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日本農薬、果樹・野菜向け殺虫剤に強み 海外農薬事業が好調で過去最高業績、おこめ券の株主優待新設と増配を予定

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2026年10月19日に行われた、日本農薬株式会社個人投資家向けIRセミナーの内容を書き起こしでお伝えします。

本日のご説明内容

岩田浩幸氏(以下、岩田):日本農薬株式会社代表取締役社長の岩田です。本日はご多忙の折、当社の個人投資家向け会社説明会にご参加いただき、誠にありがとうございます。

本日のご説明内容です。まず当社のご紹介を行い、農薬が社会的にどのような位置付けにあるのか、そしてみなさまが関心を寄せている農薬の安全性についてご説明します。その後、当社の強みを5つに分けてご紹介します。

さらに、過去最高を更新した直近の業績についてご説明し、最後に配当性向や株主還元といった増配に向けた方針についてお話しします。

日本農薬 3つのポイント

岩田:まず、当社の現状の3つのポイントです。当社は日本初の農薬専業メーカーとして1928年に創立しました。直近の2026年3月期における売上高は1,118億円、従業員数は世界全体の連結で1,527名です。

日本農薬と聞くと日本の企業というイメージが強いかもしれませんが、実は海外売上高比率が7割と非常に高い水準にあります。また、当社の製品は、実に100ヶ国以上の国と地域で登録され、販売されています。

企業理念・ビジョン

岩田:当社の基本理念とビジョンについて、基本理念の最初に「安全で安定的な食と豊かなくらしを守り、サステナブルな社会の実現に貢献します。」と掲げています。

昨今の気候変動や人口増加、さらに日本でも言われている食料の安全保障といった、人類が現在最優先で取り組むべき課題に対し、当社としてしっかり対応していきたいと考えています。

また、新たな価値の創造、具体的には創薬に基づく新たな農薬の開発に挑戦し、社会のニーズに応えたいと考えています。株主のみなさまをはじめ、すべてのステークホルダーの信頼と期待にお応えしたいと考えています。

農薬とは?

岩田:農薬の社会的意義、農薬とは何かについてご紹介します。農薬とは、文字どおり農作物を病気、害虫、雑草から守る「作物保護」という意味での「植物のお薬」と言えると思います。

人間には医薬、動物や家畜には動物薬という名称がありますが、植物に対する薬として農薬と呼ばれ、農業において作物を守るためのカテゴリに属します。

農薬には主に3つの大きなセグメントがあります。作物を害虫から守る殺虫剤、カビや細菌による病気を防ぐ殺菌剤、作物の栄養を奪う雑草の繁殖を抑える除草剤です。それに加え、最近では生物農薬や天然物由来の農薬も非常に増加しています。

また、日常的に馴染みのあるものとして、種なしブドウを作るための薬剤が挙げられます。このように、植物の成長を調整する植物成長調整剤も農薬に含まれています。

農薬の役割➀

岩田:世界における農薬の役割についてです。世界の農地はほとんど増加していない一方で、世界人口は着実に増加しており、現在ではすでに80億人を超えています。さらに、2050年には世界人口が97億人に達し、100億人に近づくと予測されています。

また、世界では約7億人の方が飢餓に直面しており、食料が依然として十分ではありません。そのため、限られた農地で単位面積当たりの収量を確保するためには、作物保護が非常に重要となります。

農薬は世界の食料安全保障を支える重要な役割を担うものであり、当社はこれを支えるために技術開発をしっかりと進め、世界に向けて発信していきたいと考えています。

農薬の役割②

岩田:もう1つ、農薬の役割についてご紹介します。作物の安定生産に関して、農薬を使用した場合と使用しない場合でどのように違うのかを研究したデータがあります。

公定試験のデータによると、例えばリンゴは農薬を使わない場合、97パーセントの減収となります。これは、ほとんどが病気や害虫によって作物が被害を受けてしまうためです。

同様に、キャベツでは63パーセント、水稲(コメ)では28パーセントの減収となり、病害虫や雑草による被害が非常に大きいと言えると思います。

農薬は、病害虫や雑草による被害を最小限に抑え、作物の質と量の両面をしっかり守る役割を果たしていると言えます。

農薬の役割③

岩田:もう1つ、収量や品質以外に農作業の負担軽減という面でも役割があります。農家や生産者の方々は、近年労働力不足が指摘されていますが、農薬の使用によって作業時間を短縮でき、大幅な省力化や生産性の向上につながると言えます。

例えば、除草剤について見ると、1949年には、10アール(1反)当たり50時間を超える労働時間を要して雑草を防除していました。しかし、2020年という6年前のデータでは、除草剤の使用によりわずか1時間ほどで防除が可能で、画期的な省力化が実現しています。

農薬の安全性➀

岩田:みなさまのご関心が高いと思われる農薬の安全性についてご紹介します。まず、農薬は開発段階から非常に厳しい基準に基づいて安全性が評価されています。

スライドの図に示されているとおり、膨大な数の化合物の中からスクリーニング(選抜)が行われ、安全性試験はもちろん、効果試験や環境への影響などをクリアしたものだけが農薬として承認されています。

16万個の化合物のうち1個という非常に低い確率で新たな農薬が選抜され、製品化に至っています。開発期間と投資を考えると、10年以上の歳月と数百億円規模の投資が必要です。また、このような厳格な選抜プロセスは、GLP(優良試験所基準)という国際基準に適合した施設で実施することが求められています。

あわせて、昨今では人畜毒性に加え、ミツバチや水生生物など環境への影響試験が非常に多岐にわたっています。それらの試験をクリアした化合物のみが市場に出ることから、非常に狭き門であると言えるでしょう。

