2026年7月21日に発表された、マテリアルグループ株式会社2026年8月期第3四半期決算説明(個人投資家向けIRセミナー)の内容を書き起こしでお伝えします。
AGENDA
吉田和樹氏(以下、吉田):マテリアルグループ株式会社取締役CFOの吉田です。本日はお忙しい中、当社の2026年8月期第3四半期決算説明をご視聴いただき、ありがとうございます。私から、今回の決算についてご説明します。
本日の内容です。初めての方もいらっしゃるかと思いますので、冒頭で会社および公表している中期経営計画の概要を簡単にご紹介した上で、第3四半期決算の内容に入ります。
PR発想をコアとしたマーケティング支援会社

吉田:マテリアルグループはPR会社を母体とした企業グループですが、いわゆる従来型のPR会社とは位置づけが異なります。
従来型のPR会社では、広報業務の支援をリテナー型と呼ばれる月額固定報酬をいただいて広報予算にアクセスする形式が一般的です。支援内容としては、メディア露出を獲得するための施策を提案・実施することが主となっています。
一方で、当社はPRをあくまで「発想」と位置づけており、PR発想をコアとしたマーケティング支援を行う会社です。
そのため、当社はマーケティング課題全般の解決を支援しています。プロジェクト型と呼ばれるスポット案件を中心に、マーケティング予算から予算をいただき、PRにとどまらず広告やデジタルを含む統合的な施策を提案・実施しています。
事業セグメント

吉田:具体的な事業セグメントは3つあります。PRコンサルティング事業をコア事業、デジタルマーケティング事業を準コア事業として注力し、将来のさらなるアップサイドを作るための事業としてPRプラットフォーム事業を展開しています。
2026年8月期の業績予想における売上構成比は、PRコンサルティング事業が約70パーセント、デジタルマーケティング事業とPRプラットフォーム事業がそれぞれ約15パーセントとなっています。
ここまでの成長振り返り

吉田:こちらは中期経営計画の中にも掲載したスライドです。今期終了時点では、過去6年間の成長を振り返ると、売上高で4.5倍、営業利益で6.1倍の成長が見込まれています。力強いオーガニック成長とM&Aの実績が掛け合わさり、力強く成長を続けています。
ここまでの成長振り返り

吉田:オーガニック成長とM&Aについて補足します。スライドに、2020年8月期から2026年8月期までの営業利益のブリッジを示しています。赤枠で囲んでいる部分がオーガニック成長を示しており、こちらだけで営業利益が約12億円成長しています。
また、スライド中央に記載のとおり、M&Aで参画していただいた事業による営業利益が約4億円あります。このように、オーガニック成長とM&Aを掛け合わせることで成長してきたことが、数字からもおわかりいただけるかと思います。
中期経営計画サマリー(2026年8月期〜2028年8月期)

吉田:公表している中期経営計画のサマリーです。2025年8月期実績の連結売上高63億円から、3ヶ年経った後の2028年8月期に連結売上高125億円、連結営業利益21億7,000万円、連結のれん償却前営業利益23億4,000万円を計画として掲げています。
今回のご説明にもありますが、IFRSへの移行を踏まえ、のれん償却前営業利益を示しています。なお、この数字には追加のM&Aは含まれておらず、基本的にはオーガニック成長のみで構成されています。
中長期的に見て、国内のマーケティング市場は拡大を続けています。その中で、当社はマーケティング業界の第4極として存在感を発揮できるよう、さまざまな施策を立案しています。また、市場環境としては非常に追い風であると認識しています。
AIに対する当社の対応、認識及び中期経営計画への影響

