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株価急落「IHI」は買いか?長期投資家が見るべき防衛銘柄ならではのリスクと3つの成長点=栫井駿介

現在、株式投資家の間で「IHI(石川島播磨重工業)<7013>」に対する注目度が非常に高まっています。同社はいわゆる「重厚長大」を地で行く企業であり、一般消費者の生活には直接関わりがないように思えるかもしれませんが、実は国家の根幹システムや航空機のエンジンシステムを支える極めて重要な役割を担っています。特に昨今の国際情勢を受けた「防衛銘柄」としての側面に加え、AIデータセンターの台頭による電力不足を背景としたエネルギー関連、そして抜本的な経営改革など、投資家が好むホットな話題が凝縮されているのがこの銘柄の特徴です。かつては業績が伸び悩み、利益率も低い「うだつの上がらない会社」という認識もありましたが、今や時代の潮流を追い風に、その姿を大きく変えようとしています。本記事では、IHIの株価下落の理由と事業構造をプロの目線で徹底解剖し、現在の株価水準が『買い』なのか、長期投資家が注目すべきポイントを分かりやすく解説します。(『 バリュー株投資家の見方|つばめ投資顧問 バリュー株投資家の見方|つばめ投資顧問 』栫井駿介)

プロフィール:栫井駿介(かこいしゅんすけ)
株式投資アドバイザー、証券アナリスト。1986年、鹿児島県生まれ。県立鶴丸高校、東京大学経済学部卒業。大手証券会社にて投資銀行業務に従事した後、2016年に独立しつばめ投資顧問設立。2011年、証券アナリスト第2次レベル試験合格。2015年、大前研一氏が主宰するBOND-BBTプログラムにてMBA取得。

期待値の剥落がもたらした下落の正体

まず、直近の株価動向から確認していきましょう。

IHI<7013> 週足(SBI証券提供)

IHI<7013> 週足(SBI証券提供)

IHIの株価は、防衛関連銘柄への期待が大きく盛り上がった2024年から上昇気流に乗り、2026年1月から2月にかけて4,698円というピークを迎えました。
しかし、この絶頂期を境に状況は一変し、4月27日には2,800円という安値を付けるまで急落しています。

この短期間での大幅な下落は何を意味しているのでしょうか。

結論から言えば、それは「期待値の調整」です。
これまで投資家は、防衛予算の拡大などを背景に業績が際限なく伸び続けるというストーリーを織り込んでいました。
しかし、5月8日に発表された最新の決算内容によって、将来の伸びに対する期待が少し修正されたことが下落の主因と考えられます。

航空宇宙防衛が利益の7割超を占める実態

IHIという企業の正体を知るには、その事業構成を理解することが欠かせません。
同社のビジネスは大きく4つの柱で構成されていますが、収益の源泉は驚くほど一極集中しています。

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出典:IHI 統合報告書2025

まず、最も重要なのが「航空宇宙防衛事業」です。
ここは主に飛行機のエンジンを製造しており、2025年度の構成を見ると、EBITDAの70%、営業利益の実に74%をこのセグメントだけで稼ぎ出しています。

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出典:IHI 決算説明資料

つまり、IHIの業績はほぼ「エンジンの成否」にかかっていると言っても過言ではありません。
具体的には、民間航空機エンジンの修理や整備といったアフターマーケット事業、そして国からの受注に基づく防衛事業が利益を力強く押し上げています。

その他の事業についても触れておきましょう。

「産業システム・汎用機械事業」では、立体駐車場のシステムや車両用過給機、圧縮機、物流システムなど、大きな機械やシステムを扱っています。

「資源・エネルギー・環境事業」では、発電用のガスタービンや貯蔵タンク、さらには原子力関連の設備を手がけており、インフラの根幹を支えています。

そして「社会基盤事業」では、橋や水門、トンネルを掘るためのシールドシステムなど、私たちが社会生活を営む上で欠かせない基盤を作っています。

このように、とにかく巨大なシステムを構築するのがIHIの真骨頂なのです。

重工3社(三菱・川崎・IHI)の比較とIHI特有の懸念材料

防衛関連銘柄を語る際、投資家は必ず三菱重工業や川崎重工業と比較します。

これら3社はいずれも日本の防衛を支える重工業の雄として、同時期に同じような期待値で買われてきました。
しかし、足元のチャートを並べてみると、三菱重工や川崎重工に比べてIHIの下落幅が際立って大きいことに気づきます。

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出典:Google

この差が生まれている理由は、将来の業績見通しに対する「先行指標」が弱含んでいることにあります。
防衛産業は国の予算に左右されるため、投資家は足元の売上よりも、将来の売上の種となる「受注高」を非常に重視します。

Next: IHIの復活はあるか?成長を牽引する3つの重要ポイント

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