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ラクトJPN Research Memo(7):長期ビジョンを上方修正。ROIC経営の浸透と成長事業の拡大に注力(1)

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■中長期の成長戦略と株主還元策

1. 「LACTO VISION 2032」の更新と「NEXT-LJ 2028」の位置付け
ラクト・ジャパン<3139>は2026年11月期中間期決算説明会において、2032年11月期を最終年度とする長期ビジョン「LACTO VISION 2032」を更新し、「LACTO VISION 2032 Ver.2.0」を策定した。2032年11月期における経常利益目標を60億円から75億円へ引き上げるなど、成長目標を上方修正している。

現在推進している中期経営計画「NEXT-LJ 2028」は、この「LACTO VISION 2032 Ver. 2.0」を実現するための基盤づくりの期間と位置付けている。同計画では、国内事業において成長分野への集中とサプライチェーンの強靭化を図ること、また海外事業においては市場深耕と拡大、またシンガポール新工場の本格稼働による事業の拡大を加速させるなど、高付加価値商品の拡販や資本効率を意識した経営を推進し、2032年に向けた持続的な利益成長の基盤構築を目指す。

商社機能を主軸とする同社は、従来「右から左へモノを流す存在」と見られがちであったが、中期経営計画「NEXT-LJ 2028」ではそうした認識からの脱却を明確に打ち出しており、基本方針とともに、同社が大切にする考え方として「3つのつなぐ」を掲げている。1つ目の「食と健康をつなぐ」では、高たんぱくなど健康志向の高まりを背景に、食を通じた健康価値の提供を強化する。2つ目の「価値をつなぐ」では、販売先と仕入先を結び、単なる流通ではなく、機能付与・開発支援・品質保証を通じて付加価値を創出する。3つ目の「志をつなぐ」は、創業以来培ってきた専門性や顧客と深く向き合う姿勢を次世代に継承するという人材・組織面でのメッセージである。同社は、本中期経営計画を通じて「価値創造型の食品企業」への進化を目指している。

2. 「NEXT-LJ 2028」の枠組み
(1) 数値目標と成長ストーリーの全体設計
「NEXT-LJ 2028」では、2028年11月期の連結数値目標として、売上高2,100億円、経常利益60億円、親会社株主に帰属する当期純利益43.5億円、ROE10〜12%、連結自己資本比率35〜40%、配当性向35%以上を掲げている。これらの目標は、単なる規模拡大ではなく、収益性と財務健全性を両立させながら企業価値を高めていくことを示している。アジアにおけるチーズ製造販売事業とライフサイエンス事業の2つを成長ドライバーとし、基幹である商社機能を土台に、製造機能や開発提案力といった高付加価値領域を掛け合わせることで利益成長を図る。アジアのチーズ製造販売事業については、需要の高さを背景に、新工場稼働により販売数量を拡大し、早期に減価償却負担を吸収して利益貢献を立ち上げる。また、ライフサイエンス事業では、乳由来プロテインを中心とした機能性原料に加え、植物由来たんぱくや顧客ニーズに即した素材の提案、製品企画段階からの開発支援を通じて、顧客との共創型ビジネスを深化させる。単価・利益率の高い領域での展開を進めることで、数量変動に左右されにくい安定的な利益成長を実現し、全社の収益構造高度化を図る。

このように「NEXT-LJ 2028」は量の拡大と質の成長を両輪とし、商社機能を核に据えながら、利益成長を伴う次の成長ステージへの移行を明確にしている。

(2) 利益計画の考え方と増益シナリオ
利益計画については、未来成長に向けた投資が先行する期間においても、売上総利益の増加によってコスト増を吸収し、増益基調を維持する考えだ。2025年11月期は一過性の受取補償金等を除いた調整後ベースを重視し、実力値を基準に2026年11月期以降の成長を計画している。2026年11月期は、売上総利益の増加が見込まれる一方で、新工場や基幹システム投資に伴う減価償却費、一般管理費など営業外要因の増加も織り込んでいる。先行投資を含めたこうした費用増を成長の「起点」と位置付け、2028年11月期に向けては売上総利益の積み上げを図り、増加するコストを上回る利益成長により、経常利益60億円の達成を目指す。

(3) 部門別戦略の方向性
中核事業である乳原料・チーズ部門では、付加価値商品やシェア対策品といった戦略カテゴリーへの集中により事業基盤を強化する。また、既存サプライヤーとの関係深化と新規開拓、調達方法の工夫によってサプライソースの強靭化と柔軟性向上を進めるとともに、未開拓業態への参入や顧客との共同開発を通じて新たな需要創造を図る。

食肉食材部門では、取扱商品の組み合わせによる提案力を高め、鶏肉加工品や香辛料・香辛料抽出物など新規商材との連動によって売上創出を図る。調達国の多様化による安定供給体制の構築に加え、海外拠点との連携を踏まえ、加工度を高めた半製品領域への展開など、付加価値創出型の取り組みを強化する。

ライフサイエンス事業部門は、名称変更が象徴するとおり、機能性食品原料にとどまらず、より広い領域への展開を志向する部門と位置付けている。プロテインの高機能化や新用途・新業界の開拓、新規たんぱく源の開発による市場拡大を進めるとともに、海外で需要が高い日本製プロテインやサプリメント、抹茶などの展開を加速する。広範なネットワークと独自の製造受託スキームを通じ、顧客課題解決力を高め、共創型の関係性強化を図る。

アジア事業の乳原料販売部門では、販売手法の多様化、高たんぱく・機能性原料への対応力強化、国ごとに異なる規制への対応力向上などを通じて提案領域を拡大する。アジア事業のチーズ製造販売部門では、生産体制の強化と技術開発を軸に、各国の食文化に適合した商品開発と新たなニーズ創出を進める。

(4) 共創モデルとシンガポール新工場の戦略的位置付け
同社の戦略を特徴付ける要素として、「共創」の仕組みが挙げられる。顧客の研究開発部門と直接連携し、求められる機能を満たす原料をサプライヤーと交渉・開発して供給するモデルは、高い専門性があるからこそ成立している。単なる流通ではなく、機能付与・開発・品質保証を通じて付加価値を創出する点が、同社の競争優位性となっている。また同社の成長戦略を確かなものとするための重要な投資が、シンガポール新工場である。床面積約6,500m2、投資額約35億円規模で、2026年11月期下期中の稼働開始を予定しており、プロセスチーズやシュレッドチーズを生産する。現行工場からの人員移管により、立ち上げは比較的スムーズに進める計画である。製造販売数量は既存工場と合わせて3年後に年1万トンを目指し、中期経営計画3年目には、減価償却負担を吸収し、シンガポール新工場単独で黒字転換を想定している。本格的な成長カーブは次期中期経営計画での加速も視野に入れており、日本スペックの品質・対応・安全性が評価される環境を追い風に、数量拡大と生産性向上を図る計画だ。

(執筆:フィスコ客員アナリスト 中西 哲)
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