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画像生成AIが量産する芸術家たちの屍。絵も小説も音楽も無限に大量生産されてタダになっていく=鈴木傾城

著作権に抵触するような表現物が出てきて問題に

音楽も、ちょっとした短い音や鼻歌などで、それを「曲」に作り上げるAIもまた研究が進められている。

恐らく、「サイケデリック・ロック調で女性歌手の声でシャウトする曲」みたいな生成ワードで、それらしき曲をAIがその場で作るようなソフトウェアも生まれるだろう。数ヶ月から数年のうちに出てきてもおかしくない。

画像生成AIも、小説生成AIも、音楽生成AIも、機械が自動的に表現物を紡ぎ出すという点では同一なのだが、このAIはゼロからイチを生み出しているのではなく、インターネットで取り込んだ「他人の著作物」を学んで独自に組み立てている。

インターネットからデータを持ってきて組み立てるのだから、著作権に抵触するような表現物が出てきて、これがAI表現物の大きな問題となりつつある。

しかし、そうした問題点も、やがてAIそのものが自ら生み出した表現物を蓄積していくにつれて解消するのだと思う。

後は、こうした表現物を「人間がどのように評価するか」である。

その場で生成ワードを入れて作って自分で楽しむ?

AIの表現物がどれだけ人間を感動させることができるのかは分からない。しかし「人間を感動させるアルゴリズム」はあるはずなので、これが洗練されていけば、いずれ人間が書いたものを超えるような表現物も生まれるはずだ。

そのうち人間が書く以上の表現物が世の中に満ち溢れるばかりか、誰でも自分好みの表現物を「その場で生成ワードを入れて作って自分で楽しむ」ような時代になっていくのではないか。作品は無限に大量生産されるので、最終的にはそうなる。

つまり、多くのクリエーターはAIに淘汰されていく時代に入り、生き残ったクリエーターはAIによる淘汰を恐れながら生きなければならない時代に入っていく。生み出した作品は、すべてAIが「学習」して大量生産していくからである。

「人間にしかできない領域」という認識を改めるべき

AIが膨大なビッグデータを背景に表現物を作り上げていくという作業は、AIが意志を持ってやっているのではなく、単にプログラム化された計算処理を行っているだけに過ぎない。

AIによって生み出された表現物はすべてアルゴリズムの産物である。しかし、そのアルゴリズムが高度化すると、まるでコンピュータ自体が「知能」を持って感銘を与える表現物を作り出して人間を虜にしてしまうのだろう。

インターネットという巨大なビッグデータの中からAIのアルゴリズムが的確に表現物を生み出すのと、人間が自分の経験の中から自分の手で生み出すアナログな表現物のクオリティが同じになっていくと、もはや受け手はAIが作り出したものだろうと人間が作り出したものだろうと関係ない。作品が良ければ、AIと人間の区別はなくなる。

多くの人たちは、まだAIが生み出す表現物の価値を評価できていない。芸術作品、それも人を感動させる作品というのは、人間だけが生み出すものであり、それは「人間にしかできない領域」だと思っている。

しかし、もうその認識は改めなければならない時代がやってきている。

Next: 芸術家は生活の危機。表現物を生み出すだけでは生きていけない時代に

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