金属資源・都市開発が不調の三菱商事
まずは三菱商事です。
主力事業は原料炭や銅山への資源投資の金属資源事業、北米や東南アジアでエネルギーの安定供給やカーボンニュートラルを目指す天然ガス事業、三菱自動車を傘下に持つ自動車事業などがあります。
24年3月期第2四半期の売上は▲10%(9兆5,610億円)、利益は▲35%(4,660億円)です。第一四半期ではそれぞれ▲13%、▲40%だったことを踏まえると、この第二四半期は業績が回復しているとも考えられます。
業績の変動要因を見てみましょう。
減益の理由は資源価格の下落によるものです。
特に原料炭の価格下落による影響が大きくなっています。昨年はロシア・ウクライナ情勢の影響で資源価格が高騰しました。しかし、現在は資源価格の沈静化が起きていることから、金属資源事業が大幅な減益となりました。
一方で天然ガスセグメントは、昨期の一時的な損失計上の反動で今期はプラス。また食料品の生産・調達を行う食品産業セグメントは株式売却で好調など、全ての事業が不調なわけではありません。
出典:三菱商事 決算説明資料
そして、通期で見ると天然ガスセグメントや自動車セグメントが業績を引っ張る見込みです。それに伴って当期純利益の通期決算を3%上方修正しました。
出典:三菱商事 決算説明資料
しかし、自動車セグメントの主力子会社である三菱自動車の決算短信を見ると、東南アジアでの販売台数は減少していることがわかります。その減少分を円安の影響でカバーしているにすぎません。
従って、天然ガスが好調であることは変わりありませんが、為替の影響で利益が上乗せされていることにも注意が必要です。
三菱商事は好調な事業もありますが、決して安心できる状態ではないと考えます。
為替の恩恵が大きい三井物産
三井物産はどうでしょうか?
同社の主力事業は、鉄鋼石や原料炭の開発・加工を行う金属資源事業、電力発電やLNG(液化天然ガス)の輸出入、乗用車の生産販売を手がける機械・インフラ事業が主力です。
24年3月期第2四半期の売上は▲14%(6兆3,774億円)、利益は▲15%(4,562億円)です。第一四半期ではそれぞれ▲15.4%、▲8.1%であったため、利益が伸び悩んでいます。
三井物産の特徴は、金属資源やエネルギーなど資源系の利益割合が高いことです。
出典:23年3月期 各社決算説明資料より作成
従って、資源価格の高騰が起これば業績を伸ばしやすいのですが、価格下落が起こるとダメージを受けやすい事業体質です。現在は主に鉄鉱石関連の価格沈静化の影響で、業績を圧迫しています。
一方で、通期では最終利益を約7%上方修正しました。
出典:三井物産決算説明資料より作成
しかし、残念ながら主要因は為替の影響によるものです。自動車やLNGの好調ではあるのですが、市況悪化の影響がそれを相殺し、結局は円安頼みの上方修正であることがわかります。あまり喜べる状況ではないと言えるでしょう。
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