コロナ以前の詐欺手法
コロナ以前のネット詐欺というのは、日本のオレオレ詐欺とよく似ています。オレオレ詐欺は中国でも「是我是我詐騙」としてよく知られています。
手法もよく似ています。かけ子と呼ばれる人たちがタイやベトナムに集められ、名簿リストに従って次々と「利回りのいい投資商品がある」などと電話をかけていきます。そして、脈がありそうな人を見つけると、チームリーダーである詐欺師が電話を代わり、カモをはめていきます。多くの場合、投資と称して送金をさせ、その後は連絡が取れなくなるという単純な手口です。
送金されたお金は、次々と別の口座に転送されていき、海外口座も途中に挟み込まれるため、追跡をすることはほとんど不可能です。公安が捜査をするときは、A銀行の口座であれば、A銀行の本店がある地域の裁判所に開示命令を出してもらうことが必要で、そこからB銀行に送金されていたら、今度はB銀行の本店がある地域の裁判所から開示命令を取り付けなければなりません。とても犯人たちの送金スピードに追いつかないのです。
しかも、通信記録などからアジトの位置が分かったとしても、それが海外であれば、現地国の警察と捜査協力を取り付ける必要があります。その間に、犯人たちは隣の国に引っ越してしまうのです。
また、中国国内でスマートフォンやアプリのアカウントをつくるには、中国政府の身分証が必要になります。身分証の偽造は技術的には難しくはありませんが、罪としては国家を欺く行為なので非常に重いものになります。
これが海外であれば、現地国の偽造運転免許証などを使って、スマホを契約したり、アプリのアカウントがつくれるため、発覚をしても軽い罪で済むということもあります。
AIテクノロジーを取り入れた詐欺集団
このような詐欺集団もAIテクノロジーを取り入れるようになっています。公衆衛生分野での疫学調査や宅配便業務に使われれているAI音声チャットボットです。
シナリオを設定しておくと、自動的に電話をかけ、相手の人間の返答を自然言語解析し、理解し、それに対応したシナリオに分岐をするというものです。
音声AIに強い科大訊飛(iFLEYTEK)が、医療用(疫学調査や治療後のフォローを電話で行う)のシステムを販売しています。また、アリババ傘下の菜鳥物流は、事前に在宅であるかどうかを電話で確認するシステムを独自開発して利用しています。
上記は「菜鳥物流」が公開しているAIチャットボットの実例で、宅配便の受取人に在宅かどうかを確認しています。
このようなシステムの利点は、AIが電話をかけるので、人間よりもはるかに多くの電話がかけられるということです。科大訊飛のシステムでは、最大1時間で10万本の電話がかけられるということです。
このようなAIチャットボットを使って、リストに従って電話をかけていき、脈のありそうなカモを炙り出したら、そこから人間の詐欺師が対応をして、仕上げにかかります。
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