これは、医薬品より厳格な環境影響評価が制度化されていると言えます。農薬は環境への影響についても十分に試験・審査が行われた上で、一般の場所で使用しても問題ないとされる製品だけが認可されています。

農薬の安全性②

岩田:そのような試験を行い、科学的な根拠に基づいてリスク評価とリスク管理が行われています。

スライドは日本国内の登録制度の模式図ですが、私ども製造者が申請する農薬のデータなどについて、農林水産省を窓口として食品安全委員会、環境省、厚生労働省などでしっかりとリスク管理や審査が行われ、ようやく農薬が登録される仕組みになっています。

この登録までの期間は、だいたい2年半から3年ほどかかります。それだけ長期間にわたって、しっかり確認されたものが登録される制度です。あわせて、登録後も15年ごとに最新の科学的データを基に安全性の再評価が行われ、新たな知見にも対応できるシステムになっています。

強み➀:研究開発力~異分野研究者が集まる強固な研究体制

岩田:当社の強みを5つの項目に分けてご紹介します。強みの1つ目は研究開発力です。

スライドに写真がありますが、当社は大阪府河内長野市に総合研究所を持っており、そこに化学、生物、安全性の各研究者およびスタッフが集結し、研究体制を整えています。

化学分野で新規化合物が発明され、その生物性能や防除効果等が生物研究スタッフによって確認されます。そして、人畜毒性、発がん性、催奇形性、環境毒性といった多岐にわたる安全性の分野を確認しながら、1つの農薬が世に出るシステムです。

1ヶ所に研究者が集結していることで、迅速な対応が可能であると考えています。

強み➀:研究開発力~オールラウンドスクリーニング体制

岩田:もう1つ、研究開発力の中で、当社はオールラウンドスクリーニング体制を採用しています。

先ほど16万分の1という話をしましたが、貴重な新規化合物の可能性をしっかり確認するために、1つの新規化合物について、殺虫剤だけでなく、殺菌剤や除草剤としての性能もオールラウンドに確認します。

さらに、農薬以外のライフサイエンス分野においても、医薬、動物薬、住宅関連の薬剤について、その化合物が活性を持っているかどうかを含めて、研究所で総合的に確認しています。

もともと農薬、特に殺菌剤として開発を進めていた化合物の例として、現在医薬品として販売されている水虫薬「ルリコナゾール」があります。この化合物は発見当初、太陽光に非常に弱く、すぐに分解してしまう性質があったため、圃場で使用する農薬としては不適と考えられました。

そこで、この化合物を医薬分野で展開できないか再検討し、例えば靴の中のように光が入らない環境で使用する水虫治療薬としての開発が進められました。現在、「ルリコナゾール」は国内で高いシェアを誇る水虫治療薬として販売されているほか、海外市場にも展開されています。

kenmo氏(以下、kenmo):1つの新規化合物を生み出すのに10年以上の歳月と数百億円規模の投資が必要とのことでしたが、具体的に御社では、年間どれくらいの研究開発費を投じていらっしゃるのでしょうか?

岩田:当社は現在、中期経営計画の3年目にあたり、この3年間で200億円の計画で研究開発投資を進めています。日本農薬単体の売上高の約10パーセントを研究開発に投資しており、非常に高いウエイトを持って注力しています。

kenmo:今後5年から10年で、どのぐらいの新規有効成分の上市を目指しているのでしょうか? また、差し支えない範囲で、将来期待できる新薬候補などがあれば、お聞かせいただけますでしょうか?

岩田:現在、開発中の剤として、この10年間で2剤から3剤程度が開発途上にあり、鋭意展開を進めています。研究スタッフには「3年に1剤を目標に」という大きな目標も掲げています。年々ハードルが高まっていますが、今後10年間で2剤から3剤をしっかり世に出せるよう努めていきたいと考えています。

開発パイプライン

岩田:その中で、現在非常に期待している剤は、スライドに記載のある「シベンゾキサスルフィル」という新規の殺虫剤です。この殺虫剤は、幅広い害虫種に対して非常に高い殺虫効果を示し、既存の薬剤で抵抗性が出ているものもしっかり防除できることが1つの特徴です。

もう1つの特徴は、いわゆる浸透移行性です。株元に処理すると、それを吸収して上部まで展開できるという浸透移行性が強く、土壌処理でも効果を発揮します。例えば、野菜のセルトレイで処理すれば、苗を定植した後でも効果が持続することが特徴と考えられます。

この剤は、スライドに記載のとおり、将来的なピーク時には50億円規模の売上を目指しています。日本と韓国では、昨年すでに登録申請を終えており、最終段階に達している剤です。

kenmo:今後の収益貢献が期待できるということですね。

岩田:おっしゃるとおりです。

強み➁製品ライフサイクルマネジメント(LCM)戦略

岩田:強みの2つ目についてご説明します。

当社は、製品のライフサイクルマネジメントという戦略をとっています。医薬品業界では、ジェネリック医薬品の登場などにより特許が切れると、「パテントクリフ」のように特許切れによる売上の急減が問題になることがよくあります。

当社ではこれに対応するため、新規農薬の登録認可を得て上市した後も、例えば適用作物の拡大や海外展開を通じて、使用場面をしっかり広げていく取り組みを行っています。

使用方法についてです。例えば、先ほどのセル苗処理や育苗箱での処理、さらにはドローンを活用した散布など、さまざまな応用動作を取り入れ、使用方法を進化させる取り組みを行っています。