吉田:先ほどご案内した中期経営計画を立案・公表したのが昨年2025年10月ですが、それ以降、AIの進化が驚くべきスピードで進展しています。当然ながら当社の事業にも大きな影響を及ぼすため、1枚補足資料を追加しています。
当社の認識として、AIの進化により、PRコンサルティング事業を中心に生産性を大幅に改善できる見込みです。スライド左側に当社の認識を3点挙げています。
当社の付加価値の源泉はAIに代替されにくい部分であり、これは非常にありがたい状況です。当社の提供サービスの付加価値の源泉は、AIによる生成が難しい領域から生まれていると考えています。
具体的には、PRパーソンのエキスパートとしての経験値に基づく判断力や、お客さまならびにメディア関係者との人間同士の深い関係性が事業の基盤となっています。また、PRイベントなどでは、現場での実行力といったフィジカルな要素が残ります。
そのため、我々が提供している役務をすべてAIで代替するのは難しく、これは非常に良かったポイントだと思っています。結果として仕事がなくなることはなく、社員はお客さまに対してより本質的なサービスの提供に注力でき、環境としては非常に追い風だと感じています。
実際の当社の対応状況としては、業務基盤レベルでのAI活用が可能になってきていることが挙げられます。AI活用というと、議事録作成など個別業務の効率化といったレベル感の話もあるかと思いますが、当社では業務基盤としてのAI活用が現実的に実現可能な状況になりつつあると考えています。
この状況が今実現できているわけではありませんが、社内にこの業務基盤を開発する専任チームを設置しており、現在プロジェクトを推進中です。
PCを使う業務は、先ほどお伝えしたフィジカルな作業の対極に位置しますが、やはり多く含まれています。AI業務基盤の構築ができれば、かなりの工数を圧縮できると考えています。
結果として、スライド右側の「中期経営計画への財務影響」に記載しているとおり、引き続きトップラインは市場拡大の追い風を受けて成長が続くと考えています。また、コスト面では生産性の改善により、営業利益率が着実に向上していくのではないかと思っています。
中期経営計画の指標に関しては、AIの影響を考慮し試算した数値です。ただし、昨年10月に公表したものですので、アップデートが必要となる場合は適宜お知らせしていく予定です。
そして、AIに対応するために、組織の変革も求められています。顧客やメディアへの深い理解に加え、イベントの企画・運営等に特化した人材をより速いスピードで育成するための教育システムの構築が重要です。それに伴い、新しい働き方や組織構成、人事制度を組織運営のインフラとしてアップデートする必要があると考えています。
総じてポジティブだと捉えているものの、まだ組織として取り組むべき課題は多く残っているため、チーム一丸となってこれを実現していきたいと考えています。
2026年8月期第3四半期決算 キーメッセージ

吉田:第3四半期の決算についてご説明します。スライドにキーメッセージを3つ挙げていますが、第3四半期の3ヶ月間に限定すると、ご期待いただいたほどの伸びではなかったのではないかと思います。
これまでもお伝えしているとおり、当社のビジネスは四半期単位ではボラティリティが出やすい特徴があります。そのため、より中長期的な観点、具体的には1年から2年の単位での成長を確実に実現することに引き続き注力しています。
1つ目のポイントです。前年同期比で連結粗利が38.8パーセント増、営業利益が55.9パーセント増と、高い成長率を実現しています。通期計画進捗率は、営業利益が89.6パーセント、経常利益が95.7パーセントとなり、上期の非常に好調な結果を受けて、通期目標の達成に向けて障害はないと考えています。
2つ目のポイントです。過去最大規模の新卒社員が入社しました。グループ全体で48名が入社していますが、PRパーソン1人あたり粗利は前期比で改善が見込まれています。通常、新卒社員が多く入社するとこの指標は一時的に低下する傾向にありますが、生産性の改善と相まって、新たな人員が加わっても指標が改善する見込みです。
また、来期以降に向けて、新卒社員や新たに加わった中途社員が活躍できるよう、AI関連への積極的な投資を引き続き実行しています。
3つ目のポイントです。トレプロ社のM&Aにより、PRプラットフォーム事業の粗利は前年同期比361.2パーセントと急成長しています。競争環境としては、下期に新しいプレイヤーが次々と参入しており、来期以降のさらなる成長を目指し、現在事業の立て直しを進めています。
このビジネスはもともと成長率が非常に高いため、中長期でしっかり成長できる基盤を整えながら、焦らずに実行することに注力すれば、財務面でも非常に良い結果が得られると考えています。
連結業績:2026年8月期第3四半期の前年同期比及び業績予想に対する進捗率

吉田:連結のP/Lで示した内容です。冒頭でお伝えしたとおり、売上高、粗利、営業利益は非常に順調に進捗しており、この第3四半期までで営業利益が10億円を超えるところまで進んでいます。
経常利益に関しては、営業外費用にM&A案件のアドバイザリー費用などを見込みとして業績予想に織り込んでいましたが、その部分が未消化となっています。そのため、ご覧のように進捗率は95.7パーセントと、ほぼ達成が見えている状況です。
連結業績:2026年8月期第3四半期のセグメント別の前年同期比及び業績予想に対する進捗率

