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トヨタが電気自動車でも覇権を握るこれだけの根拠。EV「普及の壁」を超える3つの革新技術=勝又壽良

昨年、中国で発生した新エネルギー車の火災発生率は、曽氏によれば1万台当たり0.96台としている。中国のEV保有台数2500万台に適用すれば、年間に発生した火災が2,400件にも達する。電池メーカーとしての責任は重いのだ。

曽氏は、電池による故障率を100万分の1と公表してきたが、実際は1,000分の1であると実状を率直に明かした。これまで、大変「過小」データを公表してきた。これに従い、EV火災保険料が算定されていたならば、保険会社は大損を被っている。実際の火災発生率が高いからだ。

日本のEV火災事故は、どのくらい発生しているのか。日本でEVの先発企業の日産は、次のように発表をしている。2010年12月の初代EV「リーフ」発売から2019年までの10年間、グローバル累計販売で34万台発売した。この間に、バッテリー起因の火災を起こしていないと明らかにした。

日本EVは、中国EVの火災発生と比べて、高レベルの品質管理が行われていることを証明している。

トヨタEVが世界カー

トヨタ自動車は現在、EV「世界カー」とも言うべき高品質のEVを開発している。26年から世界市場へ投入するが、全固体電池ではない。現在のリチウムイオン電池の性能を一段と高めた「パフォーマンス型電池」を登載する。これは、中国EVに登載されている電池性能と次元が異なる、トヨタ独自の開発である。次のような内容だ。

1)エネルギー密度を高める:航続距離1,000kmを実現する
2)急速充電を行う:20分以下で充電を完了する
3)コスト削減:20%削減する

1回の充電で、1,000kmもの走行が可能になる。中国の400km程度からみれば、2.5倍の航続距離になる。しかも、給電時間が嘘のように短縮される。中国では、急速充電ですら30分から1時間もかかっている。普通充電では、6~8時間とされる。この長い給電時間が、一挙に短縮される。しかも、電池コストが20%も削減できるのだ。

中国EVは、自動車本来の走行・安全などの機能よりも「便宜性」を重視している。車内にクーラボックスをつけるとか、スマホと連動させるとか「付随機能」を争っている。ここが盲点である。

自動車本来の機能追求を棚上げして、付随機能で競争しても商品性の魅力は限定される。世界市場は、そういう「オマケ機能」よりも本質的な機能改善を求めている。EVが現在、「キャズム」に陥っている背景は、本質的機能の改善が遅れている結果だ。中国EVは、別次元へと迷い込んだ状態にある。

トヨタは、EVのコスト競争力を高めるべく、車体部品を一体成型する「ギガキャスト」を採用する。米国テスラがすでに採用している方式をさらに練り上げている。車体を3分割して自動走行させるので、ベルトコンベアが不要になる。自動車工場の現場からコンベアが消えることで、「生産風景が一変する」とされている。

ベルトコンベアは、もともと英国のパン屋が20世紀初めに採用した技術である。それを米国フォードが自動車組み立て現場に応用したものだ。生産コストが劇的に下がり、大衆が自動車を買えるレベルまで価格が下がった。この歴史的な産物のベルトコンベアが消えるのだ。

これらを通じ、量産車の生産準備期間・生産工程・工場投資などは、従来の2分の1に削減できる。大幅な固定費の削減が可能になれば、EV車体コストは、単純に言えば半分以下に切り下げられる計算だろう。

トヨタは、これによってデジタル製造現場になるので、これまでの「部品すり合わせが不要」としている。すべて、自動化するのだ。

Next: 日本の電池開発力が開花。トヨタはどう世界2強と戦う?

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