また、他の殺虫剤との混合剤や、殺菌剤と殺虫剤の混合剤を開発することでシナジー効果を生み出し、新たな製剤の展開も上市後に行っています。

これにより、1つの剤の化合物特許が切れた後も、新たな知的財産としてしっかりと展開することが可能であることを示しています。このように、ライフサイクルを継続的に伸ばすマネジメント戦略を採用しています。

強み➁LCM戦略 具体的な事例

岩田:ライフサイクルマネジメント戦略の具体的な事例を2つご紹介します。当社は現在、約20種類の農薬の原体(農薬の有効成分)を開発して保有していますが、その中で最初に開発して世に送り出した原体が「フジワン」という薬剤です。

これは、約50年前の1975年に水稲向けのいもち病防除剤、いわゆる殺菌剤として発売されました。発売後、現場からは、水稲の根張りが良くなることや、登熟期にお米の実入りが非常に良くなる効果が報告されました。

また、さまざまな試験を行う中で、高温障害を軽減するという新たな作用を発見しました。これは、新たな知見として現在展開しています。あわせて海外では、バナナで世界的に問題となっている病害であるシガトカ病に効果があることがわかり、現在、適用拡大を進めています。

もう1つの剤「フェニックス」は、国内では野菜向けの殺虫剤として2007年に発売しました。その後、海外において綿花、大豆、果樹など幅広い分野での開発や適用拡大を行い、グローバルでの累計販売額が3,000億円に達する大規模な剤に成長させることができました。

そのため、スライド下に記載があるとおり、「特許切れは『終わり』ではなく、『安定収益の最大化フェーズ』の始まり。」と認識しています。非常に長期間にわたり収益に貢献し続けています。

kenmo:特許切れが「安定収益の最大化フェーズ」の始まりというのは、非常におもしろい表現だと思いました。会社として、次の「フェニックス」になり得ると期待している製品などはありますか?

岩田:先ほどご説明した「シベンゾキサスルフィル」という新しい殺虫剤には、非常に期待しています。いろいろな処理方法が可能であり、幅広い作物で適用が取れる可能性を秘めています。

そのため、日本、韓国だけでなく、今後グローバル展開することで、非常に長期間にわたって収益の安定化につながる剤と期待しています。

強み➂殺虫剤(果樹・野菜向け)に強い

岩田:強みの3つ目です。当社は、殺虫剤、特に果樹・野菜向けの分野に強いという特徴があります。

特に日本やアジア地域は、高温多湿で害虫が多い環境であり、殺虫剤の需要も非常に大きくなっています。最近ではカメムシの話題などもよく取り上げられています。また、穀物(Row Crop)よりも果樹や野菜に強いことが当社の特徴の1つだと思います。

スライド左側の円グラフをご覧ください。内側が世界の農薬市場を示しており、殺虫剤が30パーセント、除草剤が40パーセントとなっています。一方、当社の実績では、実に60パーセントが殺虫剤で占められています。

これにより、世界的にも問題となっている殺虫剤分野において、非常に大きな貢献ができる体制を整えています。

当社の強みとして、Specialty Crop、つまり果樹や野菜への対応力に優れている点があります。スライド右側の円グラフの内側は日本の農薬市場を示しており、水稲、果樹、野菜といった分類が表示されています。

一方、外側の当社の販売実績をご覧いただくと、果樹と野菜の比率が非常に高いことがおわかりいただけると思います。このような分野への強さが、当社の特徴であり、強みの1つと言えるでしょう。

kenmo:Specialty Cropに強いということですが、Row Cropと比べて、例えば価格競争力や利益率になにか違いはあるのでしょうか?

岩田:Row Cropは収量増を狙って大面積で作られます。そのため、どちらかというと価格も安く、収量等も不安定になりがちです。大きな市場で横展開を進める場合、ジェネリック農薬が入りやすい市場となります。

一方で、Specialty Cropは非常に多岐にわたる分野があり、ポジショニングや使用方法を含めて、技術的な展開が必要となります。そのような意味では、Specialty Cropはいわゆるグローバルニッチに該当する分野と言え、収益性の安定性が高いのではないかと思います。

そのため、競争相手やライバルが少ない中で展開しやすく、収益性も確保できる特徴があると考えます。

トピックス:特定外来生物「クビアカツヤカミキリ」

岩田:殺虫剤に強いという点で、少しトピックスをご紹介します。ニュースや新聞などで名前を聞いたことがある方もいらっしゃるかもしれませんが、現在、国内で緊急防除の観点で非常に問題となっているのがクビアカツヤカミキリというカミキリムシの1種です。

これは特定外来生物で、海外から日本に侵入してきた害虫の1つです。最もよく知られているのはサクラに関する被害で、ソメイヨシノなどのサクラや、全国各地の桜の名所にも被害が及んでいます。

最近、このクビアカツヤカミキリの幼虫が幹の中に侵入し、1年から2年にわたって内部を食い荒らし、木が枯れてしまうという深刻な被害が報告されています。農業分野においても、モモ、スモモ、ウメなどに同様の害を与え、果樹が枯死に至ることが全国的な問題となっています。

私たち日本農薬は、先ほどお話ししたように、殺虫剤への耐性にも対応し、成虫だけでなく樹内や幹の中に潜む幼虫にも効果を発揮する「アクセルフロアブル」を展開しています。また、新しい処理方法も含めて開発・展開を進めています。

具体的な内容については、ホームページなどに特設サイトを設けていますので、ぜひご確認いただければと思います。

強み④現場密着のグローカル経営

岩田:強みの4つ目です。

冒頭に、海外売上が7割であるとお話ししましたが、グローバル展開の中でグローカル経営を積極的に取り入れています。スライド右側には世界地図が表示されていますが、世界の農業の主要マーケットに14のグループ会社を持ち、資本出資なども含めて数多く展開しています。

