fbpx

トヨタ「全固体電池」EVが世界を席巻する理由。5年遅れの中国勢を完全に引き離しへ=勝又壽良

揺るぎないトヨタ収益力

トヨタは、全固体電池関連の世界特許で「断トツ」である。さらに、27年の全固体電池EVの発売に向けて「詰めの段階」に入っている。

これを支えるのは高いトヨタの「稼ぐ力」の健在だ。トヨタ自動車が、発表した今年9月中間(4~9月期)連結決算の営業利益率は、前年同期の6.4%を大幅に上回る11.8%の高水準に達した。高利益率で知られる米国テスラの9.4%を5四半期ぶりに抜いたのだ。

原動力は、ハイブリッド車(HV)を中心とする電動車の好調な販売である。半導体不足の緩和で供給力が高まったことと円安も大きく寄与した。自動車産業は、100年に1度の変革期を迎えている。EVへの転換だ。この競争につまずけば、トヨタと言えども屋台骨が揺らぐ事態を迎える。

だが、トヨタは高収益力を背景に、30年までにEVだけで5兆円を投資する。10月には米国で建設中の電池工場へ約80億ドル(約1兆2,000億円)を追加投資すると発表した。トヨタは、ハイブリッド車(HV)や燃料電池車(FCV)も力を入れる「全方位戦略」をとる。電動車全体の投資は30年までに8兆円以上とする大規模投資を行うのだ。

米国の市場調査会社「ガートナー」は9月、23年の世界のバッテリー式電気自動車(BEV)の販売台数を1,100万台と予想した。2021年の470万台から22年は900万台にまで増えた点を比較すると、販売台数の伸びが大きく鈍化する。こうしたEV需要減を織り込んで、企業は設備投資の抑制に動いている。

米GM、ホンダと推進していた50億ドル規模の新たなEVの共同開発計画を撤回した。LGエナジーソリューションと建設を進めているテネシー州のバッテリー工場と、ミシガン州の電気トラック工場の稼動日程も延期した。フォードは、EVへの投資計画を120億ドル削減する。

トヨタは、高収益に支えられEVやバッテリーで積極的投資を行えるのは、リチウムイオン電池EVで無駄な競争に巻き込まれなかった結果だ。収益基盤には、何らのヒビも入らないどころか逆に強化されている。トヨタは、独自にリチウムイオン電池の限界を見抜き、EVの本格的発展は全固体電池への移行を待って始まると計算し尽くしていた。それが、見事に的中したのだ。情勢判断は、「ドンピシャリ」である。

【関連】わざとEV出遅れ「トヨタ」の経営戦略が凄すぎる。リチウム電池に逆境到来も無傷、中国勢に育てさせたEV市場を一気に刈り取りへ=勝又壽良

企業にとって高収益を維持できることは、研究開発費を十分に使えるという意味でもある。欧米の自動車メーカーが、リチウムイオン電池EVで体力を消耗している間に、トヨタはこうした無駄な競争に巻き込まれずに、全固体電池開発に全力を挙げてきた。

企業にとって、技術開発の趨勢を見抜く力がいかに重要であるか。トヨタは、それを示したと言えよう。

Next: 「全固体電池」が日本を救う。経済再生への切り札に

1 2 3 4
いま読まれてます

この記事が気に入ったら
いいね!しよう

MONEY VOICEの最新情報をお届けします。

この記事が気に入ったらXでMONEY VOICEをフォロー