ユン検察総長「追放劇」
世論調査会社リアルメーターが、今月7~11日の5日間にわたって調査した最新の世論調査結果は次のようなった。
支持率 36.7%(前週比マイナス0.7%ポイント)
不支持率 58.2%(前週比プラス0.8%ポイント)
支持率は2週連続で30%台に止まった。文政権発足後の最低値を更新した。不支持率は、60%に接近する勢いである。
ここで、前記の「55%と35%」ルールを当てはめると、文政権支持の岩盤層の一部が離反し、中道派が反対に回っていると推測できる。この状態は今後、改善できる見込みはあるだろうか。
文政権は、離反する国民世論を繋ぎ止めるべく、ユン検察総長への解任請求で開催した懲戒委員会が16日早暁、「停職2ヶ月」という結論を下した。最終的には文大統領の裁可を待って決められる。実は、この「停職2ヶ月」は、与党内では早くから囁かれていたものだったという。
懲戒には、次のような段階があるという。
1)戒告
2)減給
3)停職
4)免職
5)解任
停職は、懲戒でも3番目の罰に値する。免職や解任を避けたのは、世論の反発を恐れた結果であることは明らかだ。すでに高捜処法改正について、54.2%が「間違っている」と答えている。世論調査に敏感な政権・与党が、「停職2ヶ月」で妥協したものと見られる。
政権・与党の本音は、政権支持メディア『ハンギョレ新聞』(12月16日付)が、余すところなく伝えている。
ユン総長の残りの任期は来年7月までだ。停職になると検察総長職は維持するが、職務が停止されて捜査指揮権を行使できず、2カ月間は事実上「解任」と同じ位置に置かれる。これによって、与党では停職処分が世論と検察の反発を抑えつつ、ユン総長を捜査に関与しないようにする“妙案”という話が出ていた。
現在、検察は、月城(ウォルソン)原発の捜査とオプティマス関連の政・官界ロビー疑惑の捜査などを進めている。共に民主党のソル・フン議員は14日、CBSラジオで「野党を支持する国民も多いではないか。その方たちを考えれば解任よりは停職にする場合もあるだろう」と述べた。
出典:韓国検察総長、停職2カ月の背景…検察内部からは「決まっていた結末」と批判 : 政治•社会 : hankyoreh japan(2020年12月16日配信)
以上のように、政権は疑惑の捜査をさせないで事件の核心を隠す。国民に向かっては、解任でなく停職と言ってカムフラージュできる、というのだ。それほど、上手く事態を隠しきれるだろうか。
ユン総長が、今回の停職処分を不服として裁判所へ訴えることは確実である。
検察改革の中身は「保身」
先に、秋法務部長官が出したユン検察総長に対する「職務執行停止」処分は、行政裁判所で次のような停止命令が出された。「職務執行停止が続いた場合、任期満了(2021年7月24日)までに職務から排除され、事実上解任するのと同じ結果に至る」とし、検察の独立性と政治的中立性を保障するために検察総長の任期を2年に定め2期を務めることを禁じた検察庁法の趣旨を強調している。
行政裁判所は、検察の独立性と政治的中立性を保障するために定めた、検察総長任期2年間に対して、政治が関与してはならないと諭しているのである。それにも関わらず懲戒委員会が再度、2ヶ月の停職を命じたことは、前記の行政裁判所の決定にも逆らっていることは明らかである。
ユン検察総長が、「停職2ヶ月」を不法として裁判所へ訴えることは確実である。法的に見ても、政権の行為は法的に誤りとする意見が出ている。パク・ミョンリム延世(ヨンセ)大学教授が、『中央日報』(12月16日付)で指摘している。
「懲戒委員会というごく少数(5名)による決定の軽さと、それに伴う効力はすでに実質的な根拠を持ちにくい。また、すでに法務次官、監察委員会、行政裁判所によって3度も法務部という官僚的懲戒が事実上かつ法律的に拒否された以上、今回のような官僚的手続きは中断するべきだ」というものだ。煎じ詰めれば、次のような意味である。
5人の懲戒委員が、「検察の独立性と政治的中立性を保障するために定めた検察総長の2年任期制」という法的な裏付けに対して、無法にも政治的に挑戦することがいかに危険であるかを指摘している。
文大統領は、弁護士出身である。文氏が、「停職2ヶ月」を裁可すれば、文氏の司法人としての命運もそこで尽きるのであろう。自己の利益を優先して公益を侵害した罪は、永遠に消えないのだ。
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