スライド左側には、世界の農薬市場のトップ10について、当社がどのようにカバーしているかを記載しています。農薬需要が最も大きいのはブラジルで、次いでアメリカ、中国、アルゼンチン、インドと続き、日本は6番目に位置しています。

それぞれの地域でグループ会社が展開し、当社の製品を開発、普及、販売しています。このように、現地のグループ会社がアンテナ機能を持ち、現地ニーズをしっかり捉え、現地に最適な防除手段として農薬を提案するシステムを採用しています。

それとともに、日本での登録だけでなく、グローバルでの同時開発・同時登録を目指し、新規農薬による収益の最速・最大化を推進しています。

世界の農薬市場

kenmo:海外売上高比率が7割ということですが、今後伸ばしていきたい領域、今後5年ぐらいで特に注力していくエリアについてお聞かせいただけますか?

岩田:7割とご紹介しましたが、スライドの緑色の棒グラフはアジア、赤色の棒グラフは中南米を示しています。現在の収益性については、欧州と米州が非常に牽引しており、安定した成長を遂げています。引き続き成長路線で展開していく状況です。

今後の期待値としては、アジア地域、特にインドが挙げられます。ご存じのとおり、インドは世界一の人口を誇る国であり、食料供給事情が非常に重要で、今後の経済成長も期待されています。

また、中南米についてはブラジルが注目されます。こちらは先ほどもお伝えしたように世界一の農薬市場であり、この2ヶ国を今後の成長ドライバーとして、当社の製品を展開したいと考えています。将来的には、海外市場で8割をしっかりと確保する戦略を目指していきます。

日本農薬株式会社 会社概要詳細

岩田:ただし、これは国内市場を拡大しつつ海外市場も成長させる方針です。例えば1,500億円を目指す場合、国内が300億円、海外が1,200億円という比率で、海外市場と国内市場の展開を同時に強化していくという考えです。

kenmo:海外を伸ばしていくということで、為替の影響についておうかがいします。一般的に円安のほうがポジティブではないかと直感的に感じるのですが、為替の影響について教えていただけますか?

岩田:為替について、円安傾向が続いており、海外売上を円換算する上では、円安のほうがプラスに働くことは間違いありません。

ただし、一方で原材料の価格が上昇する可能性もあります。そのため、リスク管理を徹底し、複数ソースからの原材料確保や適切な価格転嫁を含めた対策を実施しています。基本的には円安であれば収益は向上すると考えています。

強み⑤新領域への挑戦 ~スマート農業・AI~

岩田:強みの5つ目です。

新領域への挑戦として、当社は、近い将来のビジネス化を目指しながら、スマート農業や、昨今注目されているAI(人工知能)を活用したデジタル化を推進しています。農薬に加えた展開として、スライドに記載のとおり、3つの取り組みがあります。

1つ目は、農家の生産者向けに提供しているAIによる病害虫雑草診断ソフトのフリーアプリです。アプリ名は「レイミー」で、すでに40万ダウンロードを達成し、年々利用が増加しています。水稲や野菜を含む、多岐にわたる作物に対応可能であり、アジアでも展開を進めています。

2つ目は、API連携サービス「NacField」を利用し、他社のシステムプラットフォームとの連携を強化しています。具体例としては、JA全農(全国農業協同組合連合会)が提供する営農管理システム「Z-GIS」や、クボタが展開する「KSAS」との連携をすでに実現しています。これにより、生産者がこれらのシステムをより使いやすい環境を整えています。

3つ目は、衛生管理AI「AiPics」の取り組みです。これは農業分野ではなく、食品工場や飲食店といった業界における衛生害虫対策を対象とし、害虫分析の自動化サービスを提供しています。この分野のサービスは昨年から開始されており、現在非常に高い引き合いを得ている分野です。

すでにビジネス化を進めており、農薬にとどまらず、こうした技術を活用して食の安全に向けた包括的なソリューションの提供を目指しています。

強み⑤新領域への挑戦 ~化学農薬の枠を超える~

岩田:併せて新領域について、スライドにある3つの領域にも積極的にアプローチしています。

1つ目は農薬や肥料ではありませんが、「バイオスティミュラント」と呼ばれる分野です。いわゆる作物活性剤に近いものだと思います。当社ではすでに「クロスバリュー」というバイオスティミュラントを国内で販売開始しています。

この資材の中身は、2種類の微生物(バチルス菌)を配合し、高温や乾燥といった環境ストレスから作物を守ることが特徴です。

2つ目は、生物農薬および天然物由来の製品です。これについても、積極的に領域拡大を図っています。特に欧州では、すでに天然由来の農薬の開発権利を獲得しており、現在開発を進めています。これをグローバル展開することで、新たな領域の拡大を目指しています。

3つ目は、「アジュバント」です。これは、2023年に買収した英国のInteragro社が取り扱っている製品で、日本では「機能性展着剤」と呼ばれている資材です。

この製品は農薬と混ぜて散布することで、界面活性剤的な作用を発揮し、薬剤が広がりやすくなり、作物に染み込みやすくなる特徴があります。その結果、薬剤の使用量を低減するなどの効果が期待される技術です。

農薬ビジネス特有の季節性(シーズナリティ)

岩田:当社の業績についてご紹介します。農薬ビジネス特有の季節性についてお話しします。投資家のみなさまにとって、四半期ごとの実績は非常に関心が高いと思います。

農薬は農業の現場と密接に関係しており、農業そのものが年間1作または2作といった限られた年間サイクルで行われる特性があります。

農薬の供給に関しては、北半球では作物の生育期間が春から秋にかけてとなるため、4月から9月が作物の需要期、すなわち農薬の需要期となります。そのため、農薬の出荷はその前の1月から3月が主となります。