吉田:事業セグメント別に展開すると、まずPRコンサルティング事業はオーガニックにしっかりと進捗しています。それに加えて、M&Aの影響もあり、デジタルマーケティング事業とPRプラットフォーム事業の粗利、のれん償却前営業利益が前年同期比で大きく規模を拡大しています。
連結業績:売上・粗利・営業利益の四半期会計期間別推移

吉田:3ヶ月単位の連結会計期間ベースでの業績進捗です。第3四半期単体で見ると営業利益ベースでは前四半期比で若干減少しており、その点をご心配される方もいらっしゃるかと思います。
しかし、第3四半期は新卒の加入などもあるためコストも増加する四半期であり、当社としては順調なペースであると捉えています。
PRコンサルティング事業:売上・粗利・のれん償却前営業利益の会計期間別推移

吉田:セグメント別の状況について詳しくご説明します。まず、PRコンサルティング事業です。中核子会社であるマテリアルが前年同期比で約18パーセント成長していることもあり、セグメント全体として着実に成長しています。また、営業利益率も改善傾向にあります。
粗利は前年同期比13.7パーセント増で、累計31億800万円まで伸びています。中核子会社であるマテリアルは、前年同期比で約18パーセントの成長を遂げています。
PRコンサルティング事業(株式会社マテリアル):成長ドライバーの実績

吉田:KPIのPRパーソン数とPRパーソン1人あたり粗利についてです。PRパーソン数は、2026年卒の新卒入社で増加しています。一方で、1人あたり粗利は140万円弱で高水準を維持しており、前年同期比でも増加しています。
デジタルマーケティング事業:売上・粗利・のれん償却前営業利益の会計期間別推移

吉田:デジタルマーケティング事業についてご説明します。期初からBridge社がM&Aで参画していることから、トップラインおよび利益のいずれも前年同期比で規模が拡大しています。
粗利は前年同期比87.5パーセント増、のれん償却前営業利益は前年同期比70.7パーセント増と成長しています。これはBridge社の参画の影響もありますが、オーガニックで伸びている部分として、マテリアルデジタルが粗利・営業利益ともに大きく伸びていることがかなり寄与しています。
デジタルマーケティング事業:成長ドライバーの実績

吉田:KPIで見ると、顧客数と顧客単価はいずれも伸びています。特に、顧客単価の高い広告運用のお客さまがBridge社の参画の影響で増加しました。その結果、顧客数も増加していますが、特に顧客単価の上昇が顕著で、倍増している状況です。
この傾向は、今後の成長を継続する中で広告運用のお客さまが増えることに変わりはないため、顧客単価の伸びが成長の中心になると見込んでいます。
PRプラットフォーム事業:売上・粗利・のれん償却前営業利益の会計期間別推移

吉田:最後に、PRプラットフォーム事業です。トレプロ社の参画の影響により、前年同期比でトップラインおよび利益の規模が大きく拡大しました。粗利は前年同期比361.2パーセント増です。
冒頭でセグメントの構成比をお示ししたとおり、PRプラットフォーム事業は全体の約15パーセントを占めるところまで成長しています。引き続きトレプロ社の成長を促進し、PRプラットフォーム事業を次の柱として育てていきたいと考えています。
国際会計基準(IFRS)の適用

吉田:トピックスと事例をご紹介します。まず、会計上のトピックスとして、IFRSの適用についてご説明します。
併せてIRリリースも出していますが、IFRSの適用を決議し、2026年8月期の有価証券報告書から開示を予定しています。この10月に発表する期末の決算短信は、引き続き日本基準での開示となりますが、期末の有価証券報告書からはIFRS基準での開示に移行します。
主な財務影響としては2点あります。まず、のれんが非償却となることで、営業利益および当期純利益が増加します。のれん償却費発生額は今期の通期見込みで1億7,500万円ですが、非償却となることで、単純計算で当期純利益が1億7,500万円増加する見込みです。
加えて、リース契約に伴う使用権資産およびリース負債はオンバランス化されるため、B/Sは若干大きくなります。
10月の本決算開示時には、業績予想についても日本基準とIFRS基準を併記するかたちでお知らせすることを現在検討しています。具体的にIFRS基準での数字が来期以降どのようになるかについては、本決算開示の際にご説明できると考えています。
新サービス

