なぜTポイントは落ち目に?3つの誤算
では、Tポイントの何が問題なのか?改めて考えたい。
筆者の見立てでは、Tポイント側に次の3つの「誤算」があったのではないかと見ている。
- レンタルビデオの不振
- 杜撰な個人情報の管理
- ヤドカリ戦略の破綻
<誤算その1. レンタルビデオの不振>
まず(1)は、祖業のレンタルビデオ事業がNetflixやAmazonプライムなどのサブスクリプションに押されてすっかり低調になり、店舗が次々と閉鎖されていること。Tポイント会員はレンタルビデオ店のユーザーが中心で、店舗の減少は会員数の減少に直結する。
Tポイントの基盤がレンタルビデオの会員であることは、会員の男性比率が高いという特徴につながっていて、稼働率が低いという問題も抱えていた。
<誤算その2. 杜撰な個人情報の管理>
(2)は個人情報の管理・保護に関する認識が甘く、たびたび不祥事を起こしており、個人情報を扱う企業として致命的な欠陥があるのではないかということだ。一例を挙げれば、警察からの任意の捜査関係事項照会要求に応じて個人情報を提出していたことが2019年に発覚した。つまり犯罪捜査協力という名目で個人情報データを本人に無断で警察に流していたわけだ。しかも長期間にわたって継続的に行われていたというから大問題だ。
ポイント事業だけでは儲けが少ない。そこで顧客情報の転売をビジネスの柱にし、収益構造の転換を図ろうとしていたのではないかという疑いすら生じる。
<誤算その3. ヤドカリ戦略の破綻>
最後の(3)のヤドカリ戦略とは、ビデオレンタルの低迷を受けて、経営基盤をより堅固なものにするために、大手金融企業やクレジットカードや決済サービスのなかに入り込み、そこでポイント事業を展開したことを指す。
Tポイントは2013年に「Yahoo!ポイント」を統合し、つい最近までYahoo!ジャパン、ソフトバンクグループのポイント戦略の根幹を担っていた。これもヤドカリ戦略の一環といえた。ところがコード決済のPayPayが大きく伸びてPayPayポイントを開始すると、重複する事業ということになり、今年3月にお役御免になってしまう。ヤドカリ戦略が破綻に追い込まれたわけだ。
突如現れた救いの女神!?
このようないくつかの誤算のなかでも、とりわけ(3)の「ヤフーショック」は大きく、Tポイントとしては次の手が見えないのが現状だった。そこに目をつけたのが三井住友カードだ。Tポイントにすれば、まさに救いの神に見えたかもしれない。
三井住友カードは日本で最大手のクレジットカード会社だ。かつてはCMで必ず三井住友Visaカードと「Visa」を連呼し、Visaという国際ブランドとの親密な関係を強調していたが、最近は「NL」とか「タッチ決済」という言葉を前面に出している。
NLというのはナンバーレスの意味で、カード券面のクレジットカード番号や有効期限、名前などをカード裏面やスマホに移動させて、盗み見を防ぎセキュリティーを高めた「不正利用防止策」だ。タッチ決済はクレジットカードを端末にかざすだけで決済が終わるようにした先端技術。これらの技術はVisaブランドの総本山であるビザワールドワイド社が推進する技術で、今後、世界のクレジットカードに導入されることになる。
この技術を日本では三井住友カードが優先的に取り入れ普及させることが許されている。そのことが奏功してか、三井住友Visaカードはいまや日本のカードシーンを独走する強さを見せつけている。
2022年に一番注目を集めたクレジットカードとして三井住友カードNLが指名される機会が、雑誌やアフィリエイトサイトで増えているのはそのひとつの表れだ。
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