アシックスの弱者の戦略
一方で、ナイキとは逆の戦略をとっている日本企業があります。それはアシックスです。まずは業績をみてみましょう。コロナ禍で赤字となりましたが、ランニングブームに押されて業績が急回復しています。

出典:SPEEDAより作成
さらに今期の業績予想では、売上・利益共に過去最高を更新予定、その好調ぶりがよく分かります。背景にはスポーツイベントの再開による需要増・昨年の中国ロックダウンの影響があった反動・円安などが挙げられます。
しかし、グラフで気になる点もあります。それは長期間利益が低下し続けた、という事実です。その背景には広告宣伝費の増加、海外売上の減収などが挙げられます。詳しくは次の段落、アシックスの投資リスクは何か?で説明しますが、海外競合に押される形で売上が落ち込みました。しかし、現在は競合に対して少しづつ巻き返しを図っていること、コロナ禍で強化したネット販売・ネットサービス向上の取り組みが花開きつつあること。これらが要因となり、売上増に伴うコスト増の割合を抑えることに成功し、利益の大幅拡大という結果に表れているのです。
では、アシックスはどんな商品が売れているのでしょうか?
アシックスの主力事業はランニングシューズの開発・販売です。

出典:SPEEDAより作成
中でもトップアスリート向けの厚底ランニングシューズ「METASPEED」が好調です。

出典:アシックス
このシューズはなんと1足30,000円近くの値段ですから、業績に大きく貢献しています。また、アシックスの主要な顧客はアスリートであり、彼らに向けた早く走れる良いシューズを作る、という商品の質に強みがあります。実際にアシックスの社員の方から聞いた話ですが、ナイキのシューズはレース中に壊れてしまったケースもあるようです。アシックスは日本企業らしく、海外企業に負けない商品の質で勝負している、と考えられます。
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