当社の場合、4月から翌年3月の決算期中では、第4四半期にあたる1月から3月に販売のウエイトが高くなる特徴があります。そのため投資家のみなさまには、四半期ごとの実績ではなく、年間を通した流れを確認していただきつつ、当社の成長度合いを見ていただけると幸いです。

業績の推移

岩田:過去、2017年9月期に行った決算期の変更後、約10年間の業績、売上高と営業利益の推移を示しています。この10年間で売上高は506億円から前期の1,118億円へと約2倍以上に成長しました。

営業利益も当時の44億円から前期の108億円へと、こちらも倍以上に成長しています。若干の年次変動はあるものの、着実に右肩上がりの成長を遂げています。

2026年3月期業績

岩田:2026年3月期の実績は、海外・国内ともに販売を増やしました。売上高は1,118億円、営業利益は108億円、当期純利益は72億円となり、いずれも前期比で大きく成長しました。

営業利益率は9.7パーセントで、前期比1.1ポイント改善しました。ROEは8.9パーセントとなり、前期比で5.9ポイントの改善を達成しました。

2026年3月期 好調要因➀~海外農薬事業の飛躍

岩田:その牽引役となっている要因として、2つをご紹介します。1つ目の好調要因は、海外農薬事業の飛躍です。

先ほど少しお伝えしましたが、欧米エリアが非常に堅実なかたちで安定した収益性と成長性を示しています。北米エリアの売上高は179億円で、前期比19パーセント増となりました。特に果樹・野菜向けの殺虫剤が好調に推移し、カナダ向け除草剤も堅調に推移した結果です。

欧州エリアについては、厳しい規制がある中でも売上高211億円を達成し、前期比58パーセントの増加を記録しました。ばれいしょ向け除草剤や、Interagro社によるアジュバントビジネスなども含め、統合シナジーを発揮し、英国での直販を開始したことで、好調に推移しています。

kenmo:足元、欧米が非常に好調ということですが、これは一過性の特需的な要因が含まれているのか、それとも構造的な変化があるのか、その点をお聞かせいただいてもよいでしょうか?

岩田:基本的には、欧米は非常に成熟市場であり、日本と同様に堅実に農業が行われ、防除も進められているという点が1つ挙げられます。つまり、土台がしっかりしているということです。

併せて、当社の殺虫剤、除草剤、殺菌剤などの製品が着実にシェアを拡大し、成長を続けています。この部分については、一過性ではなく、着実に今後も持続的に成長できるものと感じています。

2026年3月期 好調要因➁~国内農薬事業の伸長

岩田:2つ目の好調要因は、日本国内の農薬事業の成長です。自社開発剤のシェア拡大はもちろん、この数年間、グローバル大手農薬メーカーとの戦略的提携が国内の収益を大きく押し上げています。

自社品の販売を含め、米コルテバ社との協業を2021年10月から開始しました。同社の農薬に関する販売権を取得し、普及拡大に努めることで、この5年間で大きく成長しました。

ドイツのBASF社の果樹用農薬に関しては、昨年10月から独占販売権を取得し、ちょうど1年が経過したところです。この分野については、最初の1年目が過ぎた現在、果樹・野菜分野での強みを活かし、特に果樹分野でのさらなる普及拡大を進めていきたいと考えています。

そのような中で、国内営業としての売上高は255億円となり、前年比で9パーセントの成長を昨年度に成し遂げました。

kenmo:今後の成長を図る上で、BASF社やコルテバ社との提携について話がありましたが、なぜ御社が選ばれるのかという理由を教えていただけますか?

岩田:1つは、日本の市場が非常に長い歴史の中で培われているという背景があります。また、当社は冒頭でもご紹介いただいたとおり、98年の歴史があります。

日本では最初の農薬専業メーカーとして、現場での技術普及を含めた信頼関係を、生産者および流通に携わる方々としっかり構築してきたことが挙げられます。そうした点が高く評価されたことが1つの大きな要因だと思います。

また、いわゆる品目のポートフォリオや分野別の適合性も非常に高かった点が関係していると思います。これらの複合的な要因により、当社は提携を通じて大きく成長路線に展開できたと感じています。

2027年3月期業績予想

岩田:今期2027年3月期の業績予想についてご紹介します。BASF社の果樹向け農薬の年間での寄与、および国内外でのシェア拡大により、引き続き過去最高の業績を見込んでいます。

売上高は1,160億円で、前期比41億円の増加、営業利益は115億円で、前期比6億円の増加、当期純利益は74億円で、前期比2億円の増加と、それぞれ収益の成長を見込んでいます。

営業利益率は9.9パーセント、ROEは8.5パーセントと、これらをしっかりと維持しながら、今期を進めていきたいと考えています。

kenmo:業績について、最近お米の価格が大きく取り上げられているなかで、例えばお米の価格が上昇して農家の収益性が改善した場合、農薬への支出は一般的に増える傾向があるのでしょうか。そのあたりの関連や傾向についてお聞かせいただけますか?

