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TDK、AIエコシステムを成長軸に事業ポートフォリオマネジメントを推進 独自のボード・カルチャーでガバナンスを進化

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2025年11月28日に行われた、TDK株式会社 TDK Investor Day 2025 中期経営計画進捗説明会の内容を書き起こしでお伝えします。

TDK Investor Day 2025 中期経営計画進捗説明会

齋藤昇氏(以下、齋藤):みなさま、こんにちは。社長執行役員CEOの齋藤です。本日はお忙しい中お集まりいただき、誠にありがとうございます。

それでは、長期の企業価値向上に向けた中期経営計画の進捗について、私からご説明します。

本日のアジェンダ

まずはアジェンダです。本日は、スライドに記載の内容に沿って進めたいと思います。

私のコミットメント(2024年5月Investor Day資料 再掲)

9月の「Investor Day」(※)では、フェライトツリーや未財務資本についてご説明しました。本日は私のコミットメントの中でも財務資本、特に事業ポートフォリオマネジメントについてご説明します。

※参考:TDK Investor Day 2025 未財務資本を通じた企業価値向上に向けて

長期ビジョン: TDK Transformation(2024年5月Investor Day資料 再掲)

以前にもご説明していますが、長期ビジョンとして「TDK Transformation」を掲げています。

参考:TDK Investor Day 2024

TDKが見据える社会のTransformationのイメージ(2024年5月Investor Day資料 再掲)

このTransformationを実現するため、TDK独自のビジネスモデルを活用して自らもトランスフォーム(変革)し、社会のTransformationに貢献し続けたいと考えています。

長期ビジョンからバックキャストした中期経営計画

あらためて、本中期経営計画の位置づけです。長期ビジョンを達成するため、事業基盤を強化する期間であると捉えています。

財務・未財務 KPI の進捗

こちらは、昨年度の実績および今期の見込みです。中計最終年度の数値を見据え、本日は中長期で目指す姿の達成に向けた施策についてご説明します。

中期経営計画のポイント(2024年5月Investor Day資料 再掲)

中期経営計画のキーポイントは、スライドに記載の3点となります。

事業を入れ替えながら稼ぐ力を高めてきました

1点目の「キャッシュ・フロー経営の強化」についてです。営業キャッシュ・フローの3ヶ年移動平均推移は、2024年5月の当初予想より上振れし、約3,800億円、約4,200億円と推移しています。

先手の事業ポートフォリオマネジメントを推進しています

2点目のポイントは、「先手の事業ポートフォリオマネジメント」です。こちらのスライドは、売上構成率および各象限にある主な製品群を示しています。

事業ポートフォリオマネジメントを進化させてきました

事業ポートフォリオマネジメントについては、社内での取り組みや対外的な開示をこのように進化させてきました。

2022年には投資配分のマトリックスを開示し、2023年からは6象限の中にどのビジネスが位置するのかを示しました。特に、右上に位置する成長事業や左下に位置する課題事業については、事業名を個別に開示するようにしました。

2024年からは売上高に対する比率を開示するとともに、中期経営計画のキーポイントの1つとして、“先手”のポートフォリオマネジメントへの変革を進めてきました。

また、今年5月には重点モニタリングCBU(Cashflow Business Unit)数を開示し、進捗をより解像度高く示すことで、投資家のみなさまと進捗や課題感について、より具体的に議論できる環境を整えてきました。

中長期で目指す姿の実現に向けて

以上を踏まえ、中長期で目指すROE15パーセント以上、ROIC12パーセント以上の達成に向けて、先手で事業ポートフォリオマネジメントをより一層推進する取り組みについてご説明します。

当社にとっての事業ポートフォリオマネジメントの第一義は、「成長戦略の推進」です。

ポイントは3つあります。1つ目は「成長けん引事業のオーガニック成長・収益性改善」、2つ目は「重点モニタリング事業への対処」、3つ目は、R&D投資、CVC投資およびM&Aも含めた「インオーガニック成長」です。

