森友学園問題の本質は「適正な売却価格」ではないかもしれない
野党は、森友学園が国交省の見積もり通り土壌汚染対策を実施していれば、ダンプ4000台分の土砂の搬出があったはずだが、近隣住民からそれを裏付ける証言は出てきていないことから、実際には土壌汚染対策に8億円もかかっていない可能性が高いことを指摘している。
こうした指摘に対して、森友学園の理事長はその事実を認めたうえで、全ての土砂を搬出したのではなく、搬出したのは校舎部分のみであり、校庭部分はそのままにしていると証言している。
こうした国交省の見積もりの前提となる工事を行っていなかっただけでなく、堀出した一部の土砂は搬出せずに敷地内の埋め戻しに利用したという指摘もされている。
ヒ素や鉛といった有害物質を含んだ土砂を、小学校の敷地の埋め戻しに使用するというのは常識的に考えられないことであるし、そのことを国が見逃しているとしたら信じられないこと。ヒ素や鉛が検出されている土地に小学校を立てるのであれば、全ての土砂を入れ替える土壌汚染対策をとる必要があることは明白なことである。
朝日新聞では、「11年にこの国有地の取得希望を国に伝えていた別の学校法人は朝日新聞の取材に対し、撤去費を約2億5千万円と見積もっていたと答えた。12年4月に国交省から『大量の埋設物がある』と知らされ、見積もりをゼネコンに頼んだ。撤去費をふまえ、7億~8億円だった購入希望額を約5億8千万円に下げたが財務局から低いと指摘され、断念した」ことが報じられている。
こうしたことがあった後、国は2015年の5月に森友学園との間で将来の売却を前提とした土地の貸付契約を結び、森友学園が廃材などの撤去工事や土壌改良を行ったことを現地で確認したうえで、その費用として1億3000万円余りを学園側に支払っている。
森友学園が、別の学校法人がゼネコンから得た見積もり額である約2億5000万円の半額で廃材撤去や土壌改良を行ったことが決め手になったのか、国は2013年夏にこの国有地の取得要望を伝えてきた森友学園と2015年5月に土地の売却を前提とした貸付契約を結ぶことになる。
そして、2012年に5億8千万円でも安過ぎるといっていた国有地を、その4分の1以下の1億3400万円で森友学園に売却することを決定している。
こうした経緯を踏まえると、初めから森友学園に国有地を売却することが決まっていたのか、あるいは森友学園に安価で国有地を売却しなければならない何かしらの事情が生じたのかのどちらかであったのではないかという疑念が湧いてくる。
もしかすると、この部分が今回の問題の本質かもしれない。
Next: 「命取り」になりかねない麻生副総理の国会答弁