岩田:現在注目されている分野であり、当然国内のお米の価格が高いということは、生産者の収益性が向上することを意味します。したがって、しっかりと防除を行い、より質の高い作物を得たいというニーズが生じます。

このため、防除は基幹防除だけでなく、臨機防除も含めて展開され、需要が増加すると考えています。基本的に、お米はしっかりと防除を行わなければ、良質なものを収穫することはできません。そのため、基本的な観点として、防除は生産者が確実に実施すると考えています。

お米の価格が若干下落した場合であっても、農家が収益を確保する上で防除は必要不可欠な分野であると認識しています。

さらに、お米だけでなく、先ほど言及した果樹や野菜といった分野も対象に含まれており、全体的なバランスを考慮しつつ、業界全体が成長できるような戦略を現場で展開しています。そのため、お米の価格の変動だけで業績が大きく左右されることはないという認識です。

kenmo:先ほど為替についておうかがいしましたが、御社の業績に影響を与え得る、他の外部的な変動要因があれば教えていただけますでしょうか?

岩田:為替以外では、例えば少し前に発生したトランプ関税の影響や、昨今の地政学的リスクに伴う原材料費の高騰などが変動要因として挙げられると考えています。

関税については現在、ある程度落ち着きを見せていますが、最適なサプライチェーンを構築することでその影響を抑えています。

また原材料については、先ほどお話ししたとおり、1ヶ所ではなく複数の調達先を確保しながら安定的な調達を目指しており、これにより影響は軽微であると認識しています。

kenmo:資材価格の上昇に関して、現在のところ価格転嫁はできている状況でしょうか?

岩田:これは、インフレとも関連しています。国ごとにインフレ率は異なりますが、それぞれの地域に応じた適正な価格形成を進めています。そのため、原材料費の高騰に応じた価格転嫁はしっかりと行われていると考えています。

ただし、現地の状況も影響しますので、各地域で交渉を鋭意実施中であると考えています。

株主還元➀安定配当

岩田:株主のみなさまへの配当性向や株主還元のご説明です。株主還元についてです。安定配当を維持しつつ、現中期経営計画において配当性向40パーセント水準を目安とする方針を掲げています。

累進配当を導入した結果、配当性向40パーセントを維持しながら、過去に大きく配当を拡大してきました。スライドのグラフにあるように、昨期は1株当たり36円の配当を実施し、今期についても現在の見通しでは1株当たり38円を予定しており、増配を見込んでいます。

株主還元➁株主優待(2027年3月期)(新設)

岩田:今期、優待制度を新設しました。

当社は2028年に創立100周年を迎えるということもあり、株主のみなさまのこれまでの温かいご支援への感謝と、日本の農業にはお米が欠かせないものであることから、日本の農業を応援する意味を込めて、おこめ券を進呈することにしました。

9月30日の基準日において、1単元株以上をお持ちの株主さまには、おこめ券4枚(1,760円相当)を贈呈し、12月頃にこれを発送する予定です。

結び:次の100年へ

岩田:結びです。

当社は、先ほどお話ししましたとおり、2028年に100周年を迎えますが、次の100年に向けて、引き続き安全でサステナブルな「食とくらし」を守るインフラ企業として、技術革新やグローバル展開を進めることで、世界の食料問題や環境課題に挑み続けたいと考えています。

人類にとって不可欠な食料の安定供給という役割をしっかりと認識し、収益の確保と株主さまへの還元を実現していきます。引き続きご支援のほど、よろしくお願いします。

質疑応答:ブラジルでの農薬市場展開と収益確保について

荒井沙織氏(以下、荒井):「ブラジルで農産物価格下落により、高価格帯製品が低迷とありますが、市況がブレたのに対して収益性を維持しながら数量を伸ばすための製品ミックス戦略、このあたりはどのようにお考えでしょうか?」というご質問です。

岩田:ご指摘のとおり、ブラジルなどではボラティリティが高く、特にジェネリック農薬のウエイトが非常に高い市場となっています。したがって、当社の販売ルートにおいても、他社とのジョイントベンチャーで販売会社を展開しています。

そのため、当社の製品だけでなく、他社製品と混合剤を開発したり、ローテーションで展開したりすることで、作物に対してより付加価値の高い普及展開を図ることを1つの大きな方向性として掲げています。

ブラジル市場は世界最大で、日本円にして約3兆円規模の農薬市場です。そのうち約10パーセントの3,000億円は主にSpecialty Cropが占めており、日本の農薬市場全体とほぼ同等規模です。

また、大豆や麦といった穀物の市場にも参入できる製剤を展開することで、着実に収益を確保したいと考えています。

質疑応答:衛生害虫対応のサブスク化と農業用フリーアプリの将来展望について

荒井:「連携を開始されたAI病害虫雑草診断アプリの取り組みなのですが、将来の収益化をサブスク化と農薬販売の付加価値化、このどちらで狙いますか?」というご質問です。

岩田:非常に良い質問だと思います。先ほどお話しした衛生害虫対応については、すでにサブスクリプション型のビジネスとして展開しています。

農業用のフリーアプリに関しては、現在は広告宣伝費のみが収益となっています。しかし、将来的には生産者の方々とさまざまな情報を提供し合い、またはビッグデータとして活用しながらビジネス展開を図りたいと考えており、現在鋭意検討中です。

質疑応答:気候変動による影響と対応について

kenmo:「気候変動の影響、中長期的に農薬の必要性だったり、御社の業績に影響するところをお聞かせください」というご質問です。

岩田:今年、新聞紙上でもエルニーニョ、しかもスーパーエルニーニョということで、ペルー沖の海水温が4度も高いという話が報じられています。今年は日本でも非常に雨が多く、いわゆる異常気象的な現象が見られましたが、海外では干ばつのような問題が各地で発生しています。

これはリスクであると同時に、機会でもあると認識しています。気候変動というのは、ある国では干ばつが発生し、別の国では雨が降るといった形で、グローバルでさまざまな変化が生じるのが特徴です。