本日は、それぞれについてあらためてご説明します。

AI エコシステム全体に貢献し、成長を目指します

まず、第一義である「成長戦略の実現」です。以前からお話ししているとおり、当社では、AIに関わるさまざまなアプリケーションをAIエコシステムとして捉えています。

主に赤枠で囲んでいる3つのアプリケーションに対する成長戦略の推進状況については、後ほど詳しくご説明します。

AI エコシステム全体に向けて売上を伸ばします

スライドは、4月にご説明したAIエコシステム市場向け売上成長見込みです。

現時点では全社売上の1割強程度ですが、中長期的には年率25パーセントから30パーセントという大きな成長を見込んでいます。

本年度はHDDヘッドやサスペンション、受動部品などが主要な売上構成となっていますが、中長期的にはデータセンター向けや中型二次電池などの大きな成長が期待されます。

本日は製品群のうち、グレーの部分に該当する新事業について、より詳しくご説明します。

SensEIの成長戦略

初めに、産業機器市場における予知保全向けセンサとソフトウェアのビジネスである「SensEI」についてご説明します。

市場からは、クラウドに対応した高度なインテリジェントセンサソリューションが求められています。

当社のさまざまなセンサと最先端のAIおよびエッジコンピューティングを搭載した「edgeRX」および「edgeRX Vision」は、新たに「AWS」のIoTツールとセキュアなクラウドサービスを統合することで、主要なAWSサービスと連携できるようになりました。

世界中の産業機器を取り扱うお客さまに向けて、スケーラブルでインテリジェントな機械の健全性監視および予知保全を実現していきます。

スマートグラス向けビジネスの成長戦略

次に、AIエコシステムにおいて新たな成長アプリケーションとして注目している、スマートグラス向けビジネスの成長戦略についてです。

スマートグラス市場は、AI機能を付加することでより軽量かつユーザビリティが向上し、スケーラブルな製品となる可能性を秘めています。また、スマートウォッチのような生産台数の拡大も期待されています。

今年6月に、当社は人間の黒目をトラッキングできるハードウェアおよびソフトウェアを提供する企業である、米国のSoftEye社を買収しました。

この買収を受け、新たにAR Platforms Business Division(AR Platform BD)を設立し、現在開発中のフルカラーレーザーモジュールなどをソリューションとして提供するための活動をしていくこととしました。

また、この新組織の活動にバッテリー、センサ、ピエゾハプティクスの骨伝導スピーカーなどの既存製品を組み合わせることで、スマートグラスのエンジンとなりえるソリューションを提供していきます。

最新のセンサ機能については、来年1月に米国で開催されるCES(Consumer Electronics Show)で公開予定です。

半導体製造装置の成長戦略

次に、半導体製造設備向け製品についてです。

今後はAI半導体などの高機能化に伴い、後工程の高密度化や、2.5D・3D技術などが成長すると見込まれる高密度パッケージ市場は、スライド右側のグラフにあるように、CAGR(年平均成長率)20パーセント程度で拡大すると予想されています。

当社は、高密度・高精度実装技術に加え、高信頼性・高放熱特性材料を組み合わせることで消費電力低減に貢献し、独自の競争優位性を確立することで市場シェアを拡大していく予定です。

受動部品

次に、成長けん引事業である、現有の4つのカンパニーそれぞれの事業についてご説明します。

まず、受動部品についてです。2024年5月に想定したROIC目標値に対し、BEV(電気自動車)市場の減速や産業機器市場の低迷の影響もあり、当初目標の達成は厳しい状況です。

しかし、AIサーバー向けの需要が想定以上に伸びており、低消費電力部品の拡大や高付加価値品の生産能力を早急に確立することで、挽回を目指していきます。

特に、アルミ電解コンデンサについては、2026年9月には2025年3月期対比で、数量ベースの生産能力を約2倍に増やし、ターンアラウンドを目指します。

また、昨日発表のとおり、MLCC等の受動部品における材料技術をより強化するため、日本化学工業社との戦略的提携を決定しました。この提携により、自動車やAIエコシステム向けの高付加価値品をタイムリーに開発していきます。

これらの施策を基に、xEV向けに加え、AIエコシステム向けビジネスを拡大し、中長期的な成長の実現を目指していきます。

センサ応用製品

次に、センサについては、当初想定していたROIC目標値の達成に向けて進捗しています。

マーケットを主体とした事業運営体へトランスフォームし、マーケットインとコンセプトアウトの手法で新製品を拡大してきました。

特に、TMRセンサは生産能力を拡大中であり、顧客基盤およびアプリケーション基盤の拡大が進んでいます。また、MEMSマイクロフォンの新製品の立ち上げ効果により、MEMSセンサ事業の収益改善が進捗しています。

