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半年で株価半減「SCREEN」は買いの好機か?半導体銘柄の選び方を長期投資のプロが解説=栫井駿介

2024年8月5日に日経平均が大暴落し、半導体関連の株価も大きく下がりました。SCREENも同様に下がりましたが、他の半導体銘柄は株価が戻ってきている中で、SCREENはあまり戻っていません。なぜなのでしょうか。今回はSCREENについて、当社つばめ投資顧問のアナリストで半導体に詳しい元村さんに解説していただきます。(『 バリュー株投資家の見方|つばめ投資顧問 バリュー株投資家の見方|つばめ投資顧問 』栫井駿介)

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プロフィール:栫井駿介(かこいしゅんすけ)
株式投資アドバイザー、証券アナリスト。1986年、鹿児島県生まれ。県立鶴丸高校、東京大学経済学部卒業。大手証券会社にて投資銀行業務に従事した後、2016年に独立しつばめ投資顧問設立。2011年、証券アナリスト第2次レベル試験合格。2015年、大前研一氏が主宰するBOND-BBTプログラムにてMBA取得。

割安?落とし穴?

株価の動きを見ると、半導体の盛り上がりの恩恵を受け、一時は2万円というところまで上がりました。
しかし、7月下旬から8月上旬にかけて大きく下がり、今ではピークの半分くらいとなっています。

SCREENホールディングス<7735> 週足(SBI証券提供)

SCREENホールディングス<7735> 週足(SBI証券提供)

元々の株価がバブル的に高騰していたのであればこの下落にもうなずけるのですが、PERは14倍くらいと平均的な数字ですし、利回りも平均的な水準です。

 

SCREENは半導体製造装置の中で世界一のシェアをいくつかの分野で持っていて、ただでさえ半導体が伸びると言われている中で、かなり強い地位を占めているのではないかと思われ、成長が期待できます。

 

PERが低いということは、割安だという可能性と、落とし穴が潜んでいる可能性が考えられます。

そのあたりの実態はどうなのかということを元村さんに解説してもらいます。

SCREENはどんな会社?

栫井:まず、SCREENはどんな会社なのでしょうか。

元村:SCREENは一言で言えば装置・機器メーカーです。主力の製品は半導体の洗浄装置になります。

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近年の成長は著しく、特にコロナショックの後には売上も利益率も大きく上がっています。

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その売上の大部分が半導体洗浄装置となっています。

栫井:半導体以外もやってはいるけど大きくけん引しているのが半導体ということですね。

元村:そうですね。当初は印刷系の機器から始まった会社で、今もグラフィックアート機器などの形で残っていますが、やはり今は半導体洗浄装置が大きく伸びてきているということです。

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なぜ半導体洗浄装置が伸びてきているかというと、実は半導体の製造プロセスの3~4割が洗浄工程なのです。このプロセスは1回で終わるものではなく何回も繰り返して行われ、さらに半導体が微細化(≒高性能化)するほど多く繰り返されることになります。半導体の技術は年々進化していて、同時に洗浄工程も増え、SCREENも恩恵を受けています。

栫井:目に見えないほど微細化した半導体に塵や埃が付いていたら使えないのでとにかく洗浄するということですね。

元村:そうですね。

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出典:SEMIジャーナル

半導体の洗浄装置は大きく2種類あって、バッチ式と枚葉式です。「バッチ式」は洗浄槽に数十枚の半導体を浸けて一気に洗浄するのに対し、「枚葉式」は1枚ずつ洗浄するやり方です。バッチ式の方が同時に複数枚洗浄できるので効率は良いのですが、1つに塵などが入ってしまうとその他の半導体もダメになってしまうリスクがあり、現在の先端半導体においては基本的には枚葉式が採用されています。

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出典:日経XTech

このような背景もあり、SCREENは半導体の微細化が進むにつれて枚葉式の洗浄装置の出荷比率を高めてきました。
枚葉式の洗浄装置の中でも先端品のものに関しては単価も高くなります。

栫井:SCREENは特に枚葉式の洗浄装置に強みを持っているということですか。

元村:そうですね、そこに力を入れてきたということです。

栫井:微細化された先端半導体の需要が高まるにつれてますますSCREENの力が必要になってくるということですね。

元村:その通りです。

 

栫井:この枚葉式の洗浄装置において、SCREENのライバルはどこになるのでしょうか。

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出典:EE TIMES

元村:特に枚葉式の洗浄装置におけるライバル企業としては、東京エレクトロン、ラムリサーチ(アメリカ)、SEMES(Samsung子会社)といったところです。

栫井:半導体銘柄で有名な東京エレクトロンと競っているということですね。

 

元村:半導体洗浄装置が今後どうなっていくかということですが、結論から言うと非常に良好です。

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出典:SDKI

2036年に向けて年平均7.5%くらいのペースで市場は拡大すると見込まれています。その中でも枚葉式洗浄装置の比率は高いです。もちろん自動運転向けや通信端末向けの、先端半導体ではないものの需要も伸びて、バッチ式の洗浄装置の需要も伸びることになりますが、比率としては先端品の方が高く、SCREENにとって良い風が吹いている状況です。
地域的には韓国、台湾、中国といったアジア・太平洋が変わらず伸びてくるということですが、北米が大きくなってくるようです。

栫井:アメリカで半導体の工場を作ろうということで多額の補助金が出たりしていますよね。

元村:そうですね、SCREENにとって追い風が吹いています。

Next: 追い風が吹いているのになぜ株安?東京エレクトロンと比較すると…

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