空売りレポートの中身
それでは今回のレポートの中身を見てみましょう。
このレポートでは特に不正会計について指摘されています。
もし本当に会計をごまかしているということであれば、レーザーテックの輝かしい業績が嘘だったということになってしまいます。
334ページに及ぶ膨大なレポートですが、書かれている内容的にはいくつかに集約されます。
<売れていない>
レーザーテックの商品であるマスクブランクス検査装置が、ライバル会社のKLAなどのものに比べてはるかに品質が劣っていて、検査装置として使い物になっていないと書かれています。
その証拠として会計情報があげられています。
スコーピオンが特に注目しているのが棚卸資産です。
レーザーテックが抱えている在庫が増えていると指摘しています。
商品を作ってはいるものの売れておらず、在庫が売れないということになれば損失として計上しなければならず、この在庫を会計的に処分したら2019年からの累積利益の7割は失われてしまうと書かれています。
商品が売れないので、物によっては75%引きの価格で売ろうとしていたという話も載っています。
値下げして売らなければならないということになると、棚卸資産を減損処理することが会計的な決まりとなります。
しかし、レーザーテックは減損処理を行っておらず、なぜ減損処理していないかというと、レーザーテックの財務諸表に載っている棚卸資産は完成品ではなく仕掛品や原材料として計上されているからという会計上のトリックを使っているからだと書かれています。
これを裏付けるもっともらしい背景として、レーザーテックが2018年に監査法人を変更したことをあげています。
不正会計を行う企業は、監査法人に指摘されることを嫌がり、監査法人を変えることが実際にあるからです。
レーザーテックが監査法人を変えたことは事実であり、これ自体が証拠になるわけではありませんが、疑う根拠としています。
また、レーザーテックの商品が使い物にならないということが書かれていて、TSMCからも見放されていて、製造現場で使われているのではなく、研究開発用として置かれているだけだとしています。
もしこれが本当だとすると、今後売上が伸びていくとは考えにくいということになります。
使い物にならないのであれば全く売れないはずではないかという指摘に対しても反論がされていて、業界最大手であるKLAへのけん制のためとしています。
1社だけに独占されることは買う方としては避けたいので、KLAにプレッシャーをかけるためにも今はレーザーテックから仕方なく買っているということです。
スコーピオンのレポートはかなり信ぴょう性があるように書かれていて、このレポートを読んだ一部の投資家は売りにまわる可能性もあると考えています。
真実性はさておき、現地調査やリーガルチェックなどは周到に行われていて、執念深さを感じます。
スコーピオンのやり方は決してきれいなものとは言えませんが、一つの方法としてはありですし、本当に不正会計だったとしたらこのレポートはまっとうな指摘となります。
一概にスコーピオンが悪いとは言えません。


