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韓国経済は「半導体」と共に衰退へ。米国の“対中国規制”で八方塞がり、政治抗争が足をひっぱり再起不能に=勝又壽良

米商務次官(産業安全保障担当)のエステベス氏は3月27日、「米国は、(半導体製造装置の)主要コンポーネント(部品)に関してサービスを提供しないよう強く求めている。同盟国と協議を進めている」と説明したのだ。『ブルームバーグ』が伝えた。

米国は半導体製造装置に関し、従来の日蘭以外にも広く同盟国へ網を張ってきたことが分る。米国は、半導体の全てにおいて「対中包囲網」を築こうという狙いである。これによって、中国の「マルチパターニング技術」を封じるのだ。中国は、これを察知して早くもSKハイニックスへ圧力を掛けている。

中国商務部の王文涛部長は3月22日、SKハイニックス郭社長へ「中国投資を増やし中国に深く根ざして、中国の高品質発展がもたらす成長機会を共有することを希望する」と述べた。中国国営メディア『環球時報 英語版』は25日、「SKハイニックスに対し、中国市場の重要性を強調すると同時に、中国で『さらに大きな成功』を収めたいという決意を見せてくれ」と主張するまでになっている。中国が、いかに韓国半導体へ依存しているかを示している。同じことは、対中依存の韓国にも言えるのだ。

韓国半導体企業は、最終的に米国の意向を受入れて縮小せざるを得なくなろう。その時期がいつ来るかだ。米中対立の帰趨にかかっている。習近平氏は3月27日、米国経営者の一団と会見し、中国への対内直接投資を呼び掛けている。対米経済関係を切りたくないという切実なシグナルだ。こういう状況を知り抜いている米国は、中国経済へ効果的な方法で圧力をかけ続けるに違いない。中国政府を信頼していないからだ。

韓国半導体は、少しずつ中国から手を引く微妙な戦略が求められる。これまで最大の成長市場である中国の占めるウエイトが、下がることは確実な状況であろう。韓国は、その代替市場を開拓しなくてはならないが、ここで大きな障害が出ている。それは、今後の世界半導体が非メモリへ移行することだ。韓国は、この分野で大きく出遅れているのである。

サムスン財閥の限界

韓国半導体トップ企業は、サムスン電子である。日本から半導体技術者を毎週末、ソウルへ高額のアルバイト料金で呼び寄せて培った技術で成長できた企業だ。

当時、日本からメモリ半導体技術だけを習得し、非メモリ半導体までは手が回らなかった経緯がある。この「手落ち」が、現在まで響いている。サムスンは、非メモリ半導体で台湾のTSMCに大きく引き離されているからだ。今後の世界半導体の主流が、非メモリ半導体へ移る状況だけに、サムスンにとっては痛恨のミスとなった。

それだけでない。サムスンが韓国の支配形態である財閥手法によって経営されていることだ。財閥は、株式会社制度の根幹である出資と経営の分離がされていない意味で、前近代的な経営手法である。創業家が、経営実権を握っているのだ。サムスンも創業家の李一族が同じスタイルを踏襲している。

サムスンの現在の経営者は、李家の三代目の李在鎔(イ・ジェヨン)会長である。2014年5月、二代目の李健熙(イ・ゴンヒ)氏が病で倒れ、長男の李在鎔氏が跡を継いだ。先代は2010年に、「10年後、現在の事業がすべて市場から消える」と訴えて社内に危機意識を植え付けようとした。2014年以降の10年間、サムスンの売上高や営業利益はほぼ横ばい状況であることから、前記の「10年後」目標は根付かなかった。

この裏には、三代目会長の李氏が朴槿恵(パク・クネ)大統領(当時)の弾劾事件とからんで贈賄事件に巻き込まれ、被告の身であったことも響いている。経営に専念できなかったのだ。ここに、財閥制度の矛盾が現れている。創業家が経営トップにいるからこそ招いた経営の空白である。創業家以外から経営トップが出ていれば、こういう空白は起こらなかったのだ。

Next: サムスンからの技術漏洩も?韓国経済は半導体と盛衰を共にしている…

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