吉田:新サービスについてです。Bridge社では、LLMO(大規模言語モデル最適化)に関する新たなコンサルティングサービスの提供を開始しています。
Bridge社はSEOサービスを提供している会社ですが、生成AIに選ばれることが非常に重要な時代となっているため、生成AIに選ばれるブランドを構築するために必要な支援をLLMOコンサルティングサービスを通じて提供していきたいと考えています。
Award関連

吉田:アワード関連です。マテリアルの取締役である山村が、アジアを牽引する50歳以上のリーダーを選ぶCampaign Asia-Pacific「50 Over Fifty 2026」に選出されるといううれしいニュースです。
マテリアルグループおよびマテリアルは非常に若い会社で、メンバーやスタッフも非常に若いメンバーが多い中、長年の経営経験と知見を持って参画してくれた山村が受賞し、あらためて我々のグループ経営において非常に重要な影響を与えてくれていることを実感できました。
KFC:THE NEXT CHAPTER‐新生 KFC 事業戦略&新アンバサダー発表会‐

吉田:ここから案件のご紹介が2件続きます。1つ目は、日本ケンタッキー・フライド・チキン社との新アンバサダー発表会です。
「 La Sana 」新シリーズ『 for Style 』ローンチ PR (株式会社ヤマサキ)

吉田:2つ目は、ヤマサキ社に提供している「La Sana」新シリーズ「for Style」のローンチPRです。どちらもクリエイティブの制作やショート動画の制作など、従来のPR会社では提供が難しいサービスを提供している事例です。事例動画も公開していますので、ぜひ一度ご覧いただけると幸いです。
株主還元

