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若者ほど騙される。中国ネット詐欺集団がコロナで凶悪化、日本人を狙う最新手口とは=牧野武文

詐欺を潰すホワイトハッカーの活躍

このような古典的な詐欺は、2017年頃から目に見えて減少していきました。

ひとつは携帯電話の契約の実名制が進み、匿名で電話回線を持つことが難しくなっていったことです。実行犯たちが海外を拠点にするようになった理由のひとつが、海外であれば偽造免許証や身分確認なしで中国国内で利用できる携帯電話を契約できることもありました。東南アジアでは、中国に出張するビジネスマンのために、気軽に中国用のSIMカードが購入できるからです。

詐欺の減少に最も貢献をしたのは、ホワイトハッカーたちの活躍です。著名なところでは、セキュリティ企業360の「360セキュリティ」、テンセントの守護計画、アリババのダモアカデミー、中国信通院国家反詐欺センターなどに、優秀なホワイトハッカチームがあります。

中国信通院国家反詐欺センターでは、「国家反詐欺センター」アプリを無償配布しています。このアプリを入れておくと、かかってきた電話、送信されてきたショートメッセージが詐欺犯からのものである可能性がある場合にアラートを表示しくれます。国家反詐欺センターでは、発信元情報の監視をしていて、詐欺犯が使っている疑いのある番号などを把握しているのです。

また、テンセントの守護計画チームは、「ビンゴ」と呼ばれる反詐欺AIシステムを運用しています。テンセントが運営するSNS「WeChat」「QQ」のメッセージを解析し、詐欺の可能性を割り出し、一定以上の疑いがある場合は利用者に直接警告をするというものです。

アリババは、「天猫精霊二哈」(アハ)というアプリを公開しています。これは、連絡帳に登録をしていない未知の電話番号から電話がかかってくると、自動的にAIが応答してくれるというものです。合成音声で返答をするだけでなく、相手の話を認識して、適切な返答までします。そして、その会話内容をテキストに変換して利用者に教えてくれます。利用者は、未知の電話番号から電話がかかってきても、着信音が鳴ることはなく、後でテキストを見て、必要があればかけ直しをすればいいですし、必要がなければ無視をするか、以後はその番号からの電話を着信拒否するなどの対応ができます。

こちらの動画は、アリババのアプリ「アハ」がかかってきた営業電話に対応している実例です。貸付の営業電話に対して、興味があるともないとも取れる曖昧な返事をし続けます。

また、アリペイなどでは、高齢者に対する保護機能を提供しています。設定した額以上の決済をした場合、監督者(多くの場合、息子、娘)にプッシュ通知が行き、しかも決済後2時間から24時間経たないと実際の送金が行われないという遅延送金の仕組みが導入されています。これを設定しておけば、高齢者がうっかり詐欺にあっても、すぐに監督者が気がつくことになり、送金を取り消すことで被害を免れることができます。

このような努力により、2019年頃にはネット詐欺は非常に少なくなり、詐欺集団も多くが消えていきました。

しかし、コロナ禍でそれが復活をしてきているのです。しかも、ターゲットを中高年から若者に変えて、それがうまくいっています。

どうしてリテラシーの高いはずの若者が騙されてしまうのでしょうか。

Next: なぜネットリテラシーの高い若者も騙される?新しい詐欺の手法

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