今後は中長期的な成長を見据え、MEMSセンサと磁気センサを組み合わせるなど、新製品の開発をさらに推進し、AIエコシステムやスマートグラスなど先端デバイスへの拡販を強化していきます。

また、ゲームチェンジャーとのパートナーシップ拡大に向け、コーポレートベンチャーキャピタル(TDK Ventures)との連携も並行して強化していきます。

磁気応用製品

次に、磁気応用製品についてです。HDDストレージデバイスの急激な需要回復により、ROIC目標値を上回る見込みです。

HDDサスペンションにおいては、数年来進めてきた拠点再編などの構造改革の効果と需要増の効果により、Profit baseへのターンアラウンドを達成しました。

また、HDDヘッドに関しては、独立系メーカーとしてのポジションを活用し、顧客基盤の拡大を推進することで、早期のターンアラウンドを目指していきます。

さらに、MAMR(マイクロ波アシスト磁気記録)に続き、HAMR(熱アシスト磁気記録)の開発を加速し、市場投入も進めていきます。

中長期のROIC目標達成に向け、需要に応じた最適な投資と生産能力の拡大を図るとともに、ポートフォリオマネジメントをさらに推進していきます。

エナジー応用製品

エナジー応用製品については、革新的な新製品をタイムリーに市場へ投入することで、ROIC目標値を上回る見込みで進捗しています。

今後は高付加価値製品や生産性改善によって収益性を維持し、ウェアラブルデバイス向けアプリケーションの拡大を進めていきます。

また、中型二次電池事業では収益を安定化させ、Growingへ格上げするため、パワーセル製品とデータセンター向け中型二次電池製品のラインナップ拡大を図ります。

データセンターインフラ向け産業用電源についても、米国のQEIコーポレーションとのM&Aとあわせて、事業拡大を進めていきます。

重点モニタリング事業の収益性改善が進んでいます

ビジネスカンパニーごとのポートフォリオマネジメントの進捗をまとめると、スライドのとおりです。重点モニタリング対象としていた27CBUに2つのCBUを新たに追加し、合計29CBUとなっています。

Profit baseとなったCBUには、薄膜デバイスが追加されました。また、ベストオーナー等への事業譲渡および終息を実施したビジネスにはEV用電源などが加わり、計9つのCBUとなっています。

再建中のビジネスユニットは9つありますが、この中で金額が最も大きいものはHDDヘッドです。先ほどご説明したとおり、ターンアラウンドの見込みがあります。

また、アルミ電解コンデンサは能力増強中であり、Profit baseへの改善途上にあります。さらに、MEMSマイクロフォンについてはスマートフォン向け新モデル適用の拡大効果もあり、収益改善の途上にあります。

現在、議論を進めている9つのCBUについては、この中期経営計画の最終年度までに方向性を決定していく予定です。

AIを中心とした成長領域へのR&D投資を強化しています

3つ目の、インオーガニック成長のドライバーとなるR&D投資についてご説明します。

当社は、売上高の約11パーセントを研究開発投資に充てています。スライドの円グラフは、2023年時点の知財ポートフォリオを示したものです。

今後の成長が見込まれるセンサやAIエコシステム向け事業に資する知的財産投資を行い、事業ポートフォリオに合わせた知的財産ポートフォリオを構築していきます。

AIエコシステムの進展においては、消費電力が大きな課題ですが、当社はその課題を機会と捉え、中長期視点での開発投資を継続・強化していきます。

現状の開発製品としては、9月の「Investor Day」でもご説明したニューロモルフィックデバイスやスピンフォトディテクタに加え、リザバーコンピューティングや全固体電池などの開発も加速していきます。

長期の技術戦略:成長領域への研究開発投資を強化しています

研究開発を加速させるためには、組織横断的に情報を共有し、「価値創造チェーン」を構築することが重要です。当社では、約500億円を戦略投資枠からCVC(コーポレートベンチャーキャピタル)に投資しています。

TDK Ventures Inc.が戦略投資を行っており、長期的な視点でどのようなテクノロジーが成長するのかをタイムリーに情報収集しています。

そして収集した情報をR&D部門およびマーケティング部門が迅速に分析し、タイムリーな新製品開発や事業化につなげています。

スライド右側のフェライトツリーは、これまで何度かご説明してきた内容ですが、フェライトツリーの枝葉をどのように成長させていくべきかを考えています。

その光の役割を果たすのが、TDK Venturesがアンテナを張っている技術領域です。具体的には、スライドに紫色でハイライトしている分野に投資しています。

引き続き、当社の価値創造チェーンを強化することで、今後のAIエコシステムの成長に貢献し、フェライトツリーをさらに大きく成長させていく方針です。なお、M&A投資の可能性についても、引き続き前向きに検討していきます。

