パランティアのシステムは莫大な情報・資料を飲み込んで、そこから人間には到底かなわないスピードで分析と解析と解答を出すのだが、ファイザーがそのシステムを使って創薬に突き進むというのだから、かなり期待できるのではないか。
ちなみに、製薬大手でがんの治療薬にかかわっている主要プレイヤーは以下の企業がある。
・ロシュ(スイス)
・ノバルティス(スイス)
・ブリストル・マイヤースクイブ(アメリカ)
・ファイザー(アメリカ)
・メルク(アメリカ)
・アストラゼネカ(イギリス)
・サノフィ(アメリカ)
・イーライリリー(アメリカ)
・ギリアド・サイエンシズ(アメリカ)
・アッヴィー(アメリカ)
ファイザーは「次」を見据えて手を打っている
2023年3月4日、ファイザーはがん治療薬を強みとする製薬企業シージェンを約430億ドル(約6兆4,142億円)で買収した。
ファイザーはコロナのワクチンで莫大な儲けを手にしたのだが、コロナが収束するにつれてワクチンの売上が急減して決算のミスも続いている。しかし、莫大な現金を手にしているファイザーは「次」を見据えて手を打っていて、それが「がんの治療薬」の分野であった。
買収したシージェンはがん治療に対して非常に興味深い製薬を保持していた企業だった。抗がん剤といえば、副作用が非常に強くて患者の中には拒否する人がいるほどなのだが、これを何とかするための治療薬として抗体薬物複合体(ADC)という複雑な治療薬が開発されていた。
現在の抗がん剤はがん細胞だけでなく通常の細胞まで攻撃する。しかし、ADCでは通常の細胞への攻撃を最小限に抑えてがん細胞だけを攻撃するように作られた治療薬である。シージェンはまさにこの分野をリードしている企業であった。
抗がん剤の最大の問題である強烈な副作用を低減させて、がん細胞を確実に殺傷するADCは、その有効性と安全性がたしかめられると爆発的に伸びていくとされている。今後はADCの市場は現在の3倍には伸びるのではないかと予測されている。
シージェンは他にも有力ながん治療薬をポートフォリオとして持っているのだが、これがすべてファイザーのものになる。ファイザーはこれでがん治療薬に関してはトップ企業へとなっていくだろう。
この分野ではライバル企業となるのがアッヴィやギリアド・サイエンシズである。日本では第一三共がメルクやアストラゼネカと提携してこの分野を取りに行こうとしている。今後は、メルクも、ブリストル・マイヤースクイブも、イギリスのGSKも、この分野に注力してくるだろう。