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Tポイントを絶滅に追いやる3つの誤算。Vポイント統合も本質は“弱者連合”、元祖共通ポイント衰退の真相とは=岩田昭男

Tポイントは格安の居抜き物件?

ナンバーワンカードの三井住友カードにとって頭痛の種は、実はポイントだった。三井住友グループが発行する共通ポイント「Vポイント」の知名度が冒頭で述べたように一向に上がらないのだ。

かつては三井住友カードにはワールドワイドポイントというポイントがついた。銀行系カードを代表するポイントとしてそれなりに知られていたが、いつの間にかVポイントに代わり、いまではVポイントが主流になっている。しかし、Visaの威光をもってしてもその知名度はいまだに低いままだ。

Tポイントはそんな三井住友カードにとって格好の獲物だった。Tポイントとの統合は、共通ポイントの仕組みもノウハウも加盟店も手に入れることを意味する。いってみれば居抜きで格安の物件を手に入れるようなものだ。うまくいけば完璧なカード事業が可能になる。そんな思惑もあるだろう。

10月3日の発表ではTポイントの運営会社の資本比率はTポイント6割、三井住友カード4割、統合のめどは2024年春で、新たなポイント名になるという。少々言葉が過ぎるかもしれないが、死に体のTポイント相手に統合を進めるには、相手に花を持たせて実を取るというのが三井住友カードの戦略なのかもしれない。

ある大手クレジットカード会社の幹部は、「Tポイント会員7,000万人に三井住友フィナンシャルグループの5200万人を加えて合計1億2,000万人で日本一だとしきりに喧伝しています。しかし、Vポイント会員は正確には2,000万人ほどですから合計しても9,000万人にしかならず、Pontaや楽天ポイント(この2つのポイントはいずれも1億人を上回る)に負けているので、日本一とは言えません。プレスリリースで、強引に1億2,000万人と打ち出して、その勢いで日本一にしようというのはちょっと無理があります」と批判する(編注:Tポイント運営のCCCは、名寄せをしているので1億2,000万人で収まっているが、比較した楽天とポンタよりは多いはずと指摘。加えて、楽天とポンタは名寄せをしていないため、1人が複数枚のカードを持っていてもそのまま発表すると主張しています)。

統合の本質は「弱者連合」

マスコミは水増しされた会員数をもとに今回の統合劇を強者連合のように囃すが、それは間違っている。これまで見てきたようにTポイント、三井住友カード(Vポイント)はどちらも弱みを抱えた弱者であり、弱者連合というのが正しい。

両者をこんなふうに擬人化してみると面白かもしれない。

Tポイント=旅芸人:一座の看板役者。ただし、いまはすっかり落ちぶれてしまった。
Vポイント=大店の若旦那:才覚も実績もないが、店の金だけは親に頼んで引き出せる。

若旦那は役者のひいきになって役者を再生させようとするが、果たしてその行方は……。

下手なたとえはこれくらいにして、話を元に戻す。双方ともに弱者とはいっても、以下のように見返りは三井住友カードのほうが圧倒的に大きい。

・元祖共通ポイント「Tポイント」の力は絶大で、会員増が確実に期待できる
・さまざまな業界に精通した共通ポイントのノウハウが丸ごと手に入る。

注意しなければならないのは次のようなことだろう。

・Tポイントの個人情報の管理・取り扱いに関するコンプライアンスを徹底して、信用の回復を図る必要がある
・統合に時間がかかりすぎると、他のグループの介入を招く恐れがある。できるだけ早く実行に移すべき

あえて最後につけ加えるなら、三井住友グループは、新しいポイントサービスの名前を決めるにあたって、Tポイントの意向を最大限尊重する度量を見せてほしい。

長年この業界を見てきた者として、Tポイントという名前が完全に消えてなくなってしまうとしたら、実に寂しいことだ。

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世の中すっかりカード社会になりましたが、知っているようで知らないのがクレジットカードの世界。とくにゴールドカードやプラチナカードなどの情報はベールに包まれたままですから、なかなかリーチできません。また、最近は電子マネーや共通ポイントも勢いがあり、それらが複雑に絡み合いますから、こちらの知識も必要になってきました。私は30年にわたってクレジットカードの動向をウォッチしてきました。その体験と知識を総動員して、このメルマガで読者の疑問、質問に答えていこうと思います。ポイントの三重取り、プラチナカード入会の近道、いま一番旬のカードを教えて、などカードに関する疑問にできるだけお答えします。

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