韓国大統領選では僅差で野党・ユン氏が勝利した。文政権が叩き壊した外交関係の立て直しを真っ先に図り、バイデンの次に岸田首相に電話をするなど日韓関係の改善にも注力する様子が見えるが、本当に「更生」できるだろうか。(『勝又壽良の経済時評』勝又壽良)
※本記事は有料メルマガ『勝又壽良の経済時評』2022年3月17日号の一部抜粋です。ご興味をお持ちの方はぜひこの機会にご購読をどうぞ。当月配信済みのバックナンバーもすぐ読めます。
元『週刊東洋経済』編集長。静岡県出身。横浜市立大学商学部卒。経済学博士。1961年4月、東洋経済新報社編集局入社。週刊東洋経済編集長、取締役編集局長、主幹を経て退社。東海大学教養学部教授、教養学部長を歴任して独立。
ユン氏の勝因は文政権の「奢り」
過去の韓国大統領選では、進歩派政権が2期(10年)続いて政権交代する、というのがパターン化していた。しかし、先の大統領選では、このパターンが崩れて進歩派政権は続かなかった。保守派の尹錫悦(ユン・ソクヨル)氏が、「0.7ポイント差」の僅差で政権を獲得した。
その理由は何か。一言にまとめれば、文政権の「奢り」である。
進歩派は、「侵すベからざる」絶対的な存在であると振る舞ってきたのだ。保守派を退治することが、国益に適うという妄想を抱いていた。この結果、南北朝鮮の統一こそ国益、強いては朝鮮民族の地位向上に添うという、民族主義の夢に酔った。
在任2ヶ月足らずの文在寅(ムン・ジェイン)大統領は、なおこの夢にしがみつき、次期政権へ実現を託すると発言しているほどだ。
韓国進歩派の実態は、民族主義である。ロシアのプーチン大統領に似通った面を持っている。
プーチン氏のウクライナ侵略に対して、文政権は西側諸国で最後まで「非難の輪」に加わらず、様子見に徹した。最後は、米国の圧力で渋々と経済制裁に参加する、無様な姿を曝すことになった。
リベラルなき韓国政治の悲劇
韓国政治の「悲劇」は、進歩派とは看板だけであることだ。リベラルが、世界共通の進歩派の特色とすれば、韓国進歩派はこれと大きく異なる。民族主義の立場が濃厚である。これが、中国の習近平氏やロシアのプーチン氏に親近感を持つ理由である。当然、北朝鮮の金正恩氏に対してもしかりだ。この立場からすれば、日本は「天敵」の存在になる。日本へ反旗を翻すことが、韓国進歩派の証になった。
この「エセ」進歩派が担う政権では、韓国の政策が大きく歪む事態を招いた。
文政権の5年間は、外交や経済の政策においてことごとく失敗を重ね、文在寅氏の「レガシー」はゼロ、正しくはマイナスという結果に陥っている。