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ブロックチェーン旋風で、銀行が消える? 技術革新がもたらす未来(上)=俣野成敏

【なぜ、仮想通貨の流出を止められないのか?】

俣野:それでは坪井さん、よろしくお願いいたします。早速ですが、9月14日にテックビューロが運営する仮想通貨取引所のザイフ(Zaif)から、再び約70億円相当の仮想通貨が流出する、という事件が起きました。今年(2018年)の1月にコインチェックから約580億円もの仮想通貨がハッキングされたばかりですが、世界的に見れば、ほとんど毎月のようにどこかで事故が起こっている、と言ってもいいかもしれません。
※参考:テックビューロ解散へ 事業をフィスコグループへ譲渡

俣野:この状況を見た多くの人は、「仮想通貨はやっぱり危ない」というイメージを持っているのではないかと思いますが、いかがでしょうか?

坪井:そう思う人たちにとっては、意外なことかもしれませんが、事件は仮想通貨が原因で起こっているわけではありません。ご存じのように、電子データとは本来、いくらでも複製が可能です。ところが、非常に強固な数学的理論に基づき、取引記録を改ざんできないようにしたのが仮想通貨です。

現在、起こっている事件の多くが、実は取引所に起因しています。イメージしやすいように、仮想通貨を純度99%の金貨にたとえると、問題は金貨ではなく、金貨を保管している金庫(取引所)にあります。極端に言えば、カギのかからない金庫に金貨を保管しているようなものです。それは、インターネットがオンラインを通じて世界とつながっている以上、避けようのないことです。現状、カギをかけたければ電源を切るか、別の安全なところに保管するしかありません。

ユーザーはこうした事実を知った上で、どう利用していくのかを自ら決めなくてはなりません。もともと、利便性と安全性は相反する関係にあり、安全性を向上させようとすれば、それだけコストや人件費が跳ね上がります。技術者の数も、圧倒的に足りていません。それらすべてを、経営の不安定なベンチャー企業に背負わせようとするのは難しいでしょう。仮想通貨はまだ、実用的なものになっていないのです。

仮想通貨を盗む方法は、大きく2つ

坪井:仮想通貨がお金である以上、それを奪おうとする者は必ず現れます。現在、仮想通貨を盗む方法は、大きく分けて2つです。

1つは、通貨の電子データを書き換えること。これは先ほども言った通り、非常に強固に設計されています。

もう1つが、取引所のシステムに入り込み、ニセの送金指示を出してコインを飛ばしてしまうこと。コインチェックもザイフも、この方法で盗まれました。

仮想通貨の核となるのがブロックチェーン技術です。ブロックチェーンとは、データを塊(ブロック)に区切って保存し、それをチェーン状に連ねているために、こう呼ばれます。チェーンの接続部分には、前のブロックデータが一部含まれるため、途中を改ざんすればデータに狂いが生じ、盗難が判明します。ビットコイン等は透明性を保つ目的で、ネット上にブロックチェーン情報をすべて公開しています。仮想通貨とは、早い話が取引を記録した電子データのことです。

なぜ盗まれた仮想通貨は戻らない?

俣野:仮想通貨は基本的に、取引記録をさかのぼることが可能で、それも不正を防ぐ仕組みの1つと言われています。しかし今のところ、盗られた通貨は戻ってきていませんね?

坪井:さかのぼることはできても、ビットコインなどは、取引記録と個人情報が紐付いていません。その点は現金と同じです。たとえばお店でもらったお釣りの前の持ち主が誰だったのかはわかりませんよね?ただ現在、日本の取引所では取引に際して個人情報の提出を求められますから、金融庁は当然、それらを把握できる立場にいます。しかしそれとて、限られた範囲内でのことです。

もっと仮想通貨の用途が広がり、「こんなことができます」「あんなことができます」となるのは、もう少し先の話になるでしょう。もしかしたらその時の通貨は、今のものとは違う姿になっているかもしれませんが、社会に浸透するのはそう遠いことではないはずです。1つだけ確かなのは、「もうこの流れは止められない」ということです。

Next: 技術革新によって銀行は消える? 仮想通貨が変える未来とは

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