吉田:最後に、株主還元についてご説明します。今期2026年8月期の配当予想は1株当たり26円10銭で、業績予想から変更はありません。
また、株主還元方針も変更はなく、連結配当性向33パーセントを目安とし、累進配当の考え方を採用しています。今期はしっかりと利益成長ができているため、配当性向は41.1パーセントを見込んでいます。来期も利益成長に伴い、累進配当の考え方に基づき配当を増やしていくことを基本方針としています。
また、自己株式の取得についても、株価の状況などを鑑みて適宜実施しています。今期も実施していることから、総還元性向は2026年8月期に80パーセントを超える水準となっています。幸いにも、我々はキャッシュフローが非常に良好なビジネスを展開しているため、その強みを活かして株主還元に加え、M&Aを含む成長戦略に積極的に投資することができています。
私からの決算説明は以上です。
質疑応答:提供価値向上に伴うプライシングの見直しについて
荒井沙織氏(以下、荒井):「顧客への提供価値向上に見合った、意識的な強気の値づけやプライシングパワーの発揮について、経営陣の現時点でのお考えを教えてください」というご質問です。
吉田:プライシングに関しては、これまでと同様に、今後も引き続き検討していく流れになると思っています。ご質問については、アワードの受賞などがあった中で「そのようなことを考えないのか」という趣旨ではないかと事前に拝読していました。
そのような意味では、お客さまへの提供価値が確実に増していくのであれば、それに応じたプライシングの見直しは必要であると思っており、実際にこれまでもそのような取り組みを実行してきました。
KPIである1人あたり粗利は、中長期的に見ておおむね改善傾向にあるというのがこれまでの実績です。かなりのペースで組織規模を拡大する中で、微増傾向を維持できていることから、プライシングの考え方や取り組みが一定の成果を上げていると考えています。
そのような意味でも、今後も引き続き検討し、取り組んでいくべき重要な論点であると思っています。
質疑応答:案件単価の向上に対する取り組みについて
荒井:「既存案件の値上げ交渉や新規案件の高単価化など、具体的な取り組み状況をご回答いただけるとうれしいです」というご質問です。
吉田:案件単価については、先ほどご質問があったプライシングの話というよりも、当社が提供できる役務の範囲が拡大していることを背景に、実際に案件単価が大きくなっています。
先ほど事例の中でもご紹介したように、単純にメディアリレーションズやメディアプロモートなどを実行する狭義のPR施策にとどまらず、より広義の意味でパブリックリレーションズを実現するために必要なさまざまな施策を併せてご提供できるようになっています。このような背景から、案件粗利単価は継続的に増大傾向にあります。
一方で、P/Lに対して直接影響を及ぼすドライバーは1人あたり粗利です。案件が大きくなる分、人員が時間をかける必要があるため、経営上は案件単価よりも1人あたり粗利を重視しています。
案件単価が伸びる中で、AIの活用を通じて工数の増大を抑えることができれば、1人あたり粗利のさらなる向上が見込めると考えています。この点については、引き続き良い傾向を維持していると考えています。
質疑応答:外注費の内容と外注のメリットについて
荒井:「外注費の具体的内容と今後の外注比率の水準の方向性をどのように捉えていますか? 外注することのメリット、デメリットを教えてください」というご質問です。
吉田:外注費の内容は、例えばマテリアルで言うと、PRイベントを実行する際の会場費や、そこでご登壇いただく芸能人の方のキャスティング費用、さらに会場設営のための造作コストなどが主になります。
ご質問は、「AI化の流れの中で内製化によるメリットがどれほどあるのか」という趣旨ではないかと思いますが、この点については正直なところ、それほど大きなメリットはないと考えています。
例えばマテリアルの場合、マテリアルとしてお客さまへの付加価値を直接的に出せる業務については、すでにマテリアルの内部で行っています。したがって、PRパーソンとして本来注力すべき業務は、今の範囲が適切であると考えています。
引き続き外注する領域としては、お伝えしたとおりフィジカルな要素が多分に含まれる領域が主になるため、AI化によって大きく改善されるかといえば、それほど変わらないのではないかと思っています。
一方で、クリエイティブ制作など一部外注している部分については、AIの活用で内製化できる部分も出てくると思います。しかし、それによるインパクトはそこまで大きなものではないと認識しています。
質疑応答:自己株式の消却に関する考え方について
荒井:「株主還元の充実などを目的に取得した自己株式について、消却することが目的にかなっていると考えていますが、そのような考えはありますか?」というご質問です。
吉田:取得した自己株式の方針として、消却も選択肢の1つとして残しています。今後、消却を検討する可能性もあると思います。
一方で、例えば当社は株式報酬制度およびストックオプション制度を採用しているため、ストックオプションの行使による希薄化を防ぐために自己株式を活用したり、今後のM&Aの対価の一部として活用する可能性もあります。これらを考慮し、現状では消却せずに保持しています。
ただし、私個人の見解も含めると、消却するかどうかは会計上もファイナンス上も実質的には何も変わらず、単純にシグナリングの意味しかないと考えています。会計上は仕訳も発生しませんし、ファイナンス面でも自己株式を活用しても新株を活用しても大きな影響はありません。
こうした観点からすると、消却の有無は本質的な議論ではないと思います。一方で、シグナリングの観点から、消却を行うほうが株主のみなさまにとって良い印象を与える場合もありますので、その可能性を完全に排除しているわけではありません。
質疑応答:従業員への株式報酬および従業員持株会の設置について
荒井:「従業員へのインセンティブ支給について、株式での支給の実施予定はありますか? また、従業員持株会の設置予定はありますか?」というご質問です。
吉田:従業員へのインセンティブとして株式報酬を利用するかについては、当社では従業員向けに信託型ストックオプションを発行しています。
これは、上場前から運用しているプライム市場向けのストックオプション制度で、文字どおりプライム市場への市場変更が可能な業績規模や時価総額へ成長した場合には、その分のリターンが従業員に還元される仕組みです。
したがって、株式報酬を使う予定については、類似した制度がすでに存在しており、それをインセンティブとして活用しています。
また、従業員持株会についてはすでに設置済みです。若い社員が多い会社であるため、他社と比較して加入率が非常に高いわけではありませんが、一般的な水準に落ち着いています。従業員持株会を通じて、従業員と株主のみなさまのセイムボートの推進を引き続き図りたいと考えています。
質疑応答:PRコンサルティング事業の成長見通しとその要因について
荒井:「PRコンサルティング事業のオーガニック成長率は、来期も2桁成長を維持できると考えていますか? 成長を支える要因を教えてください」というご質問です。