当社は各地域に拠点を持ち、アンテナ機能を備えています。そうした中で、今年問題になっている事象について適切に対応し、それを安定した収益につなげる努力をしています。

影響がまったくないわけではありませんが、臨機応変な対応や、気候に応じたソリューションを展開することが重要です。

例えば、高温の際には高温障害を抑制するような「フジワン」や「バイオスティミュラント」といったソリューションを提供することで、それを機会として捉えることが可能だと考えています。

質疑応答:ジェネリック展開の影響とその障壁について

kenmo:「特許満了後も適用拡大や混合剤によって収益を維持できる、そのようなお話が非常に印象に残りました。

ジェネリックとの価格競争に陥りやすい製品と、一方で長く収益を維持できる製品では何が決定的に違うのでしょうか? 『フジワン』や『フェニックス』など、具体例で教えていただければ幸いです」というご質問です。

岩田:非常に良い質問をいただきました。実はジェネリックが狙うのは、いわゆる非常に売れている製品です。大市場を当然狙ってきます。

当社は現在、グローバルニッチについてお話ししましたが、いわゆるSpecialty Cropの分野を、現場に根ざしたかたちでしっかりと展開しています。その結果、ジェネリックは優先度が低くなり、二の次、三の次となります。

そのため、ジェネリックの展開が遅れるというのが1つの要因だと考えています。

また、私たちの製品には、製造難易度の違いという観点があります。原体にも製造しやすいものと製造が難しいものがあり、当社の商品はどちらかというと複雑な構造を持つため、他社が低コストで製造することは難しいと言えます。

こうした点も要因となり、ジェネリック製品が市場に入りにくい障壁になっているのではないかと考えています。

岩田氏からのご挨拶

岩田:今日は長時間にわたりご清聴いただき、ありがとうございます。当社は先ほどお話ししたとおり、人類にとって不可欠な食料の安定確保を目指し、日々技術革新を進めています。

新たな農薬の創薬を通じて、大きな収益を上げるとともに、社会へ貢献できると考えています。引き続き、投資家のみなさまのご支援を賜りますようお願い申し上げます。今後ともよろしくお願いします。本日はありがとうございました。

当日に寄せられたその他の質問と回答

当日に寄せられた質問について、時間の関係で取り上げることができなかったものを、後日企業に回答いただきましたのでご紹介します。

<質問1>

質問:新規剤は開発に長期と大きな投資が必要ですが、開発ポートフォリオの優先順位は殺虫剤と殺菌剤と除草剤のどれを厚くしますか?

回答:着実な創薬実績を持つ「殺虫剤」のみならず、大きな市場需要が見込まれる「除草剤」や「殺菌剤」についても自社パイプラインを順次ステージアップさせて開発を進めています。あわせて親会社ADEKAとの共同研究による動物薬展開も推進し、バランスの取れた創薬ポートフォリオを構築していきます。

<質問2>

質問:オールラウンドスクリーニングで用途転換の成功例がある一方で、今後ライフサイエンス領域の売上をどの程度伸ばす方針ですか?

回答:足元では、2030年に向けて、医薬・動物薬・バイオリソースなどの新領域で150億円以上の売上創出を目指しています。具体的には、国内高シェアの水虫治療薬のグローバル展開(アジア・オセアニア等)や、シロアリ防除事業等の拡大を通じて高収益な事業の柱へと育てていきます。

<質問3>

質問:製品ライフサイクルマネジメントで長期収益化するとありますが、適用拡大と混合剤開発のどちらが成長ドライバーとして大きいですか?

回答:どちらか一方ではなく、市場パイを広げる「適用拡大」と、知財戦略も含め付加価値を守る「混合剤開発」の「両輪の戦略」が等しく重要な成長ドライバーです。

<質問4>

質問:「シベンゾキサスルフィル」は既存剤への感受性が低下した害虫にも有効とのことですが、既存剤と異なる作用機構はどの程度明確になっていますか? また、抵抗性管理上、ローテーション剤として世界的に普及できる可能性をどう見ていますか?

回答:虫体内の小胞性アセチルコリントランスポーター阻害という新規作用機構を有することが学術論文でも発表され、科学的に明確に立証されています。既存剤に抵抗性を持つ害虫種にも高い効果を示すため、全世界の園芸分野におけるローテーション防除の要となることを目指しています。

<質問5>

質問:AIやデータを活用した営農支援の取り組みは、将来的に収益源としてサービス化するのか、それとも農薬販売の付加価値化を主目的にするのか方針を教えてください。

回答:主軸はユーザーさまに対して無料で提供中のAI診断による「農薬販売の付加価値化(本業促進)」ですが、他社営農システムへのAPI提供「NacField」や衛生害虫診断AI「AiPics」、提携する農薬メーカーさまからの手数料など、直接収益化を組み合わせたハイブリッド戦略で推進しています。

<質問6>

質問:AIによる病害虫診断の取り組みをご紹介いただきましたが、新しい農薬そのものの研究開発には、AIをどのように活用されていますか?

例えば、候補化合物の探索や、効果・安全性の予測などで、開発期間の短縮や成功確率の向上につながっている事例があれば教えてください。また、長年蓄積された化合物や試験のデータは、AI活用における御社の競争優位になるとお考えでしょうか?

回答:最新のゲノム解析技術やAIを活用することで、標的生物に対する活性を向上させるとともに、非標的生物や人畜・環境に対する高い安全性を確保した新薬の開発を推進しています。長年培ってきた膨大な化合物ライブラリーや生物・安全性試験データは、AIモデルの精度を高め、他社には真似できない独自の強みとなっています。

<質問7>

質問:アフリカなどには、病害虫対策や栽培技術、農業資材へのアクセスが十分でなく、安定した農業生産が難しい地域もあると思います。

御社の防除ノウハウやAI診断技術を現地農家への技術指導と組み合わせ、農業生産性や農家の所得を高めながら、将来の市場を育てていくことはできないでしょうか?

