韓国経済は、典型的な「茹でガエル」状況に落ち込んでいる。韓国経済に迫る危機を、危機として認識しないからだ。韓国は、これまで中国市場と半導体への依存を深めてきた。それだけに、中国市場が従来ほど期待できなければ今後、どう対応するのかという緊急課題に直面している。(『 勝又壽良の経済時評 勝又壽良の経済時評 』勝又壽良)
元『週刊東洋経済』編集長。静岡県出身。横浜市立大学商学部卒。経済学博士。1961年4月、東洋経済新報社編集局入社。週刊東洋経済編集長、取締役編集局長、主幹を経て退社。東海大学教養学部教授、教養学部長を歴任して独立。
ユン政権の支持率は30%まで低下
韓国経済は、典型的な「茹でガエル」状況に落ち込んでいる。韓国経済に迫る危機を、危機として認識しないからだ。相変わらず、「反日」「親日」騒ぎに明け暮れている。韓国ユン政権は、韓国経済を立て直すべく種々の対策を打ち出しているが、「本論」そっちのけの騒ぎである。
改革の1つが、年功序列・終身雇用制の廃止である。政府は、労働市場の流動化を進める、としている。これにより、「就職浪人」を減らせることや、結婚・出産への有力なテコになると期待する。国民の多くは、これに無関心である。強力な労働組合である「貴族労組」が、固執する年功序列・終身雇用制を受け入れている結果だ。
ユン政権は、不人気である。支持率は30%まで低下している。韓国政府が、旧徴用工賠償について国内問題として処理することへの反発と、日本の「謝罪がない」ことを理由にしている。こういう背景から、来年4月の総選挙では「野党が勝つべき」とするが50%、「与党が勝つべき」は36%にとどまっている。韓国ギャラップが、4月4日から6日にかけて実施した世論調査結果である。
勘定よりも「感情」優先の韓国政治
ユン政権と与党の支持率が低いのは、韓国社会にはびこる「惰性」の表面化であろう。「感情」よりも「勘定」を優先する、合理性思考が不足しているのだ。
これは、日本社会と真逆である。日本政治は、一時期を除いて保守党が政権を担当している。これは、「勘定」が優先している結果であろう。「感情」的には、政権交代させたい。だが、それによってもたらされる、政策的混乱を恐れているのだろう。韓国社会による「感情」優先の政権選択とは、大きな違いである。
韓国左派は、軍事政権をデモで倒したという自負を持っている。それは、民主主義の原点であって、大きな評価に値する。ただ、その後の左派政権は合理的な政策を選択せず、支持層に迎合的な政策を連発してきた。微温的な政策であり、抜本的な改革を忌避してきたのだ。
具体的には、韓国左派の主軸である労組の主張である「年功序列・終身雇用制」をそのまま受け入れ、あたかもそれを「正義」としてきた。最近判明したことは、韓国二大労組の1つである「民主労総」の末端組織に、暴力団員が紛れ込み建設会社を恐喝していた事件が摘発された。日本では、考えられない事件だ。
こういう奇っ怪な事件を生んだ背景は、既存の組織や理念を「点検=改革」する慣行が存在しないことだ。常に、既成事実が優先されてきたので、冒頭に上げた「茹でガエル現象」を生み出してきたと言えよう。