吉田:答えとしてはイエスです。2桁パーセントの成長は十分に継続できると考えています。要因として、市場と自社の強みに分けてご説明すると、まず市場環境は非常に良いと感じています。
中期経営計画の資料でもご説明していますが、市場環境として、これまでのマーケティングの常識に変化が生じていると考えています。
我々は6年ほど前から「1億総メディアの時代」とお伝えしていますが、情報を一方的に発信するだけでなく、多くの人々からのリアクションを得るというソーシャルメディア内での反響が、結果的にマーケティング上非常に重要な位置を占める時代になってきていると感じています。
このような時代に、PRを中心にさまざまな施策をフラットに提案できることは、非常にありがたいことに良いポジションにあると考えています。仕事に関しては、どんどんご相談いただける環境が整っていると感じています。
その中で、我々の強みの1つとして、採用力が非常に高い点が挙げられます。世の中には多くのPR会社がありますが、市場環境が良い中で、すべてのPR会社が必ずしも大きく成長しているわけではありません。この成長の差を最も明確に分ける要因は、採用力であると考えています。
需要が旺盛な中で、その需要に応えられる組織の拡大を実現していることが、我々の強みです。2027年・2028年卒業予定の新卒採用では、1万人以上のエントリーをいただいています。
このように、新たにPRパーソンになりたいという高い志を持つ社員が増加していることが、市場環境の良さと相まって、我々の成長を継続的に推進する根拠となり、自信につながっています。
質疑応答:AI活用による営業利益率への影響について
荒井:「AI活用による生産性向上について、来期以降は営業利益率にどの程度インパクトが出るイメージでしょうか? 数値感があれば教えてください」というご質問です。
数値化するのは難しい部分かと思いますが、どのように考えていますか?
吉田:生産性向上によるインパクトがP/Lに反映することは確実だと考えています。ただし、来期の営業利益率については、しっかり精査した上で業績予想で開示していきたいと考えていますが、即座に大きな影響が出るものではないと見ています。理由は2つあります。
1つ目は、現在この取り組みを進めている中で、全社的に理想的な状態に到達するまでには多くの試行錯誤が必要です。AIのトークン費用などが発生するなど、この変革期には一定のコストがかかる要素があると認識しています。
2つ目は、中長期的な観点でいうと、先ほど採用力についてお話ししましたが、より質の高い採用に重点を置く必要があると考えています。これまでのような大量採用は、AIの活用によって事業的に必要性が薄れてくる部分もあります。その結果、より厳選した採用を行うことで、中長期的に効果が見えてくると考えています。
具体的に営業利益率にインパクトが出て、その影響を明確にお示しできるのは2028年8月期になる見込みです。2027年10月に発表する来期の本決算のタイミングで、「ようやく目に見えるかたちで数パーセント単位で営業利益率が変わるね」とお示しできるのではないかと考えています。
質疑応答:M&Aの対象領域について

荒井:「今後3年間で60億円から100億円のM&Aを計画していますが、現在特に注目している領域があれば教えてください」というご質問です。
吉田:領域という観点では2軸あります。サービス領域、つまり事業領域と、エリアの話があると思います。
まず事業領域としては、当社はPR発想をコアとしており、その中で有効な施策としてユニークなソリューションを持つ会社はすべて対象になると考えています。これまでどおり、PRをコアとしてマーケティング施策全般を支援する中で、周辺領域となるところに関しては引き続き注視していきたいと考えています。
昨年のM&Aで公表したトレプロ社は、「TikTok」が非常に伸びている中、それをうまく活用して採用領域での予算獲得に成功している会社です。当社としては、成長しているプラットフォームや施策を活用してマーケティングの力を発揮できる会社に注力していきたいと考えています。

吉田:エリアの観点では、国内マーケティング市場は拡大を続けていますので、引き続き注力していきたいと思っています。また、中期経営計画で掲げているとおり、東南アジアへの進出もしっかり進めていきたい領域と考えています。したがって、マーケティングコミュニケーション領域では、東南アジアにおけるM&Aにも積極的に取り組んでいきます。
質疑応答:「TikTok」を活用したPRプラットフォーム事業の競争優位性について

荒井:「『TikTok』を活用したPRプラットフォーム事業を成長戦略に掲げていますが、競争優位性をどのように築いていくお考えでしょうか?」というご質問です。
いろいろな事業者がおり、さまざまな手法があると思いますが、その中でどのように勝っていくかを教えてください。
吉田:当社には2つの事業があります。トレプロ社とマテリアルリンクスが主に「TikTok」および「TikTok Shop」を活用した事業を展開しています。おっしゃるとおり、多くの事業者がこの領域に参入し、まさに群雄割拠の状況です。
そのような中で、「TikTok」というプラットフォームを活用し、当社のような支援会社がうまくマネタイズし、事業として成長させている例は、まだ少ないのではないかと考えています。
トレプロ社は目に見えるかたちで大きな利益を上げており、「TikTok Shop」の事業を展開するマテリアルリンクスもしっかり黒字を計上しています。このように、現時点で非常に順調に進捗していると考えています。
この背景としては、明確にはお伝えできない部分もありますが、大きく2つの要因が挙げられます。1つは、比較的早い段階から取り組みを進めていたことで、直近で参入してきた事業者と比べ、経験値を多く蓄積できていることです。AIの活用を含め、成功事例をすでに数多く有していることは明らかな強みと言えます。
もう1つは、マテリアルがPR事業の中でキャスティングなどの機能をもともと持っていますので、例えば「TikTok Shop」やマテリアルリンクスが「TikTok」を活用したアフィリエイトサービスを展開する際には、このキャスティング機能との融合が強みとなると考えています。
質疑応答:中期経営計画達成の鍵について
荒井:「中期経営計画で売上・営業利益ともに高い成長を計画していますが、現時点で達成の鍵になると考えている施策を1つ挙げるとすると何でしょうか?」というご質問です。

