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明豊ファシリ Research Memo(8):2026年3月期業績は期初計画を据え置き、増収増益の見通し

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■明豊ファシリティワークス<1717>の今後の見通し

1. 2026年3月期の業績見通し
2026年3月期の業績は、売上高で前期比3.0%増の5,890百万円、営業利益で同2.5%増の1,257百万円、経常利益で同2.4%増の1,260百万円、当期純利益で同1.0%増の920百万円と期初計画を据え置き、増収増益を見込んでいる。建設コストの上昇に伴い、発注者単独で建設投資を実行することが困難な状況が続き、同社CMサービスに対する引き合いが増加する一方で、建設コストの高騰や人材不足に起因する工期の長期化リスクの高まりにより、民間企業の建設投資の意思決定が従来以上に慎重になってきていることを考慮した。

直近3期間は期初計画に対して売上高、各利益ともに上振れて着地していることや、公共分野に関しては引き続きプロポーザル入札方式での案件が豊富にあり開拓余地が大きいこと、中間期までの各利益の進捗率が60%超となっていることから、今後市場が急速に悪化するような状況とならない限りは、通期業績も計画を上積みできる可能性は十分にあると弊社では見ている。ちなみに、直近3ヶ年の中間期までの平均進捗率は売上高で46.0%、営業利益で52.4%であった。なお、当期純利益の増益率が1.0%と小幅にとどまるのは、賃上げ促進税制による税額控除分が2025年3月期の65百万円に対して、2026年3月期は48百万円と減少を見込んでいるためである。

(一財)建設経済研究所「建設経済モデルによる建設投資の見通し」(2025年10月発表)によると、2025年度の建築投資(非住宅、名目ベース)は前年度比6.8%増の16.3兆円(うち政府は同7.8%増の4.7兆円、民間は同6.4%増の11.6兆円)となり、伸び率は2024年度見込みの3.7%増から拡大する見込みだ。政府、民間ともに建設需要が堅調なことに加え、建設資材や人件費などの高騰による建設コストが上昇していることも一因だ。建設資材価格については中国の不動産不況が長引いている影響もあって足元は落ち着きを見せているが、人件費については職人の慢性的な不足が続いており、今後も上昇傾向が続く可能性が高い。

建設コストの上昇は既述のとおり同社にとってプラス、マイナスの両面がある。今後、マイナス面の影響がより強くなることで業績への影響が懸念されるが、同社は潜在需要の大きい公共分野での案件獲得や、都心での大型ビル竣工ラッシュに伴い需要増加が見込めるオフィス事業の案件獲得、DX支援事業の拡大などに取り組むことで、今後も安定した収益成長を継続することは可能と弊社では見ている。

社員のエンゲージメント向上と人的資本の強化が進む

2. 成長戦略
同社は発注者の建設プロジェクト構想段階から参画し、プロジェクトの早期立ち上げ支援やCM方式による円滑なプロジェクトマネジメントを推進する「明豊のCMの進化」と、DX支援サービス及びCMサービスの融合による「新たなCMの創造」を推進することで進化した価値を提供し、「新たな顧客の創造」を追求するとともに持続的な成長を目指す方針だ。建設コストの上昇や脱炭素社会の実現に向けたLCCに対する意識の高まり、公共施設の老朽化問題など、発注者が単独でプロジェクトを推進していくには困難な情勢となるなかで、同社の企業理念である「フェアネス・透明性・顧客側に立つプロ」を軸とし、DXを融合した付加価値の高いCMサービスを提供する同社の成長余地は大きいと弊社では見ている。

持続的成長を実現するためには、人的資本の強化が最重要ポイントとなる。同社の人材育成プロセスは、「フェアネス・透明性・顧客側に立つプロ」の企業理念を行動に落とし込むための理念研修や、スキルアップを図るため個々の社員の適性にあったOJTプログラムを実施しているほか、資格取得奨励制度の強化、新技術習得機会の提供などを行っている。生産性向上に向けた取り組みとしては、ナレッジセンター※1の活用やデータ、各種資料の体系的整備とRPAの活用による業務効率の向上などを推進している。また、社員のエンゲージメント向上に向けては、人事評価制度の深化と発展、福利厚生制度の充実、社員の声による業務効率化案推進などに取り組んでいるほか、女性活躍推進に向けた環境整備にも取り組んでおり、2022年6月には「くるみん認定」※2を取得した。社員の定着率向上に向けては、職務が軌道に乗るまで人事部が伴走支援する体制を整備し、社員の交流が進む施策も積極的に実施するようにした。これら施策の効果もあり、ここ数年は社員の定着率も向上している。同社では社外取締役が年に2回、5名程度の社員とミーティングを行い、社員の直接の声を聴き経営側にフィードバックしているが、ここ最近は社員の満足度が向上していることを実感していると言う。社員の意見として、「関心のあることに挑戦させてくれる」「コロナ禍が収束してもリモートワークができ、家事との両立が可能」といった声が寄せられており、中堅社員からも経営に対して意見が出てくるようになるなど社内の風通しも良くなっているものと思われる。

※1 デジタル基盤上に構築したナレッジセンターにおいて、業務上のベストプラクティスが共有できるほか、サービス品質向上に不可欠なドキュメントレベルの周知や学習が行えるようになっている。
※2 「くるみん認定」は、仕事と家庭を両立しやすい職場環境づくりに取り組んでいる企業として、一定の基準を満たした場合に申請を行うことによって「子育てサポート企業」として、厚生労働省より認定を受けることができる制度。認定を受けた企業は「くるみんマーク」を広告等に表示し、子育てサポート企業であることを公表できる。

人材の採用環境については、売り手市場が続くなかで厳しい状況に変わりはない。採用ルートとしては、自社ホームページからの応募や人材サービス会社からの紹介が中心である。同社の企業理念に共感し「明豊のCMサービス」を手掛けたいとの希望を持って応募する人材ばかりではなく、CMサービス提供会社を候補の1つとして転職活動を行っている人材も多く、こうした人材から厳選して優秀な人材を採用している。また、人材ポートフォリオの多様性、女性の活躍推進という観点から、業界外からの採用も行っている。具体例として、異業種を経験した女性を採用したが、発信力が高く従来とは違った観点での気付きが得られるといった点で評価されているようだ。

社員の平均給与については賞与を中心とした継続的な賃上げにより既に大手ゼネコン並みの水準までに達しているが、優秀な人材を多く獲得していくためには、処遇のさらなる向上も検討課題となってこよう。同社の従業員1人当たり経常利益は2015年3月期の271万円から2025年3月期は470万円と1.7倍に拡大しているのに対して、平均給与は1.4倍にとどまっており余力はあると言える。同社では利益配分の考え方について、内部留保を確保しつつ、社員、株主への還元を安定的かつ継続的に充当していくとしているため、今後も1人当たり経常利益が増加すれば平均給与も上昇し、結果的に人材採用力の強化につながっていくものと弊社では見ている。

(執筆:フィスコ客員アナリスト 佐藤 譲)
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