ガバナンスの進化

次に、ガバナンスについてご説明します。当社は、スライド左側に示した変遷のとおり、コーポレート・ガバナンスを進化させてきました。

また、グループガバナンス方針である「Empowerment & Transparency(権限委譲と透明性の確保)」という考え方のもと、地域本社や中核子会社への権限移譲を積極的に進めています。

ビジネスカンパニーをはじめとする執行側への権限移譲を進める一方で、取締役会と執行側は徹底的に議論を行っています。

このような取締役会のカルチャーを、2023年に明文化しました。当社では、社外取締役が代々議長を務めているため、非常に活発な議論が行われています。

取締役会の文化は、企業文化でもある「機能対等」と同じく、社内外の隔たりなく、取締役・監査役が対等に議論を行う文化が昔から受け継がれています。

侃々諤々の議論を重ねた結果、企業価値向上という共通の理解に至ったため、取締役の構成が変わってもその文化を継承すべく、2023年にボード・カルチャーとして明文化しました。

TDKのボード・カルチャー

その内容は、コーポレート・ガバナンスの基本方針として明記されており、企業価値向上に貢献する本質的な議論を優先し、全社視点の議論を中心に据えています。

また、報告よりも議論や質疑の時間を重視し、徹底した議論がなされています。

取締役会の進化を図っています

取締役会における重点テーマは、スライドのとおりです。活発な議論のための取り組みとして、取締役会の実効性評価、オフサイトミーティングの実施、社外役員のみでの会合を四半期ごとに行っています。

また、投資家のみなさまからいただいたフィードバックを踏まえ、取締役会において資本政策や事業ポートフォリオマネジメントなどについても議論しています。

企業価値向上に資する取締役

本日は、社外取締役4名が登壇し、会場の投資家のみなさまと直接コミュニケーションを取る機会を設けています。先ほどご説明した取締役会の実態や実効性について、より一層ご理解いただければと考えています。

まずは、執行側が中期経営計画や長期ビジョンの達成に向けた取り組みについて質疑応答を行います。その後、執行側は退席し、社外取締役のみが登壇してご質問を受け、対話します。よろしくお願いします。

質疑応答(中期経営計画の進捗)
サマリー
動画

社外取締役対談 登壇者のご紹介

それでは、社外取締役対談に移ります。

質疑応答:TDKの事業ポートフォリオマネジメントにおける変化と課題について

質問者:「CBU(ビジネスユニット)の部門長によって意識の差に違いが大きくあり、どのようにベストプラクティスを共有し、よくするのか。例えば、電池のスピード部分を受動部品にどのように当てはめるのか」というようなお話を以前されていたかと思います。

現在は状況をどのように見られていて、現場の変化などが改善されているのでしょうか?

また、御社の社外取締役の中で、TDKがROIC経営を進めていく上で、課題として残っているものは何でしょうか? このあたりを整理していただければと思います。

岩井睦雄氏(以下、岩井):確かに以前、そのような課題感について述べました。私の印象としては、特にエナジー(二次電池)分野では先行してさまざまな手を打っています。不利な状況への対応だけでなく、将来を見据えた新製品の開発など、非常にスピード感をもって進められています。

また、利益達成への意欲、すなわち「絶対に達成する」といった意識もしっかりと感じられます。このような「他事業部もぜひ学習していただきたい」という事項については、取締役会の中でも意見が出されてきました。

実際にECBC(電子部品ビジネスカンパニー)の方が、エナジー分野はどのように開発を進め、スピードを上げているのかについて学ぶ取り組みも実施されています。

そして、先ほどからも触れられているように、縦割り型の組織だけではなく、新しい取り組みには横の連携も必要です。TDK Venturesのような最先端で活動を行っている組織と各事業部が横断的に連携しながら、さまざまな課題に取り組んでいます。

コーポレート部門では、R&D部門がこれらの取り組みを主体的に引き受け、開発を進めています。また、M&Aを積極的に活用する動きも進んでいるのではないかと思います。

細かい課題については、さまざまなものがあると思います。私としては、現状の地政学的リスクにどう対処していくかという課題は、非常に難しい問題です。

しかし、逆にそれをチャンスに変えるために「どんなふうにやれば、そのようになっていくだろうか?」という点が1つの大きな課題ではないかと思っています。山名さんはいかがですか?