吉田:中期経営計画の達成の鍵について、あえて1つに絞るとすれば、AI活用による生産性の改善が挙げられるのではないかと思います。生産性の向上については、中期経営計画で2028年8月期にPRパーソン1人あたり粗利を151万円程度と計画しています。
この目標を達成するためにAIは不可欠であり、当初から活用を前提として考えていました。しかし、それを上回るかたちでAI技術の進化が著しいため、業務基盤レベルでAIをしっかり活用できる状態になれば、PRパーソン1人あたり粗利は151万円を大幅に超える可能性があると考えています。
AI活用は達成の鍵であり、中期経営計画を超える成長を遂げるための重要な要素の1つであると認識しています。

吉田:もう1つ挙げるとすると、東南アジアへの進出も非常に重要なポジションを占めています。これは、中期経営計画の計数計画の中には、まったく織り込んでいません。
もしこれがしっかり実現できれば、現在の中期経営計画の達成だけでなく、計画の見直しが必要になるほど計画を大きく上回る可能性があります。したがって、確実に取り組んでいきたいと考えています。
荒井:国が変わると戦略も大きく変わるのではないかと思いますが、楽しみにしています。
質疑応答:供給制約の内容と解消見込みについて
荒井:「PRプラットフォーム事業は供給制約があるとのことですが、具体的には何がボトルネックになっていますか? また、いつごろ解消できる見込みですか?」というご質問です。
吉田:まず、何が供給制約として存在しているかについてお話しします。トレプロ社のサービスをあらためてご説明すると、主に地方の中小・中堅企業のみなさまが採用活動に苦しんでいるという状況があります。
人手が不足している業界、例えば建設業、介護・看護業、飲食業、美容室業など、特にフィジカルな仕事を中心とする業種においては、人手が資本として重要視されています。一方で、地方では人口流出により若者の数が減少しているため、採用活動として打つ手が限られています。ここに大きな市場の広がりがあると考えています。
これに対し、縦型のショート動画を撮影して、若者がふだんから接触している「TikTok」というプラットフォームを通じて企業の中身や雰囲気を知っていただくことで、その企業を認知し、転職の可能性を生み出します。いわゆる一般的な転職サービスや採用広告とは異なる手段で採用活動を支援しているということです。
縦型のショート動画においては、どのような内容を盛り込むべきかを検討し、地方の企業が多いことから現地に訪問して撮影しています。それを編集して投稿し、納品していますが、人が撮影に行くことが必要となるため、お客さまをしっかり担当する担当者が供給制約のポイントとなります。
これに対し、トレプロ社として採用活動を行うと同時に、マテリアルグループとして多くの新卒が入社することから、社内での人材の融通も進めています。
解消の見込みについては、「3ヶ月後に解消します」といったレベル感ではありませんが、短期的には、特に来期に向けて供給制約がなくなる程度にしっかりと人材を供給できるようにしたいと考えています。
荒井:今少し気になったのですが、縦型動画を最初は御社が企画して撮影しますが、クライアントサイドから「このような動画を撮って素材を納入してください」といったシステムもあるのでしょうか?
吉田:内製化のような観点で支援するサービスもありますし、実際にそのようなかたちで対応しているクライアントもいます。
一方で、撮影において魅力を引き出すためには、台本を臨機応変に変更したり、画角を調整したり、投稿動画の反響を見ながらチューニングすることが必要です。そのため、知見を持った人材が対応したほうが良い部分もありますので、基本的には毎月撮影にうかがうサービスとなっています。
荒井:プロが確実に担当するということで、そこもAIには代替できない付加価値の部分ですね。
吉田:おっしゃるとおりです。
質疑応答:PMIの進捗状況について
荒井:「Bridge社、トレプロ社のPMIは現在どの段階でしょうか? クロスセルなど、具体的なシナジーが数字として見え始める時期を教えてください」というご質問です。
吉田:PMIの段階としては、事業基盤はかなりしっかりと統合が進んでおり、クロスセルに関しても少しずつ発生し始めています。トレプロ社やBridge社に限らず、これまで当社グループで実行してきたM&Aについては、クロスセルにしっかり取り組んでいます。
ただし、需要が旺盛である中で、どれだけ供給をしっかり整えられるかが、特にマテリアルにおける経営課題でした。数字として「この部分がクロスセルによる積み増しです」と示すのが難しいところが歯痒いところですが、そのような状況です。
一方で、トレプロ社、Bridge社、その他の事業においても、クロスセルを自然に日常的に行う仕組みがだいぶ確立されてきており、今後も活発に取り組みを進めていきたいと考えています。
質疑応答:LLMOコンサルティングサービスの強みと参入障壁について

