株式市場で大きな話題となっているイビデン<4062>を取り上げます。彼らが手がけているのは「ICパッケージ基板」と呼ばれる製品です。一言で言えば、これは半導体チップと電子機器のメイン基板をつなぐ、言わば「中間基板」のような役割を果たすものです。一見すると地味なパーツに思えるかもしれませんが、実はこの中間基板が存在しなければ、AI時代に不可欠なGPUやCPUがどれほど高性能であっても、デバイスとして機能させることは不可能です。現在のAIブームを根底から支え、その重要性が極めて高まっている基板メーカー、それがイビデンという会社なのです。(『 バリュー株投資家の見方|つばめ投資顧問 バリュー株投資家の見方|つばめ投資顧問 』元村浩之)
プロフィール:元村 浩之(もとむら ひろゆき)
つばめ投資顧問アナリスト。1982年、長崎県生まれ。県立宗像高校、長崎大学工学部卒業。大手スポーツ小売企業入社後、店舗運営業務に従事する傍ら、ビジネスブレークスルー(BBT)大学・大学院にて企業分析スキルを習得。2022年につばめ投資顧問に入社。長期投資を通じて顧客の幸せに資するべく、経済動向、個別銘柄分析、運営サポート業務を行っている。
ICパッケージ基板とは何か
ここで、ICパッケージ基板が具体的にどのようなものか詳しく解説します。
一般的に「基板」と聞くと、多くの人は電子機器の内部にある緑色のプリント配線板を思い浮かべるでしょう。
パッケージ基板は、そのプリント配線板と、最先端の半導体チップの間に挟まれる形で存在しています。
なぜこれが必要なのかというと、回路の「細さ」が全く違うからです。
最先端のチップは5ナノや3ナノという極めて微細な回路幅で動いていますが、下のプリント配線板の回路幅は50〜100ミクロンもあり、直接乗せても接合がうまくいきません。
このあまりに細すぎるチップの配線を、徐々に太い配線へと橋渡しするのがパッケージ基板の重要な機能なのです。
さらに、デリケートなチップを衝撃や水分、埃から守り、演算中に発生する激しい熱を効率よく外に逃がすという、極めて多機能な役割を担っています。
イビデンが選ばれる理由その1「顧客の懐に入り込む泥臭い開発」
グローバルに見れば他にも基板メーカーは存在しますが、先端パッケージ基板の領域でイビデンがIntelやNVIDIA、AMDといった名だたる半導体メーカーから絶大な信頼を寄せられているのはなぜでしょうか。
そこには、岐阜県大垣市に拠点を置くこの企業が、泥臭く積み上げてきた歴史があります。
イビデンの強みは、単に技術が高いだけではありません。
彼らは大手チップメーカーの「次世代製品」の開発段階から深く入り込み、1世代先に求められる技術を二人三脚で作り上げてきました。
こうした密接な関係があるからこそ、最先端の製造を担うTSMCからも一目置かれる存在となっており、今後も頼られ続ける可能性が極めて高いと言えます。
<セラミックからプラスチックへの挑戦とIntelとの絆>
この強固な信頼関係の原点は、1990年代のIntelとの仕事に遡ります。
当時、ICパッケージの素材には主にセラミック、いわゆる磁器が使われていました。
セラミックは安定しているものの、材料費が高く、また物理的にもろいという欠点がありました。
そこでイビデンは、素材をプラスチックに変えてはどうかという大胆な提案を顧客に行いました。
プラスチック化すれば小型化や通信の高速化、そして大幅な低コスト化が可能になります。
もちろん、プラスチックには「熱を逃がしにくい」「熱で反ってしまう」「精密加工が難しい」といった多くの技術的難題がありましたが、イビデンはこれを解決すると宣言しました。
この熱意ある提案が採用され、同社はIntelの技術進化のプロセスに深く組み込まれることになったのです。
<「プロジェクトX」級?現社長・河島氏とIntelの熱きドラマ>
当時のIntelからの要求は、Windows 95の普及前夜ということもあり、凄まじく厳しいものでした。
出荷台数を増やすために「不具合は出すな」「歩留まりを高めろ」「もっと早く作れ」といった過酷な課題が次々と突きつけられました。
当時、半導体界の王様であったIntelの要求に愚直に答え続けたのが、現在のイビデン社長である河島浩二氏です。
河島氏は顧客担当としてIntelの現場に深く入り込み、何か問題が発生すれば「すぐにコージを呼べ」と個人名で指名されるほどの信頼を勝ち取りました。
不具合があった際にも、窓口として寝る間を惜しんで問題解決にあたるその姿勢が、会社対会社の取引を超えた、密接な人間関係ベースの開発体制を築き上げました。
この時培われた、現場の要求を正しく理解し、自社のリソースを最速でマネジメントして対応する「意思決定のスピード感」こそが、今のイビデンの基盤となっています。
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