山名昌衛氏(以下、山名):やはりTDKの強みは、異なる事業形態の中で、グローバルな人材の能力を最大限に引き出している点です。これがTDKの強みであり、これまでの成長を支えてきました。

この良さを今後も維持することは必要ですが、現在変わりつつある点もあります。まずは、キャッシュ・フロー経営を徹底して行ってきたことです。

今日の説明にもあったように、ハードルレートを設定した上でポートフォリオ管理を行い、課題事業もあるものの、成長分野に全体としてどうつなげていくかといった全体最適の議論を浸透させてきました。

そして成長領域においてはAIのエコシステムが代表的な例ですが、当社が事業ごとに持つ技術を掛け合わせたり、ソフトウェアや将来的なアプリケーションなどを加えたりする取り組みが挙げられます。

このようなエコシステムを構築し、まずは3年から5年かけて成長させていく方針を浸透させています。従来のような求心力で引き出す枠組みから全体の力を結集し、さらにプラスアルファを目指す方向へと確実に進んでいると感じています。

一方で課題も挙げるとすれば、3つあります。1つ目は、社会に対して能動的に価値を創造し、ソフトウェアやアプリケーションを組み込むような方向へ進む中で、人材面の強化が必要である点です。

技術面では先を見据えたベンチャー投資などを進めていますが、これをかたちにして価値を創出し、その成果をデリバリーするための人材については現在も検討を進めています。

2つ目は、3兆円から5兆円規模の経営を見据えた際に、グローバル経営全体をどう進化させるかという点です。

事業面での横の連携も重要ですが、縦の強さを維持しながら「どのような機能については、グローバルヘッドクォーターからの求心力でもってやるのか」といったグローバル経営進化という新たなステージに明確に移行している課題、およびそれに対する取り組みが必要です。

3つ目は少しテーマが異なりますが、今後3年から5年にわたる成長領域において、技術を卓越して推進する力がついてきている一方、中国の新興企業がコスト競争力だけでなく、成長分野での技術力を急速に高めている現状があります。

この現実を踏まえると、すべての領域ではなくとも、卓越した領域でさえ新たな競争にさらされる可能性があります。

このような中で、DXやAIなどを活用しつつトータルでのコスト競争力を強化する必要があると考えており、一段と当社全体としてのトータルコスト競争力を高めることが課題であると認識しています。

質疑応答:監査等委員会設置会社への移行に関する議論について

質問者:以前お話をうかがった際、社外監査役を含め、監査役の立場を超えた議論が行われていると拝聴しました。監査等委員会設置会社への移行については、どのような議論がなされているのか、可能な範囲で教えていただけますか?

岩井:現在、当社は監査役会設置会社ですが、ご指摘いただいたように、私たちは「監査役だから、自分の法的なところだけ」といったかたちではなく、取締役会会議内ではそれぞれの経験や強みを踏まえ、「中長期的には本当にこれで良いのだろうか?」という点について、しっかりと議論を進められていると考えています。

一方で外部環境の変化などを踏まえ、「ガバナンス体制をどのようにしていくのか」という内容については、コーポレート・ガバナンス委員会という委員会を設置し、議論を行っています。「かたちを変えなければいけない」というより、「実際にボードはどのような役割を果たすべきだろうか」という観点です。

現在のボード・カルチャーを形成する上で、形態にかかわらず取り組むべきことだと考えており、「今のかたちだから、どうしてもそれができてない」といったこともないと考えています。他社の状況なども鑑みながら、引き続き検討を続けていきたいと考えています。

質疑応答:部品とソフトウェアの融合に関する議論とTDKのポテンシャルについて

質問者:Transformationに関するお話のうち、部品とソフトウェアの融合、また、ハードとソフトウェアの融合については、社外取締役のみなさまも知見をお持ちだと思います。

現在、マネジメントの方々にはどのようなアドバイスをされていて、どのような議論をされているのか教えていただけますでしょうか? ハードルや、逆にTDKの強みを活かしたポテンシャルをどのように見ているのかについて教えてください。

