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どう見る?ジョージ・ソロスの「第3次世界大戦」警告と南シナ海の緊張

「イングランド銀行を負かした男」ジョージ・ソロス氏の警告

いっぽう、海外のサイトでは著名な投資家のジョージ・ソロス氏による今年5月23日の発言が注目されている。それは、第3次世界大戦の警告であった。

ソロスは、中国が輸出でなく内需に経済の主軸を移したとき、第3次世界大戦のシナリオは現実のものになるとしている。そのとき中国政府は、政権を維持するために外部に紛争を必要とするはずだという。

もしこのとき、中国がロシアと政治的、軍事的同盟を結ぶと世界大戦は現実のものとなるだろうと警告していた。

いま中国とロシアは、中露同盟と呼ばれるくらい近い関係にある。今回の米艦船派遣で、第3次世界大戦へと向かうシナリオが現実になりそうだというわけだ。

いち早く米国への支持を表明した安倍政権

他方、日本の安倍政権は、日米とアセアン諸国、ならびにオーストラリアやニュージーランドなどの周辺諸国が協調して、中国を封じ込めることを基本政策にしている。

そのような安倍政権から見ると、米艦船が中国が領有権を主張する人工島の海域を通過することは、周辺諸国が中国封じ込めで一致団結する絶好の機会になると見ているはずだ。

これこそ安倍政権が、アメリカに対する支持を真っ先に明確にした理由であるに違いない。

アジアにおけるロシアの拠点、ベトナム

だが、南沙諸島の領有権問題の当事国であるマレーシアやベトナムは、中国への経済的な依存を深めており、中国との関係には最大限気を使わざるを得ない状況だ。

ましてやベトナムは、アジアにおけるロシアの最大の拠点である。日本ではまったく報道されていないが、今年の6月30日、ロシアはベトナムに最新鋭の潜水艦を引き渡したばかりだ。これは、2009年に締結した5艘の最新鋭潜水艦の売買契約に基づいた引き渡しだ。

いまシリア空爆で、ロシア軍とロシア製兵器の優秀さが大変に注目されているが、ベトナムの兵器体系は基本的にロシア製である。ベトナムはロシアから最新鋭の「クラブ巡航ミサイル」を50基購入しており、すでに28基がベトナムに引き渡された。これらのミサイルの照準は、いざというときの抑止力として中国の各大都市に向けられている。

中東、欧州、中央アジアなどでは中露同盟が強化されつつあるが、こと東南アジアに関しては中国とロシアは一枚岩ではない。ベトナムが中国と敵対的な関係にはなればなるほど、ベトナムに兵器を提供しているロシアの軍事的な影響力が増すという関係にある。

するとロシアの影響力は、カンボジア、ミャンマー、ラオスなど他の東南アジア諸国へと拡大する可能性が出てくる。

他方アメリカは、ロシアを最大の仮想敵国として見ている。ロシアの影響力の拡大には非常に神経質になっている。そのような状況では、ベトナムと中国との敵対関係を助長するようなことはできない。結果的に、ロシアの東南アジアにおける軍事的な影響力を強化することになってしまうからだ。

ということは、アメリカは安倍政権が望むような、日米とアセアンが協力しての中国封じ込め政策を実施することは実質的にできないし、その意図もないと見たほうがよいだろう。

米国は、ベトナムとフィリピンにも領有権の主張を慎むよう警告

その証拠に、米イージス艦ラッセンは中国の人工島付近を航行する前日、ベトナムとフィリピンが領有権を主張する南沙諸島の島々の12カイリを通過した。

これはオバマ政権が中国に過度な領有権の主張をしないように警告を送るとともに、ベトナム、ならびにアメリカの同盟国のフィリピンに対しても同じ警告を発していることを示している。

ベトナムとフィリピンも中国ほど大きくはないが、領有権を主張している島々に施設を建設している。今回の米艦船の航行は、南沙諸島の領有権問題の他の当事国にも自制をするようにメッセージを発したと見たほうがよいだろう。

国内の共産党批判を懸念、妥協できない中国

したがって、今回のアメリカの意図は、安倍政権が望むように中国を封じ込めることではない。

人工島の建設による領海の主張を許してしまうと、中国は公海の好きな場所に人工島を作り領海を主張する可能性が出てくる。いくらなんでもこれは国際法上許されないとして、アメリカは抗議したというのが今回の米艦船派遣の意図である。

いっぽうアメリカのこのような行動に対して、中国は簡単に妥協できない立場にある。もし習近平政権が妥協すれば、ナショナリズムで盛り上がった国内の世論は一斉に習近平政権批判を開始し、共産党一党独裁がかなり不安定になってしまう。これは大変に大きなリスクだ。

これを回避するためには、おいそれとアメリカの要求にしたがい、妥協することはできない。また中国が妥協する場合、中国の面子が最大限に立ち、中国が勝ったと主張できる状況でなければならない。

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