッタン銀行の役員時代から幾らでも蓄財できたろうにそれをせず、「袖のすりきれたスーツを着て」(「伝説のFRB議長」より)執務するところに彼の「偽悪者的な凄味があった」(前掲書)。ゴールドマンサックスの役員で高禄を食んでいた財務長官のポールソンには凄味はなかった。

そのボルカーの時代に造られた法律に米国の大手金融機関を規制するドッド=フランク法と言うのがある。

それは銀行がヘッジファンドに参加することを禁止している法律である。社内におけるヘッジファンド型運用を「2015年6月までに終了させるべし」という法律だ。多くの証券会社系銀行はヘッジファンドの運用ポジションを2015年6月まで解消しなければならない。

市場への悪影響を考えて昨年末にFRBがボルカールール実現の猶予期間を17年6月へと2年延長することを決めた。これで一息ついたが、大手機関がヘッジファンド運用ポジションの解消が遅れていることは事実である。再び大規模なヘッジファンド解消が膨らむ素地はある。

皆が忘れかけているが、現に89年年末の史上最高値を示現した翌日(90年大発会)から暴落した日経平均はアッと言う間に1万円下がり、半年で半値になったという、「大正9年以来の70年ぶりの大暴落」を引き起こしたのは大蔵省証券局の発した(「行政指導」という名目だったが)「営業特金の解消命令」のための大証券の急激かつ大量の売りであった。一時話題になった大証券の「損失補填」もそのためだった。ボルカールールはそれと非常に似ている。今は「2年先まで猶予する」と言うことになっているが、あのイエレン女史は油断できない。

以下は週刊東洋経済誌4月4日号より引用する。「筆者が今年3月初めに会った或る大手銀行傘下のヘッジファンド運用者は『ボルカールールの施行時期については、再度変更、前倒しすることもあり得る』としていた」。

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