勝本徹氏(以下、勝本):このようなご質問は頻繁にいただいており、TDKの執行側の方々ともよくお話ししています。

従来の部品をBtoB、つまり企業向けに提供する事業形態では、取引先とスペックについてやり取りし、そのスペックに適合する部品やデバイスを、コストと納期を踏まえて提供するかたちが主流でした。

例えばスマートフォンメーカーに大量の部品を納品する際も、スマートフォンを利用する最終顧客の要望を直接聞くのではなく、スマートフォンメーカーのスペックに合わせたものを開発・提供することが多かったかと思います。

しかしながら、BtoCやBtoBにおいて先ほどのARグラスや「SensEI」のような製品を提供する場合、例えば「SensEI」を工場やさまざまな企業が使用する際の顧客価値やニーズを的確に把握していなければ、デバイスやソリューション、システムの構成が顧客の要求に合致せず、使い勝手の良いソフトウェアを開発することが非常に困難になると考えています。

現在、センサビジネスをされている方々は、アプリケーションに近い部分での顧客とのやり取りが増えています。つまり、実際に最終商品の顧客の要望を聞く機会が増加しているということであり、そのような活動をさらに拡大することが重要だと考えています。

さらに言えば、販売やマーケティングに携わる方の考え方も、そのように切り替えていく必要があります。

例えば、とある携帯会社が「次はこのようなものが作りたいので、このようなスペックの部品をいつまでにいくらで欲しいです」という要望に対応するのとは異なります。

「SensEI」やARグラスなどの製品がお客さまに最も価値を提供する使われ方はどのような点であり、それを実現するためにはどのようなコストや部品、ソフトウェアが必要になるのかを自ら考えて作っていくことが、非常に重要になってきます。

そのような意味では、先ほどの質問にもありましたが、TDKがトランスフォームしていく大きなテーマとして、技術的な要素と販売やマーケティング的な要素は非常に大きなポイントになると考えており、私たちもその点についてよく話をしています。

山名:事業構想力やアーキテクトができる人材を育てない限り、ソフトウェアやAIに取り組んだとしても、最終的には「どのような事業を構想するのか」という部分を担う人材が重要になると考えています。

とはいえ、これまでの経緯もあるため、一気にそこに至ることは難しい状況です。一方で現在当社が注力しているのは、「SensEI」やスマートグラスなどに加え、「こんなことをやれば、こんな良いことが起こるよね」というものを、グループ全体で早急に実現することが挙げられます。

技術者たちは自分たちの取り組みが新たな社会に貢献することであることを理解しており、かたちにするスピードに全力を尽くしているのです。

さらに、もう1つの強みとして、世の中で影響力を持つ最終プレーヤーやOEMプレーヤーと深い関係性を持っていることが挙げられます。

当社はICTや自動車といった分野のトッププレーヤーと密接に協力しており、これらの企業のマーケティングや人材と連携し、共創を通じて一緒にかたちを作り上げていくという基本方針があります。

したがって、最初に述べた事業構想力は簡単に築けるものではありませんが、若い技術者や人材が経験を積み重ねているため、3年後や5年後には大きな成果を期待できると考えています。

質疑応答:TDKの次期経営チームの人材育成と議論について

質問者:指名諮問委員会の委員長でいらっしゃるということで、中山さまに質問です。

先ほどのお話の中でも、やはりTDKがあるべき姿が今後少し変わっていく可能性があるとおっしゃっていました。それは事業のあり方のほか、体制面でもそうだと思います。そのような中で、次期経営チームにどのような人材を育てていくのかという点をうかがいたいです。

現実的に次期経営チームで求められる人材が、現時点でどの程度育ってきているのかについて教えてください。さらに、時代の変化に応じてどのように変えていくべきなのかという点において、どのような議論が行われているのか教えていただけますか?

中山こずゑ氏(以下、中山):まず、指名諮問委員会の委員長を務めていて強く感じるのは、「人間は促成栽培できない」ということに尽きます。

ただし、ある年齢でさまざまな経験を積ませると、先ほど山名さんや勝本さんがお答えになったように、非常にダイナミックな人材に育つ可能性が非常に高いです。

TDKには10万人の従業員がいますが、日本国内には1万人しかおらず、グローバルで見れば非常に大きなポテンシャルを有しています。

それに対してそれぞれの層に応じた、しっかりとした教育プログラムが整備されつつあり、むしろ「できた」と表現したほうが適切かもしれないような状況にあります。

特に、私は委員長という立場でそれぞれの層の教育プログラムを見学しながら、「この人は良いな」「この人はどうだろう」といったふうにチェックしています。

とはいえ、私は社内の人ではありませんので、ここで登場する人材の育成は、執行側を信頼して進めていく必要があります。その上で、私たち委員4名が多角的な視点で状況を見ているというのが、現在進行中の取り組みです。

