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トヨタ「全固体電池」EVが世界を席巻する理由。5年遅れの中国勢を完全に引き離しへ=勝又壽良

トヨタ自動車は、EVに特化することなく、顧客の利便性を考慮しHV(ハイブリッド車)やFCV(燃料電池車)、水素エンジン車など幅広い自動車に「全方位」で取り組んでいる。こうした結果、現在のフルラインアップメーカーになったもので、今後の自動車の方向がどう変わろうと、世界トップであり続ける準備をしていることは間違いない。これが、どれだけ日本経済に貢献するか。雇用維持に繋がり、頼もしい限りである。(『 勝又壽良の経済時評 勝又壽良の経済時評 』勝又壽良)

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プロフィール:勝又壽良(かつまた ひさよし)
元『週刊東洋経済』編集長。静岡県出身。横浜市立大学商学部卒。経済学博士。1961年4月、東洋経済新報社編集局入社。週刊東洋経済編集長、取締役編集局長、主幹を経て退社。東海大学教養学部教授、教養学部長を歴任して独立。

トヨタ「全固体電池」で攻勢へ

トヨタ自動車と出光興産は、10月に全固体電池開発のタイムスケジュールを発表した。27年から全固体電池搭載のEV(電気自動車)が登場する予定だ。

全固体電池開発でしのぎを削る海外のライバルからは、「本当か」という懐疑の声も上がっている。それほど難しい技術の壁を乗り越えたのだ。海外からはまた、固定電話が携帯電話に小型化するほどの技術革新と評価されている。

日本は、リチウムイオン電池を世界で初めて商品化した国である。このリチウムイオン電池の次世代型電池に当たる全固体電池で先鞭を切れれば、世界へのさらなる貢献になる。

固定電話が、携帯電話に代わったのはリチウムイオン電池の出現による。だが、リチウムイオン電池は、頻繁に給電しなければならない煩わしさも発生している。全固体電池は、こういう点を解決して長時間保たせる。さらに、小型化するというイノベーションを実現する。

日本では、トヨタだけが全固体電池開発に取り組んでいるのではない。ホンダや日産も取り組んでいる。日本の自動車メーカーが揃ってEVの全固体電池化に成功すれば、日本の産業全体に大きな変革をもたらす。日本の自動車産業が、世界をリードするほかに、全固体電池を利用した地域航空や全自動運転車への活用も広がる。

日本経済再生への切り札が1つ増えるのだ。

中国は日本より5年遅れ

中国と韓国の電池業界幹部らは、全固体電池が期待どおりの効果をもたらすかどうかについて、それほど確信を持てないでいる。

「CATL(寧徳時代新能源科技)に近い人物によると、同社の研究者らは過去10年間にわたり固体電池の開発に取り組んできた。だが、コスト効率に優れた大量生産システムをいまだに発見できず、CATL社内ではトヨタが本当にそれを特定できたのか疑問視する声もある」。『フィナンシャル・タイムズ(FT)』(10月17日付)が報じた。

FTは、また次のようにも報じている。

韓国の業界幹部らも同様だ。「『製品を開発するのとそれを商品化するのとは全く異なる』とある幹部は言う。『トヨタは10年(以上)前から全固体電池の大量生産について語ってきたが、実現の時期は何度も先送りされてきた』。技術と生産規模の拡大に関する問題を克服できたとしても、妥当な期間内に全固体電池によってEVの製造コストが引き下げられ、EVの世界展開を加速できるのかという大きな疑問の答えは見えないままだ」。

中韓のメーカーが、以上のように懐疑的な発言をしているのには理由がある。それは、全固体電池では、充放電を繰り返すうちにどうしても固体電解質に亀裂が生じ、電池としての性能が悪化することが知られているからだ。

この問題を解決するためには、物理的にやわらかくで密着度も高い、割れにくい固体電解質が必要である。出光は2001年から、トヨタは2006年からそれぞれ独自に全固体電池に関する研究開発をスタートさせた。その後、2013年から両社は共同研究を開始した。

トヨタ側は、出光の持つノウハウを次のように説明している。

「出光の固体電解質の強みは、耐水性、イオン伝導性、やわらかさを実現できる作り方にある。材料の粒子を均一に並べて、柔軟性のある形状へ変化させやすい柔らかさに作り込むのだ。水に対して強い作り方を実現できる。そういう部分が、固体電解質の競争力の源泉になっている」と指摘し、出光が作る固体電解質の競争力の高さを指摘する。要するに、出光は職人芸で作り上げるているのだろう。中韓には、出光の職人芸である「神業技術」が不足しているのだ。これは、日本人特有の繊細さが成功へ導いたと言える。

中韓の同業メーカーが首を捻れば捻るほど、柔軟な固体電解質を製造する難しさが、成功の鍵を握っていることを証明している。

Next: 中国勢は5年遅れ。トヨタ・出光連合は「次世代電池」の最強チームだ

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