5大商社は注目度が高いセクターです。これらの企業は日本独特のビジネスモデルであり、投資の神様ウォーレンバフェットからも一目を置かれる存在です。今回は5大商社、それぞれの最新決算を分析します。すでに商社に投資している人は、投資先の好調な事業・不調な事業がわかります。また、今から投資したい人にも必ず役に立つでしょう。(『 バリュー株投資家の見方|つばめ投資顧問 バリュー株投資家の見方|つばめ投資顧問 』佐々木悠)
プロフィール:佐々木悠(ささき はるか)
1996年、宮城県生まれ。東北学院高校、東京理科大学経営学部卒業。協同組織金融機関へ入社後、1級ファイナンシャル・プランニング技能士を取得。前職では投資信託を用いた資産形成提案や多重債務者への債務整理業務に従事。2022年につばめ投資顧問へ入社。
総合商社は何をしている企業?
総合商社業界と言っても、そこに属する企業は実は8社しかありません。そして、その業界で特に売上規模が大きい5つの会社があります。
それが、三菱商事、三井物産、伊藤忠商事、住友商事、丸紅であり、まとめて5大商社と言われています。この5社の23年3月期の売上合計は63兆円です。非常に大きな規模でビジネスを行っています。
では、具体的にどのような事業を行っているのでしょうか?
卸売と投資の2つを解説します。
伝統的な卸売ビジネス
総合商社が行っている代表的なビジネスは卸売です。様々な商品を仕入れ、需要がある業者や地域に卸し、その販売手数料・商材の売買差益で収益を得ています。販売先の需要変動に売上が左右されるものの、比較的ローリスクローリターンの手数料ビジネスと言えるでしょう。
この卸売は戦後から現在まで続く、伝統的なビジネスです。まさしくラーメンから戦車まで仕入れることで、世界中の様々な需要や今後の業界動向を知ることができます。
総合商社は伝統的な卸売ビジネスを通じて、時間をかけて世界中にネットワークを構築してきました。
そして、このネットワークを活かして、近年は積極的に投資ビジネスに参入しています。
近年盛んな投資ビジネス
今、商社が行っていることを一言で表せば、投資です。
バリューチェーンの川上分野では資源採掘や電力開発などのインフラ事業などへ資金を出資し、出資先の事業が利益が出た場合、その利益の一部を商社がもらう、(権益を得る)ビジネスを行っています。川中・川下部分ではコンビニや食料品メーカーなどへの事業投資を行っています。
特に川上領域は、卸売ビジネスと比べてハイリスクハイリターンといえます。金属資源や石油事業に投資を行っているため、資源価格の変動の影響を受けます。
つまり資源価格が下がれば、投資先の利益が減ることで減損が発生し、総合商社の業績も悪化します。
昨年は、ロシア・ウクライナ情勢の影響もあり、資源価格が高騰しました。それに伴い、総合商社の業績も拡大しました。
<例:石炭コークスの価格推移>
出典:GD Freak!
総合商社は投資事業が拡大したことにより、子会社や持分法適用会社、上場子会社など様々な形態の関連会社を持つことになりました。
それに伴い投資先企業の配当によるインカムゲインや、持分法利益による業績拡大などを目指すことで、利益成長を目指しています。
この投資ビジネスは卸売ビジネスとシナジーがあると言って良いでしょう。卸・仲介業のネットワークを活かして投資先企業に自社や関連会社のリソースを提供し、投資先企業の利益拡大に貢献しているのです。
ここまでをまとめると
- 売上規模が大きい5大商社が存在している
- 総合商社は主に卸売と投資を行っている
- 近年は投資先企業に自社のリソースを投入し、持分利益を拡大させる戦略をとっている
この前提のもと、最新の24年3月期第2四半期の決算がどうなっているのかを分析します。
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