政治・経済の両面で強くなりすぎたドイツが各方面から狙われている。フォルクスワーゲン問題もシリア難民問題も、すべてはドイツの「第4帝国支配」を恐れたアメリカによる差し金の可能性が高い。(『マンさんの経済あらかると』)
アメリカが密かに進行するドイツ弱体化作戦、その勝算は?
米国に従わない欧州の盟主「ドイツ第4帝国」
出る杭は打たれると言いますが、強くなりすぎたドイツが各方面から狙われています。今回、ドイツで財政均衡主義を見直す動きが出てきましたが、その背後に米国の影がちらつきます。
欧米はドイツの「第4帝国支配」を恐れています。
これはナチス・ドイツの「第3帝国」になぞらえたものですが、政治的にも経済的にも欧州ではドイツが抜きんでる存在になっています。欧州のリーダーは英国でも仏でもなく、ドイツのメルケル首相と言わざるを得ません。
この強いドイツが、なかなか米国の言うことを聞いてくれません。米国は欧州の景気回復のために、ドイツに何としても財政拡張による景気支援を期待していました。
特に、最近ではドル高が米国経済の負担になっているだけに、ECBの追加緩和よりも、ドイツの財政拡大を求めていました。
ところが、ドイツは割安なユーロを活かして輸出を拡大し、景気が堅調で、特段の景気対策は必要ありません。
それもあって、昨年には実に1969年以来という均衡財政を実現しました。このため、新規で国債を発行する必要がなくなりました。
そしてドイツは2015年から2019年まで均衡財政を続けると公約しました。
フォルクスワーゲン問題は偶然にあらず。過熱するドイツ叩き
ドイツに財政支出を拡大させたい米国は早速動きました。
まずは中国経済叩きです。これは覇権主義を強める中国自体を抑え込むとともに、中国市場でビジネスを急拡大するドイツの自動車産業をも狙ったものです。
なかでも、GMを脅かすフォルクスワーゲンが最大のターゲットになっていたようです。
実際、中国経済の悪化で、最も影響を受けると見られたフォルクスワーゲンの株価が大きく下落しました。これに留まらず、米国はフォルクスワーゲンのディーゼル・エンジン排ガス規制逃れの不正ソフトを暴きました。
これによる1100万台のディーゼル・エンジン搭載車のリコールなどで、同社は少なくとも4兆円のコスト負担を強いられます。
米国にしてみれば、これは一石三鳥です。
中国経済を弱体化させ、軍事力増強を抑えるばかりか中国共産党政権を揺さぶることができ、そしてトヨタ叩きに続いてフォルクスワーゲンを叩けば、それだけGMが優位になり、ドイツ経済がこれで弱れば、いずれ財政均衡をあきらめ、財政政策で景気拡大策を打たざるを得なくなる、との読みです。
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金融・為替市場で40年近いエコノミスト経歴を持つ著者が、日々経済問題と取り組んでいる方々のために、ホットな話題を「あらかると」の形でとりあげます。新聞やTVが取り上げない裏話にもご期待ください。