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韓国経済は「半導体」と共に衰退へ。米国の“対中国規制”で八方塞がり、政治抗争が足をひっぱり再起不能に=勝又壽良

韓国半導体は今、かつてない大きな衝撃にさらされている。米中対立がもたらした「渦」に巻き込まれているからだ。日本半導体はかつて、日米半導体摩擦で苦杯をなめさせられ大きく後退した。半導体産業は、国際戦略製品であることから世界政治の動きに翻弄される宿命を負っている。韓国半導体はこれから、日本の味わった苦難の道を通るリスクが高まっている。そうなれば、韓国のGDP成長率は低下必至だ。国内政治は、さらなる抗争に陥る危険性を秘めている。(『 勝又壽良の経済時評 勝又壽良の経済時評 』勝又壽良)

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プロフィール:勝又壽良(かつまた ひさよし)
元『週刊東洋経済』編集長。静岡県出身。横浜市立大学商学部卒。経済学博士。1961年4月、東洋経済新報社編集局入社。週刊東洋経済編集長、取締役編集局長、主幹を経て退社。東海大学教養学部教授、教養学部長を歴任して独立。

メモリ半導体の王者

韓国政治は現在、左右両派で厳しい対立が続いている。妥協の余地がない、徹底した非難攻撃をしあっているのだ。これは、韓国朱子学の悪弊で「自己の絶対性」が災いしている。

現在の韓国社会は、医学部学生増員問題をめぐる反対論で、大学病院の教授までが総辞任するという緊急事態だ。目的貫徹のためには、手段を選ばない結果による大混乱である。今後、韓国経済が低成長路線に陥れば、左派の要求はエスカレートして、右派との対立は沸点に達するだろう。

韓国半導体の世界総合シェア(2022年)は17.7%だ。2013年以降10年間、世界2位を維持している。半導体の種類別にみると、韓国企業はメモリ半導体全体の60.5%を占め、うちDRAMは70.5%、NAND型フラッシュメモリは52.6%を占めている。

このように、メモリ半導体が圧倒的な主体である。だが、高付加価値の非メモリ半導体では、台湾のTSMCに大きく引き離されている。韓国半導体には、これが最大の「弱み」になっている。

韓国経済を左右するのは、半導体の輸出動向である。韓国輸出額の19%(2022年)が半導体である。そのうち、対中輸出は40%も占めている。実に対中半導体輸出が、韓国輸出全体を大きく左右する事態となっている。具体的には、中国へ進出している半導体工場が支えている。

サムスン電子とSKハイニックスは、中国で大規模な投資を行っている。サムスン電子は陝西省西安市の工場に約3兆6,000億円を投資しており、江蘇省蘇州市には半導体後工程工場を有している。SKハイニックスは、江蘇省無錫市と遼寧省大連市の工場に約3兆8,000億円以上を投資し、重慶市では約375億円で半導体後工程の生産拠点を擁している。韓国半導体は、中国で約7兆4,000億円もの設備投資をしている計算だ。

前記の中国工場で、サムスン電子はNAND型フラッシュメモリの40%を生産する。SKハイニックスは、DRAMの40%とNAND型フラッシュメモリの20%をそれぞれ製造している。韓国企業にとって、中国市場は世界の半導体シェアを堅持するために必要不可欠な存在である。以上は、JETROの研究資料(2024年1月)による。

韓国半導体は、中国での巨額投資と高い生産シェアが示すように、米中対立の狭間で揺れ動く根本的な弱点を抱えているのだ。これが、韓国経済の命取りになる「地雷源」である。

既述のように半導体は、国際戦略製品である。武器の部品にも使用されるので一国の安全保障に深く変わっている。特に、中国の「台湾侵攻」リスクが現実問題として取り沙汰される事態において、米国は中国へ先端半導体を輸出させないだけでなく、中国での製造も禁じるべく製造装置の輸出も規制している。つい最近では、米国から同盟国へ先端半導体製造装置以外にも、部品やメンテナンスをしないように厳しい条件が要請される事態になった。この影響は、韓国半導体へも必ず及ぶのだ。

韓国にも及ぶ「対中国」規制

昨年、中国のファーウェイが新型スマホを発売し7ナノ(10億分の1メートル)の先端半導体が使われていたことから、米国は一層の警戒観を強めている。中国は、この7ナノを先端半導体装置によって製造したものでない。つまり、古い露光装置を使いながら先端半導体を製造した可能が指摘されている。

この製造では、「マルチパターニング技術」という面倒な過程が導入されている。従来1回で済む露光を複数のパターンに分割し、あとでそのパターンを重ね合わせるものである。手間暇かかって、ズレを生じやすいという難点があるという。こういう「マルチパターニング技術」は、「手作り」同様の製造過程である。名人芸のようなもので、とても量産化は不可能とされている。だがその後、米国は中国へ新たな疑問を持つにいたった。

中国は昨年、世界中から中古の半導体製造装置まで買い漁っていることが判明した。それは、前記の「マルチパターニング技術」を使って先端半導体をつくるという人海戦術に出てきたという危惧の念を深めたのだ。これを防ぐには、日米蘭三カ国のほかに韓国などにも、レジェンド半導体製造装置の部品やメンテナンスを禁じるほかないのだ。

米国は最近、こういう結論を出して、同盟国へ要請した。

Next: サムスン財閥の限界。非メモリ半導体に弱い韓国に活路は見えない

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