これからのことを考えると、型にはまったかたちを追求するのではなく、このボラティリティの高い世の中で、どのような人材が求められるのかについて、私たち自身も学びながら進めていく必要があると考えています。期待していてください。

質疑応答:中長期で目指す姿の実現に向けた取り組みに対する社外取締役の監督機能について

質問者:社外取締役の監督機能について質問です。先ほど齋藤社長がご説明されたように、さまざまな取り組みを実施し、活発な議論が行われているとのことでした。

事業ポートフォリオマネジメントをどのように監督し、長期的な目標を実現するよう導いていくのか、その監督機能について教えてください。

具体的に、例えばHDD事業については、全体的に見ると収益性を大きく改善されたと感じる一方、中期的な目標に対しては依然として大きく下回る水準にあると考えます。

このような状況をどのように変えていかなければならないのか、また、全社的な利益貢献や収益性改善にどのように結びつけていくべきかについて、おうかがいしたいです。

さらに、中長期の高い成長目標を達成する上では、先ほど触れられたAIエコシステムをさらに伸ばしていかなければならないと感じているものの、現時点では数値的に不明瞭な部分があるように見受けられます。

このような状況でリスクテイクを促進するため、どのような監督が行われているのでしょうか? また、社外取締役が具体的にどのように監督しながら、中長期の目指す姿に向かっていくよう働きかけているのでしょうか? これらについての取り組み状況を教えていただけますか?

岩井:いただいたご質問に関連して、今日のご説明にあった概要だけでなく、ポートフォリオの状況や「この事業をこのようにしていきたい」といった個別の報告を四半期ごとに受けています。

その過程では、社外取締役や監査役からの意見も集め、「ここはこのようにしたほうが良いのではないか」といった議論を活発に行っているのが現状です。

ただし、その際は「この事業のここをこうすれば良い」というような個別の事業に注目するよりは、ボードの役割として、全体から見て進捗がうまくいっているかどうか、また、売却を検討する際には失われるものがあるのかどうか、さらにレピュテーションリスクを含めて最終確認を行っています。

さらに、監督というよりもむしろ中長期的な企業価値の向上を目的として取り組んでいるため、単純に損切りをするのではなく、事業における技術や将来性を保全し、将来の成長につながるかどうかを見極めています。

我慢どころを判断するケースもあるため、単に赤字を垂れ流している状況ではなく、むしろ「将来に向けて今が頑張りどころだ」というところへの投資をどのように見極めるかが重要だと考えています。

私は、「監督」という言葉があまり好きではありません。ボードにはもちろん監督機能がありますが、単なる取り締まりをするのではなく、私たちは「本当に生きた赤字なのか? それとも将来にわたってずっと価値が生み出せないのか?」というようなテーマについてしっかりと議論を重ねることを重視しています。

ギリギリまで時間をかけた討議が、企業価値を最大化するために必要だと感じています。他のメンバーのご意見や補足についても、ぜひお願いしたいと思います。

山名:どのような事業であっても、リスクは避けられません。特にこれほど変化の激しい時代では、世の中や技術の変化が常に起こっています。

そのような中で、さまざまな提案を取締役会で判断する際、私も岩井さんがおっしゃるように、自らの役割を単なる監督だと思っていません。

監督というのは、やはり主体的に信念を持って本当に深く考えることが重要です。しかしそれだけでなく、今後の予兆、例えば技術や競合の動向、社会価値の変化などを常に考慮しながら対応していくことも求められます。

その過程で、自分たちに足りない能力を冷静に認識し、それを補完する手当を行っており、このような過程で説明されているかどうかが非常に重要だと考えています。

社外取締役には、さまざまなバックグラウンドや経験があります。「これが足りないのではないか」「一人よがりすぎるのはこうではないか」「能力をトランスフォームというものの、人の量だけでなく質はどうか」といった多面的な視点で議論することで、結果的にはリスクの低減やリスクテイクを促すバランスを意識することが重要だと考えています。

