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FOMC“オラオラ利上げ”から“データ次第”へ転向。利上げ終着の目算が見え、落ち着きを取り戻したマーケット=高梨彰

7月26-27日に開催されたFOMCで0.75%の利上げ実施が決定されました。FOMC後の会見でパウエルFRB議長が行った発言内容で利上げペースが緩やかになる可能性が見え、マーケットは落ち着きを取り戻したようです。(『徒然なる古今東西』高梨彰)

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プロフィール:高梨彰(たかなし あきら)
日本証券アナリスト協会検定会員。埼玉県立浦和高校・慶応義塾大学経済学部卒業。証券・銀行にて、米国債をはじめ債券・為替トレーディングに従事。投資顧問会社では、ファンドマネージャーとして外債を中心に年金・投信運用を担当。現在は大手銀行グループにて、チーフストラテジスト、ALMにおける経済・金融市場見通し並びに運用戦略立案を担当。講演・セミナー講師多数。

「オラオラ利上げ」から「データ次第」へ

月26-27日でFOMCで「オラオラ利上げ」から「データ次第」に変わった分だけ、市場の反応は米ドル安になったかと。

7月26-27日に開催されたFOMC(連邦公開市場委員会:Federal Open Market Committee)にて、Fed(米連銀)は75bp(0.75%)の利上げを実施。政策金利FF(フェデラルファンド)レートの誘導目標は2.25%-2.50%になりました。2回連続の75bp利上げです。

利上げの理由は高いインフレ率と「極めてタイトな」労働市場です。物価と雇用の番人であるFedにとって、インフレと同時に雇用の強さは、金融政策を決める上での最重要事項です。

その上で、ジェローム・パウエルFRB議長が、FOMC後の会見にて述べた以下の言葉は市場に響きます。

「次回FOMCでも非常に大幅な利上げが有り得。一方、決定は今から次回までのデータ次第だ」「利上げ姿勢は続けるけど、ペースはゆっくりしたものになるかも」

この中で「非常に大幅な利上げ」は75bpを意味します。同時に75bp利上げの可能性は「データ次第(depend on the data)」だと。ついでに「利上げのペースはゆっくりなのが適切(it likely will appropriate to slow the pace of increases)」と。

インフレ退治最優先から利上げの出口の見極めへ

ここ2回のFOMCでは「インフレ退治最優先」でした。

ただし、元々6月FOMC時点の金融政策見通しでは、今年2022年末のFFレート見通しは3.4%。恐らく3.25%-3.50%という意味です。そして来年末は3.8%。

今後利上げを続けるにしても、見通し通りならば1度に50bpで十二分です。

パウエル議長の昨日の発言にしても、6月の見通しを文章に置き換えただけとも言えます。

それでも市場はドル売りで反応しました。利上げの終着地点を取り敢えず確認したためではないでしょうか。

今後はパウエル議長の言葉通り「データ次第」です。CPI(消費者物価指数:Consumer Price Index)をはじめ、インフレと雇用関連指標への市場の反応は敏感になります。しかも、その反応は素直です。

あとは米国債市場が「データ次第」で落ち着けるか。反応が素直になるだけに、インフレ率の高さがしつこいようだと、再度暴れかねません。そこは要注意です。

ひとまず、次の主要指標まで一息入れることができそうです。

まとめ

・FRB議長、次回75bp利上げの可能性も残しつつ「データ次第」へと姿勢変更
・利上げは「ゆっくりしたペース」になるとも
・6月見通しに言葉を合わせただけとも言えます

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image by:Federalreserve at Wikimedia Commons [Public Domain], via Wikimedia Commons

徒然なる古今東西』(2022年7月28日号)より一部抜粋
※タイトル・見出しはMONEY VOICE編集部による

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