イエレン氏の直近の議会証言は、タカ派的なトーンが印象的でした。またトランプ効果で米国に注目が行きがちですが、引き続き注意を要するのは欧州、特にフランスです。(『億の近道』式町みどり)
プロフィール:式町みどり(しきまちみどり)
学習院大学経済学部卒業後にフランス語を習得、1973年に仏ソシエテ・ジェネラル銀行東京支店入行。長年にわたり内外金融市場で為替・資金・債券・デリバティブ等のディーラーとして活躍。同行資金本部長を経て退職後、ファイナンシャル・プランナー資格(AFP、CFP®)を取得。NPO法人を立ち上げ、消費者向け講座企画・運営、セミナー、ワークショップの企画事業を行なっている。
トランプのアメリカだけでなく欧州、特にフランス大統領選に要注意
イエレンの「いいね!」
年初来の為替相場は、米大統領選挙終了後のトランプラリーは一巡。米国の新政権の具体的政策に注目する時期に入っています。
様々なノイズに神経質に反応してはいるものの強い方向性を伴った動きにはなっておらず、ドル円相場は111円~116円レンジの範囲内での動きが続いています。
トランプ大統領が、近々発表するとされる画期的な税制改革案への反応は今後の材料になるでしょう。内容次第で、株式市場、債券市場(特に金利上昇期待への影響)に与えるインパクトは注目されます。
そんな中で、昨日2月14日に行われたイエレンFRB議長の上院での議会証言が注目されました。ハト派(金融緩和派)と言われてきたイエレン氏のタカ派的なトーンが印象的でした。
主旨をまとめると、
- FOMC(連邦公開市場委員会(米国の金融政策決定会合))の年内複数回の利上げ実施の可能性が高いことを示唆。
- 将来の利上げのハードルが低いことを示唆。
- 様々な逆風が弱まるに伴い自然利子率は時間と共に幾分か上昇する、とFOMCは確信しているとコメント。
- 経済の上振れリスクも強調。利上げを待ち過ぎることについて言及。
以上から伝わるのは、FRBは米国の経済を、かなり「いいね!」と見ているようだ、という印象です。
イエレンFRB議長の任期は来年2018年2月。トランプ氏は、彼女を再任しないと明言していますので、あと1年の任期となります。この間に、やるべき政策は実行するという姿勢、イエレン氏の気合いを感じます。
昨日は、アジア時間帯に、米国のフリン大統領補佐官の辞任、東芝決算発表の延期でリスクオフの動きが起きていたので、イエレンFRB議長のタカ派トーンは、金利上昇、ドル高に繋がりました。とは言え、未だレンジを抜ける勢いではありません。
FRBによる利上げ確率は、2月月初とイエレン議長証言後を比較すると、全般的に約3%程度上昇しました。因みに、3月利上げ(→0.75%~1.0%)は直近で34%です。(Bloombergデータによる)
Next: フランスの超右派「ル・ペン大統領」が誕生する可能性は?