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マスコミが報じない「日本郵政」初めから分かりきった経営の弱点=近藤駿介

11月4日上場の日本郵政グループ3社。久々の超大型IPO案件とあって市場の注目と期待が集まっていますが、一方では成長力不足や親子上場による利益相反問題、市場全体の需給悪化を懸念する声があるのも事実です。

この問題を報じた11月1日付の日経新聞記事に対し、元ファンドマネジャーの近藤駿介氏は「何を今さら」と憤りを隠しません。最初から分かっているリスクに関しては、IPOの申し込み期間前から広く報じるのがメディア本来の役割ではないかと問題提起しています。

個人投資家よりも国のご機嫌伺い。メディア報道と業界の問題点

分かりきったリスク、なぜ上場直前に記事化?

何を今さら、個人投資家をバカにしているのか、と言いたくなるような記事。日本郵政グループの申し込み期間が終わった途端こうした記事を書く神経が理解できない。

「郵便市場は縮小傾向で金融事業の収益も低迷している。政治との関係も曖昧さが残り、成長軌道に乗せるのは容易ではない」

「過去の国有企業の民営化事例を検証すると日本郵政の置かれている経営環境の厳しさが浮かび上がる」

「収益の大半を稼ぐ金融2社の経営基盤も盤石とはいえない」
出典:郵政、宿題抱え船出 4日上場、成長力に不安 海外M&Aに活路 – 日経新聞(11月1日)

成長力不足」や「親子上場」など、初めから分かりきったリスクは申し込み期間前に広く告知するのがメディアの使命であるはずだ。売り出すのが国であればなおさら。

現在7-9月期(上半期)の決算発表が始まっているが、日本郵政3社の中間決算発表はまだ行われていない(発表予定日も未定?)。

NTT以来の大型民営化案件に対して、決算発表後に申し込み期間を設けるとか、申し込み期間前に決算発表をするべきだといった要求が証券界から出てこなかったところに「一般投資家よりも国の方を向く」という証券界の姿勢が表れている。

証券界にとっては「一般投資家」よりも多くの手数料を落してくれる「国」の方が重要なお客様であるという現実を一般投資家は知っていたのだろうか。これも「自己責任原則」の範囲内だが。

半年前、上場直後に業績下方修正する企業が現れて問題になった際に、麻生財務相は国会で「(下方修正の)要因について十分な説明等が行われないと投資家の新規株式公開についての信頼を失いかねず、適切ではない」と発言している。

仮に、日本郵政グループ3社の中間決算が下方修正された場合、政府は何と答弁するのだろうか。不謹慎で申し訳ないが今から楽しみだ。

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近藤駿介~金融市場を通して見える世界』(2015年11月1日号)より一部抜粋
※太字はMONEY VOICE編集部による

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ファンドマネージャー、ストラテジストとして金融市場で20年以上の実戦経験を持つと同時に、評論家としても活動してきた近藤駿介の、教科書的な評論・解説ではなく、市場参加者の肌感覚を伝えるマガジン。

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