荒井:「新サービスであるLLMOコンサルティングサービスの他社にはない強み、参入障壁を知りたいです。中期経営計画の数値に織り込み済みなのか、それともアップサイド要因となるのかも教えてください」というご質問です。
吉田:まず、LLMOコンサルティングサービスが中期経営計画に織り込まれているかという点ですが、織り込まれていません。そのため、アップサイドの要因になると考えています。
このサービスの強みについては、市場がまだ存在しないほど業界的にも新しい領域であり、その中で当社の特徴を明確に実績として作れていないのが正直なところです。一方、我々の推しポイントとしては、マテリアルはPR事業を展開しており、PRとLLMOの掛け合わせの相性が非常に良いことがわかってきています。
PRを通じてメディアなどの第三者の推奨を得ることは、「ChatGPT」や「Gemini」などが参照する根拠として、より信頼性が高まりやすいことが確認されてきています。この点は、掛け合わせとして注力していきたいポイントです。
質疑応答:IFRS基準での開示について
荒井:「来年の第1四半期からはIFRS基準だけの決算数値の発表になるのでしょうか?」というご質問です。
吉田:来年の第1四半期以降は、IFRSのみでの開示となります。
質疑応答:絵馬に書いた「世界」「グローバル」という言葉への思いについて
荒井:「御社のホームページで、お正月の神社参拝の記事を拝見しました。この中で『世界』と『グローバル』という言葉を目にしましたが、このあたりは東南アジア進出のお話とつながってくると思います。どのような思いで書いたのでしょうか?」というご質問です。
吉田:毎年、社員や経営陣で神社に参拝しています。その際に絵馬に一言書いたのですが、代表取締役CEOの青﨑が「世界」、私が「グローバル」と書きました。その意味合いとしては、大きく2つあります。
青﨑が書いた「世界」は、「日本一のPRエージェンシーグループを目指す」という目標と、「それを超えて世界に出ていくぞ」という野望や野心を表現したのだと思います。
私が書いた「グローバル」については、マテリアルはもともと国内企業を相手に国内コミュニケーションを担当するのが主な仕事でした。ただし、直近ではキャンドルウィック社という全員がバイリンガルのエージェンシーが参画し、マテリアルを含め、対象が国内企業であってもグローバルな知見を求められる仕事が増えてきていると感じています。
そのような中で、青﨑も私も東南アジア進出のために現地へ度々赴き、さまざまなエージェンシーの方々と幅広く意見交換を行う機会が増えています。
そのため、「今年こそはグローバル化をより大きく進めるぞ」という意味を込めて「グローバル」と書きました。このような意味では、今年だけではなく、その先もグローバル化をさらに進め、世界を目指していくことが当社の大きなテーマの1つになると考えています。
吉田氏からのご挨拶
吉田:お忙しい中、当社の第3四半期決算説明会をご視聴いただき、誠にありがとうございました。第3四半期ということで、説明の内容が非常に濃いものになったかというと、そうではなかったかと思います。
期末の本決算では、先ほどお話ししたIFRSの適用や来期のガイダンスの開示など、お話しする内容が増えるかと思います。また、東南アジアへの進出も含めて、みなさまにしっかりご説明し、コミュニケーションを深められるように、事業を引き続き推進していきたいと思います。期末の本決算の説明会もご視聴いただけると幸いです。どうぞよろしくお願いします。
