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トヨタ「全固体電池」EVが世界を席巻する理由。5年遅れの中国勢を完全に引き離しへ=勝又壽良

特許1位・3位のトヨタ連合

中国の電池業界のある専門家は、「次世代電池(全固体電池)の開発には長期にわたる技術の蓄積が必要であり、(全固体電池の)新技術をテコにライバルを一気に追い越すのは容易ではない」と指摘した。CATLも「電池開発に必要なのは電気化学の技術だ。われわれは電気化学に対する深い理解があり、自動車メーカーがこれを凌駕するのは一般論として難しい」としている。中国『財新』(5月27日付)が報じた。

前記の記事には、日本の全固体電池開発への情報が入っていない点で興味深い。中国の全固体電池開発は、日本よりも5年遅れているとされる。確かに、日本に関する情報アンテナを十分に張っていないことを窺わせている。それは、次の点に表れている。

1)次世代電池(全固体電池)の開発は、長期にわたる技術の蓄積が必要である。
2)電池開発に必要なのは電気化学の技術だ。自動車メーカーが、これを凌駕するのは一般的に難しい。

この2点は、日本の全固体電池開発情報について100%「無知」であることを示している。それは、世界の全固体電池開発の特許保有状態をまったく知らないからだ。世界全体で2000年から22年3月末までに公開された特許数を調べると、次のようになっている。

1位:トヨタ自動車
2位:パナソニックHD
3位:出光興産
4位:サムスン電子(韓国)
5位:村田製作所
6位:LG化学(韓国)
7位:住友電工
8位:富士フイルム
9位:現代自動車(韓国)
10位:LGエネルギーソリュウーション(韓国)
(注:世界特許2000~22年3月まで)
(出所)パテント・リザルト
(掲載)『日本経済新聞 電子版』(22年7月7日付)

トヨタ自動車が1,331件と首位。2位のパナソニックHD(445件)と3倍もの差がある。トヨタは1990年代から研究を手掛け、20年には全固体を搭載した試作車も他社に先駆けて完成させている。世界特許の上位5社中4社を日本勢が占めるが、韓国のサムスン電子やLG化学など海外勢も追い上げている。韓国勢は、電池の長寿命化など実用段階で性能に直結する特許を多く保有していると、指摘されている。

上位10社の中に、中国は1社も入っていない。この状態で、前述の2点を照らし合わせると、いかに世界の全固体電池開発に関する特許情報を知らないでいるかが分かる。

(1)では、全固体電池開発が長期にわたる技術蓄積を必要とするとしている。これは、換言すれば特許の保有状態を指す。世界特許で、トヨタ(1位)と出光興産(3位)が研究でタッグを組んでいることは、全固体電池開発で「世界最強」のチームと言える。

(2)では、電池開発は電気化学の技術で、自動車メーカーは不適と決め込んでいる。現実は、世界特許10位の中で、「化学メーカー」は6位のLG化学と8位の富士フイルムの2社だけだ。こういう現実をみると、中国国内の全固体電池開発に関する認識は完全にズレているとみるほかない。

要するに「5年遅れ」と言われるのは、こういう背景があるからだろう。

Next: 揺るぎないトヨタ収益力。全方位戦略で再び世界覇権を握る

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