援助機関や他の農業関連企業との連携も含め、現在の取り組みや、実現に向けた課題を教えてください。

回答:JICA等との連携や、海外版アプリ「AcroSeeker」を通じた病害虫診断・技術指導(ベトナム・メコンデルタでの低炭素米支援等)を展開しています。現地インフラや資材アクセスの確保が課題ですが、国際援助機関や現地パートナーとのアライアンスを通じて、生産性向上支援と将来市場の開拓を両立していきます。

<質問8>

質問:1つの化合物を農薬だけでなく医薬や動物薬にも評価する研究体制が、非常に興味深いと感じました。AIを活用することで、過去に開発を見送った化合物の新しい用途や、既存剤の新しい効果を発見する取り組みはされていますか? 長年蓄積した試験データが、今後どの程度強みになるとお考えでしょうか?

回答:詳細は差し控えますが、当社では、長年の蓄積データとAI解析を掛け合わせることで、「新用途の発見」から、「新たな使い道の開拓」までを加速させ、独自資産の価値を最大化しています。

<質問9>

質問:北米で殺虫剤「ブプロフェジン」と「フェンピロキシメート」が好調とのことですが、伸びの要因は需要増とシェア拡大のどちらが大きいですか?

回答:春先の気温上昇による害虫多発等による需要増と、環境規制強化を追い風とした他社製品からのリプレイスと地道な技術普及によるシェア拡大の相乗効果によるものです。

<質問10>

質問:国内では水稲向け除草剤が好調とのことですが、今後の成長余地は主力品の深耕と提携先製品の拡販のどちらにあると見ていますか?

回答:比較的利益性の高い自社品の拡大にも拘りつつ、提携先製品を含めた豊富なラインナップを活かして、国内市場での総合的なシェアを高めていきたいと考えています。

シェアの拡大によって販売基盤や提携先との関係を強化し、新たな商品の導入や自社品のさらなる拡販につなげていく方針です。このため、自社主力品の深耕と提携先製品の拡販を、相互に補完する取り組みとして進めていきます。

<質問11>

質問:中期経営計画(GGS)で掲げる成長の最重要KPIは、海外販売の拡大と自社開発品比率の向上のどちらですか?

回答:海外市場を成長エンジンと位置づけ、中期経営計画目標として海外販売比率75パーセント(2026年度)を掲げています。

「自社開発品比率の向上」は、海外市場で高い利益率と競争力を維持しながら拡大するための「原動力・武器」として推進しています。

<質問12>

質問:研究開発で「3年で1剤以上」を目標としていますが、中経の成長に直結させるための拡販体制をどう強化しますか?

回答:主要な農業生産国で販売拠点を確立していますが、当社が得意とする高付加価値剤のポテンシャルが大きな市場での販売体制を確立していること、また新規農薬の世界同時開発を行うことで、時間的・面的にも早期の上市を可能とする体制を整えています。

<質問13>

質問:海外重点国としてブラジルとインドの比重が高い一方、為替や市況の振れも大きい地域です。中期経営計画では収益のブレをどう抑える設計ですか?

回答:高利益率な国内及び北米・欧州市場で確実な収益基盤を確立し、新興国市場の市況や為替の変動リスクをグループ全体で吸収・下支えしています。

また、新興国においては、不毛な価格競争を避け、高利益品シフト・販売体制の見直し・客先の与信管理強化・為替ヘッジ(デリバティブ活用)を徹底し、収益のブレを抑えています。加えて、金融コストによる社外流出の最小化を図るため、グループ内ファイナンスなどに取り組んでいます。

<質問14>

質問:直近では営業利益率が改善しており、収益力の向上に注目しています。

今後、利益率をさらに改善・維持していくために、製品構成の改善や原価低減など、どのような取り組みを重視されていますか?

回答:自社開発原体を中心に、かつ当社独自の混合剤の販売比率を引き上げ、付加価値の最大化に務めています。

また、インドのグループ製造拠点も活用しながら原体の製造原価低減を推進します。あわせて、鹿島事業所等のスマート工場化やDX投資による生産性向上、連結ベースでの在庫適正化により固定費を抑制します。

加えて、原材料高騰やインフレ圧力に対しては、単なるコスト削減にとどまらず、適正な価格改定を各市場で粘り強く浸透させていきます。

<質問15>

質問:農薬事業では、独自製品の開発力や各国での登録取得が競争力につながると考えています。

今後の成長を担う新製品や重点開発領域について、収益への貢献が期待できる時期も含めて教えていただけますでしょうか?

回答:最大の成長エンジンは先ほどご説明しました2028年度以降に上市予定の次世代新規殺虫剤「シベンゾキサスルフィル」であり、併せてバイオ資材やスマート農業などの新規領域を育成しています。

<質問16>

質問:2030年度の営業利益率10パーセント以上という目標について、現状から利益率を引き上げる最大のドライバーは何だとお考えでしょうか?

回答:自社開発原体の販売比率拡大が1つのドライバーです。自社開発原体は他社からのライセンス品に比べて利益率が高い傾向にあります。また、2028年度以降に上市される新規殺虫剤「シベンゾキサスルフィル」(ピーク50億円)が本格的に寄与することで、全体の利益率を押し上げます。

加えて、ブラジルでの自社開発品・高利益品の比率向上、およびインドでの有力販社との連携を含む販売体制の見直しや、現地工場を活用した原価低減を進めることが、グループ全体の利益率向上に直結します。

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