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個人事業主を殺す「インボイス制度」なぜ導入?税理士・神田知宜氏に聞く“増税”との戦い方=鈴木傾城

免税事業者にも税金の網をかぶせてから増税する方向に

鈴木:インボイスなんか進めるメリットなんかないですね。

神田:メリットはないですよ。我々はデメリットしかありません。メリットを受けるのは、財務省とシステム会社だけです。増税するとシステムも修正するじゃないですか。彼らにとってはビジネスチャンスですよ。でも、免税事業者は税金コストだけじゃなくて、そのシステムのコストも払わなければならない。誰かの黒字は誰かの赤字なので、システム会社が黒字になればその分、免税事業者は赤字になるんです。

鈴木:税理士はどうなんですか?

神田:税理士も赤字ですね。システムの使用料とかは絶対に上がるだろうし、手間も増えるし、でもそれに見合う分の値上げができるかって言ったら難しいと思います。

鈴木:ただ手間が増えるだけということですか。手間がかかる上に「税率が上がらない増税」になるんだからたまったものじゃないですね。

神田:はい。それにインボイス制度って、後の増税の下準備の制度だとも言われています。税理士の集会で、国会議員が挨拶で何人かいらしたのですが、そのようなことを言ってました。インボイスで裾野から全部税金を取れるようになったら、そこからの次の増税をしていくということです。

鈴木:なるほど。免税事業者にも税金の網をかぶせてから増税すると……。

神田:そうです。免税事業者がいない方が税率アップしやすいんですよ。事業者のすべてを課税事業者にして、そこから15%、20%、30%にしていく。そのための準備がインボイス制度ではないかと言われてます。

鈴木:日本は消費税が導入されてから本当全然成長してないですよね。10%の今でも瀕死の状態だけども、それが15%とか20%とか30%とかなったら、もう終わりですよ。

神田:終わりますよね。インボイス制度が導入されたら、早くそこまでいくと思います。加速して15%とか20%とか30%とかになっていく。逆にインボイス制度が導入されなかったら、消費税廃止の道筋が見えてくる。だからインボイス制度は消費税の増税か廃止かの別れ道の扉ですね。

鈴木:これ以上、税金が上がったらたまったものじゃないです。

神田:仮に消費税が上がっていくことになったら、やばいですよ。10%で値上げしきれてなくて「資金繰りきついわ」と言っている課税事業者は、15%、20%になったら軒並み倒産しますね。そこを私はとても心配しています。にもかかわらず、多くの課税事業者がそこをわからずに登録してしまっているので、早く目を覚ましてもらい、登録の「取り下げ」をしてほしいなと思っています。

「ギリギリ登録」と「取り下げ」の2つをしていく

鈴木:改めて聞きたいのですが、インボイス制度を申請してしまった人はどうすればいいのでしょう。「取り下げしてほしい」ということですが、そもそも「取り下げ」ってできるんですか?

神田:簡単に取り下げできます。

鈴木:簡単に?

神田:はい。インボイス制度は登録番号制になのですが登録は任意です。義務ではありません。登録してもいいし、しなくてもいい。それで私は「インボイス制度ボイコット大作戦」ということで、あちこちで話をしています。結局、登録者が少なければ、導入されることはありません。制度自体が成り立たちませんから。

登録申請期限は9月30日です。みんなが登録申請期限ギリギリまで登録しなかったり、登録してしまったのだけれども後悔してる人とか、迷ってる人は、いったん「取り下げ」をするといいです。課税事業者も免税事業者もみんなが「ギリギリ登録」と「取り下げ」の2つをしていけば、導入されることはない。まず延期になります。

「取り下げ」は簡単です。ただ国税庁からひな型が出ていません。インボイスコールセンターに電話すれば教えてくれます。その内容を私の方でまとめて、ワードにして、誰でも『どんぶり勘定事務所』のサイトから無料ダウンロードできるようにしています。『全商連(全国商工団体連合会)』というところも、ちょっと形は違うけど、同じようなものを出しています。

鈴木:実際、動きとしてはどうですか?

神田:はい。取り下げ件数は増えていて、2月末時点で3,200件超えています。普段「取り下げ」の手続は、税理士の実務上、ほとんど出てきません。超レアケースで、そのような「取り下げ」の手続きがあることを知らない税理士も多いと思います。ですがインボイス制度にいたっては数ヶ月の調査で3,200件を超えているという調査結果が出ています。これは異常値だと思いますね。

今後も増えていくと思いますので、この取り下げ件数はインボイス制度が延期になるかならないかの鍵を握ると見ています。

鈴木:取り下げは、財務省とか国税庁や税務署のプレッシャーになっている?

神田:取り下げられるのは、かなり嫌だと思いますよ。インボイス以外の届け出書とか申請書の取り下げなんて、実務上ほとんどありませんからね。それが今ドーンと来てるわけですよ。「なんじゃこりゃ!」と絶対思っているはずです。ボクシングで言うと、ボディーブローが効いているような気がしますね。

Next: 「ボイコット大作戦」が有効?廃止に持ち込める可能性も

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