■要約
ドーン<2303>は、地理情報システム(GIS)を活用したシステムの開発・販売を行う企業である。中央省庁や地方自治体、電力会社などでの採用実績が多く、信頼性が要求されるシステムに定評がある。GISエンジンソフトのライセンス販売や受託開発を長年にわたり事業の柱としてきたが、近年は防災や防犯関連のクラウドサービスで業績を伸ばしている。主力の「NET119緊急通報システム」は全国の消防団体で採用され、人口カバー率で7割を超え、安定期に入っている。もう1つの主力商品である、消防向けの映像通報システム「Live119」が拡大期に入り人口カバー率で5割を超えた。また、映像通報技術を応用した映像通話システム「Live-X」、災害情報共有サービス「DMaCS(災害情報共有サービス)」、警察向けの「防犯アプリ」も好調に推移している。2024年7月には、エッジAI技術を所有する(株)tiwakiと資本業務提携を行った。
1. 2026年5月期の業績概要
2026年5月期の業績は、売上高が1,734百万円(前期比5.3%増)、営業利益が655百万円(同14.1%増)、経常利益が672百万円(同15.0%増)、当期純利益が471百万円(同12.6%増)と、11期連続の増収増益となった。売上高に関しては、ストック型収益であるクラウド利用料の順調な増加に加え、アプリ案件等も含むクラウド初期構築が伸長し、ライセンス販売における消防防災を中心とした新規・更新受注が増収要因となった。営業利益は、収益性の高いクラウド利用料が伸びたことを主因に売上総利益が同11.6%増加したのに対し、販管費は同8.7%増と人件費等が増加したものの相対的に伸びを抑制した。結果として、営業利益率は37.8%と高い水準を維持した。
2. 2027年5月期の業績見通し
2027年5月期の業績は、売上高が1,800百万円(前期比3.8%増)、営業利益が670百万円(同2.3%増)、経常利益が687百万円(同2.2%増)、当期純利益が485百万円(同3.0%増)と、12期連続の増収増益を見込んでいる。2027年5月期は第2次中期経営計画の2年目であり、最重点施策である「Gov-tech市場の深耕」において既存事業の安定的な拡大を図りつつ、「AIを活用したクラウドサービスの展開」や「M&A・事業提携」にも取り組む。「緊急通報システムNET119」は維持しつつ、主力の「映像通報システムLive119」をさらに拡大させる計画だ。営業利益に関しては、前期比2.3%増(前期実績は14.1%増)とやや低めの伸びを予想する。費用面においては、人的資本の強化に伴う採用活動費・人件費等の増加を織り込んでいる。同社は、自治体の防災・防犯DX投資が堅調ななか、クラウド利用料を中心としたストック型の事業モデルを構築していることから、業績予想の下振れリスクは低いと弊社では見ている。上振れの要因としては、注目度が上がっている国際的な特殊詐欺に対応した防犯アプリの拡販、同社製防犯アプリ導入済みの警察本部へのアドオン(追加機能)販売による売上拡大も期待できる。中長期的な観点では、エッジAI技術・特許技術と既存クラウド技術・サービスの融合によるサービスの進化が期待できる。また、強固な財務基盤を維持しているため、さらなるM&Aによる技術領域の拡大(特にセキュリティ分野)の可能性がある。
3. 戦略・トピックス
(株)時事通信社によると、2026年(1〜5月)において、特殊詐欺の手口の中で最も被害が多い「ニセ警察詐欺」の認知件数及び被害額が、東京都内で約4割減少(前年比)したことがわかった。ほぼ同時期に、警視庁が被害防止のため利用を呼び掛ける防犯アプリ「Digi Police(デジポリス)」※のダウンロード数が倍増しており、防犯アプリの被害防止策の効果が出始めているという。同社がクラウドベースで開発・運用を受託する警視庁向け「Digi Police」でダウンロード数が倍増したのは、2025年12月に携帯電話への国際電話を遮断できる新機能を搭載したことが背景にある。特殊詐欺の多くは国際電話を利用しているためである。新機能による着信拒否件数は、把握できるAndroidだけで約42万件に上り、iPhoneも含めると相当数の電話を防いでいたと見られる。一方で、全国的には特殊詐欺の被害に歯止めがかかっておらず、同期間(2026年1〜5月)の被害額は前年同期比24.2%増に上る。同社の提供する国際電話ブロック機能の有効性が証明された形であり、今後全国的に同アプリ・同機能の普及が加速することが期待できる。
※ 警視庁の防犯アプリであり、犯罪発生情報の配信に加え、女性や子供の安全を守る「痴漢撃退機能」や「ココ通知機能」を搭載し、その他にも利用者に当事者意識を持たせるコンテンツ等が充実している。
4. 株主還元策
同社は、株主に対する利益還元を経営の重要課題として位置付けており、将来の事業展開と経営体質の強化のために必要な内部留保を確保しつつ、累進配当を基本方針としている。この方針の下、好調な業績を背景に連続増配を続けており、2026年5月期の配当金は前期比4.0円増の28.0円、配当性向17.9%となり、11期連続の増配となった。なお同社は、株式の流動性の向上と投資家層の拡大を図ることを目的に2026年6月1日付で普通株式1株につき2株の割合で株式分割を行い、2027年5月期の配当金は前期比2.0円増の16.0円、配当性向19.6%と、12期連続の増配を予定している。業績の拡大による安定的な増益とともに、将来的には配当性向の上昇余地もあるため、増配ペースが上がる可能性があると弊社では見ている。
■Key Points
・防災・防犯クラウドを強みに、“社会に必要不可欠な存在=エッセンシャルカンパニー”を目指す高収益・安定成長企業
・2026年5月期は主力の防災・防犯クラウドサービスが着実に拡大し増収増益
・2027年5月期は、クラウド利用料の拡大で売上高18億円・営業利益6.7億円の12年連続増収増益を予想
・防犯アプリ「Digi Police」の国際電話ブロック機能が特殊詐欺の被害抑止に貢献
・2026年5月期の配当金は11期連続の増配で年28.0円。株式分割を実施し流動性が向上
(執筆:フィスコ客員アナリスト 角田 秀夫)
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