■CAC Holdings<4725>の中長期経営方針と進捗状況
事業ポートフォリオの拡張も重要なテーマとなる。同社は企業のIT課題の解決に取り組んできた実績を基盤とし、既存市場ではAIを活用した高付加価値サービスの展開や販売チャネルの拡大を進めていく方針である。そのうえで、既存事業を起点とした隣接領域では、一社ごとの個別要件に対応する受託型ビジネスから、業界や複数の顧客に共通する課題を解決するソリューションやプロダクトへと展開領域を広げる。あわせて、非連続領域においてはIT企業の枠組みを超え、これまで存在しなかった市場の創出にも挑戦する考えである。こうした事業ポートフォリオの転換を支える成長のドライバーとして位置付けられるのがAI Transformation、新規事業の拡充、M&Aの戦略的活用であり、収益源の多様化と中長期の成長基盤の強化を図る構想である。さらに、同社はグループ内のリソースだけで成長を実現するのではなく、外部との連携も重要な要素と見ている。企業や大学などのパートナーと共創関係を築き、新たな事業機会の創出及び事業領域の拡大を進めることで、既存事業を起点に隣接領域と非連続領域の双方へ展開することで、持続的な成長を支える事業ポートフォリオの構築を目指している。
事業セグメント別では、国内IT事業は2030年12月期まで年平均売上成長率6%を見込む。AIや高付加価値サービスを軸とした案件拡大に加え、社会課題の解決を意識した共創型の事業展開を進める方針である。戦略的M&Aも活用してバリューチェーンの拡張を図る。海外IT事業は同10%以上の成長を期待しており、特にインドやインドネシアなどの高成長市場での事業拡大を進める。グローバル拠点間でのクロスセルやサービス連携を強化し、海外事業の収益基盤を拡大する計画である。
キャッシュアロケーションでは、M&Aを重要な成長投資と位置付ける。2030年12月期までの期間で130億円以上の枠を設け、財務健全性を維持しながら必要に応じて外部資金も活用し、事業ポートフォリオの拡張を進める考えである。一方で、株主還元は事業から創出されるキャッシュ・フローを原資として実施する方針であり、DOE5%水準を目安として成長投資と還元のバランスを重視した資本政策を維持すると見込まれる。
■ESG
人的資本の非財務価値向上への取り組みを推進
同社は、ステークホルダーとともに、高度IT人材による事業活動を通じて、持続可能な社会の実現と企業成長の両立を図るべく、2022年にマテリアリティの整理と優先順位付け、ゴール設定を実施した。「事業活動を通じた社会課題の解決」を最重要項目に据え、サステナビリティ経営を推進している。社会インフラ分野における課題解決型のサービス展開を通じ、非財務価値の向上を目指す取り組みを進めている。
1. 被災地支援から広がる音声感情解析AI「Empath」
同社が提供する音声感情解析AI「Empath」は、人の声のトーンやスピードなどの特徴をAIで分析し、喜び・平常・怒り・悲しみ・元気さの5つの感情を瞬時に判定する技術である。東日本大震災の被災地で活動するボランティアのメンタル状況を把握する目的で開発が始まり、声から心理状態を推定して無理をしていないかを把握する仕組みとして活用された。現在はクラウド型APIとして提供されており、過去に蓄積した膨大な音声データを基に構築したAIモデルを活用できる点が強みである。導入の柔軟性が高く、世界50か国以上、4,600件を超える用途で利用されている。主な活用分野はコールセンターで、顧客対応時の感情変化やオペレーターのストレス状態を把握して早期のケアや離職防止に役立てている。対話型ロボット、1on1ミーティング支援、ゲーム制作でのキャラクター表情連動など応用領域も広いため、LLMとの連携により言語理解と感情解析を組み合わせ、人と人、人と機械のコミュニケーションを深く理解するAIの開発を進めている。
2. 2016年から継続する「ボッチャ支援」
同社はESG活動として、障がい者スポーツ「ボッチャ」の普及・支援活動を2016年から継続しており、この活動を通してグループ社員が社会とのつながりを持ち社会に貢献することを目指している。単なる資金的な支援だけではなく、社員自らが企画・実施することを重視した活動となっている。「ボッチャ」は障がい者向けに考案され全世界に普及(1988年にパラリンピック正式競技に採用)しており、障がい者・健常者、年齢、国を問わず楽しめるスポーツで、戦略性も求められる。これらの特徴から、「ボッチャ」を新人研修や社員研修のカリキュラムに取り入れるだけでなく、社員の家族等にも「ボッチャ」に触れ合う機会を提供している。今では国内グループ社員の多くが「ボッチャ」経験者となっていることに加え、2026年4月時点で2人の選手を雇用している。また、同社はこれらの活動が評価され、10年連続で「東京都スポーツ推進企業」に認定されている。同社の「ボッチャ」への取り組みは、普及・支援の枠を超えグループ社員のコミュニケーションや社会貢献に対する意識向上に貢献している。
(執筆:フィスコ客員アナリスト 吉林 拓馬)
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