勝本:監督というよりも、TDK全体がどうすれば最も良くなっていくかを常に考えるという点が大きいと思います。また、TDKは機会を本当にオープンに提供してくれる会社です。

例えば、先ほど中山さんがお話ししていた次世代、次々世代、さらにその次の幹部となるべき人材を対象とした研修があり、ちょうど先週には、GMクラスの研修が日本で行われました。その際、私も3時間ほどレクチャーとディスカッションを行う機会がありました。

これはTDKグループ全体を代表するような、多様性のあるメンバーが世界中から約30名集まった研修です。ディスカッションを行った際、非常に熱意をもってお話しいただける方々との意見交換がありました。このように、トップ層だけでなく若い世代の方々とも活発に意見を交わす機会を多くいただいています。

さらに、社外取締役としても、現在の経営陣だけでなく、次の世代、さらに次世代の方々ともディスカッションする機会があります。このような経験を通じて、「TDKがこれからどうなっていくのか」といったテーマを非常に重層的に理解する機会を得ています。

そのため、監督という立場ではなく、「TDKがどうしたらいい会社になっていくか」を社外の視点から共に考えることができるというイメージを持っています。

中山:ふだんの取締役会のような雰囲気になってきましたが、勝本さんがおっしゃったように、現場に行く機会も非常によく作っていただいています。

私は、人や組織の力を見る際、変化は周辺から起こるものだと思っています。そのため、現場の人たちが本当にキラキラしているか、モチベーションを持って取り組んでいるか、エンパワーされているか、といった点が非常に重要だと考えています。

昨今では「監督機能」という言葉がよく使われていますが、同じミッションに向け、我々は「どうやったらこれを良く価値創造できるのか」という立場で議論していると感じています。現場でそのような方々と直接コミュニケーションする時間を持てるのは、非常に貴重なことです。

岩井さんが「監督」という言葉がお好きではないとおっしゃったように、私も単なる監督や取締役という感覚ではなく、一緒にやっていくという気持ちを持っています。

一方で社内では気づけない複眼的な視点を持ち、新鮮な目で物事を見ることも、私たちにとって非常に重要だと思っています。

岩井:1つだけ補足すると、まったく監督していないわけではなく、コンプライアンスやリスクマネジメントに関する事項は定期的にしっかりと報告を受けています。

特にリスクの見立てについては、オペレーションレベルで執行役が考える部分と、私たちのように外部から見ている部分とのズレを含め、「会社が大きなリスクにさらされないように」といった視点からきちんと監督しているため、その点については誤解のないようお願いします。

岩井氏からのご挨拶

岩井:本日はお集まりいただき、ありがとうございます。このような機会を通じて、みなさまの関心事や心配事を直接おうかがいすることは、非常に貴重な機会だと感じています。

このような経験を糧にし、より良いボード、そしてより良いTDKを目指して貢献していきたいと思います。今後ともよろしくお願いします。本日は誠にありがとうございました。

齋藤氏からのご挨拶

齋藤:みなさま、本日は長丁場にわたってお時間をいただき、誠にありがとうございました。社外取締役との直接の対話、そしてみなさまから多数のご質問やご意見をいただきましたこと、あらためて御礼申し上げます。

統合報告書(※)などでご説明しているガバナンスよりも、実態や実効性についてご理解を深めていただけたようであれば幸いです。

9月にもご説明しましたが、新しいブランディング「In Everything, Better」に込めた思いとして、私自身は常日頃から「ベストというものは永遠にこない」と考えています。

そのため、常に「ベター」であること、「永遠のベターを目指していこうじゃないか」ということを、「TDK United」の10万人のチームメンバーに語りかけています。

「TDK United」を通じて成長戦略を実行し、また、ガバナンスを強化することで、長期ビジョンの実現を目指しています。

本日ご説明した中期経営計画の進捗や長期ビジョンの達成に向けた道筋も、決して「ベスト」ではないと考えています。まだまだ改善の余地がある中、投資家のみなさまとの対話や共同活動をより活発化させることで「ベター」な施策や戦略を練り上げていくことが、長期的な企業価値の向上に非常に重要であると考えています。

そのため、本日のイベントに限らず、さまざまな場において社外取締役や執行側も含め、今後も継続的に投資家のみなさまと建設的な対話や協働活動を続けていきたいと考えています。

引き続きご支援のほど、どうぞよろしくお願い申し上げます。本日はありがとうございました。

※参考:TDK United Report 2025 (統合報告書)

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