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トヨタが電気自動車でも覇権を握るこれだけの根拠。EV「普及の壁」を超える3つの革新技術=勝又壽良

これと並んで進むのが、部品の小型化である。これにより、車室および荷室空間の拡大と空気抵抗の低減を実現する。ロケットの極超音速技術を応用した、空力技術を採用するとしている。三菱重工業が協力して、ロケットの極超音速空力技術を応用し、新たな空気抵抗削減技術をEVへ適用する。これによって、航続距離1000kmへの延長を実現するほかに、乗り心地の改善にも寄与するという。

トヨタEVの特色を要約すれば、電池性能を高めるべく総合的なアイデアを集約している。それは、車体の軽量化と空力性能によって、航続距離の効率化を進めることだ。中国EVが、スマホ利用という面へ進んでいる点と根本的に異なっている。

トヨタEVは、中国EVの世界化を阻止するに十分な機能を備えている。トヨタは勝てるのだ。

日本の電池開発力開花

トヨタ自動車や日産自動車などの自動車メーカーは、EVの車載電池の国内製造に1兆円の設備投資を行う。経済産業省は9月、最大3,479億円を支援するが、官民で電池供給網を構築する。経産省は、2023年から補助金支給を始め、総額で6,000億円強になる。今回で、国内における車載電池の供給網が整う。中国が、電池へ過剰な補助金を付けているが、日本も効率的な支援策で対抗するのだ。

日本の強みは、技術開発力にある。日本触媒は、福岡県にEV向け電池材料の工場を建設する。リチウムイオン電池の寿命を1.6倍に延ばせる電解質の生産能力を10倍に引き上げる。375億円を投じ、2028年の稼働をめざす。福岡県でトヨタ自動車が電池工場を建設するなど、九州でEV向け部材の供給網が広がっている。増産体制を整え、先行する中国勢に対抗する姿勢を明確に打ち出している。

トヨタは、福岡県にEV向けリチウムイオン電池工場を新設する。電池は、高級車ブランド「レクサス」を生産する同県の工場へ供給する。2025年ごろに着工し、28年以降の稼働を目指す。日本勢は九州にEVの一大供給網を築き、輸出拡大に向けた反攻の足がかりにする。経産省が、車載電池の製造に補助金を給付するのも、こういうEV輸出への支援目標がある。

トヨタは、2030年までに電池を中心にEV関連に5兆円を投資する計画だ。電池ではすでに米国で累計2兆円の投資を決め、日本ではパナソニックホールディングス(HD)との共同出資会社の姫路工場(兵庫県姫路市)などに3,000億円規模の投資を計画している。

トヨタがここまでEVへ向けて積極姿勢なのは、自社EVの品質に揺るぎない自信を持っている証拠であろう。トヨタは、2030年のEV販売目標を350万台としている。23年のEV販売実績が約10万台であるから、「大飛躍」になる。品質とコストで勝負できる見通しを持っているのであろう。ただ、26年のEV150万台目標は、現下のEV販売戦線が沈滞していることから100万台へ下方修正した。

世界EV2強と対抗へ

現在のEVは、世界で米国テスラと中国BYDが双璧である。23年の販売実績は、つぎの通りである。

1位:テスラ(180万台)
2位:BYD(157万台)

トヨタは、この「両雄」へ向って25年に100万台目標を掲げている。150万台から下方修正したが、テスラとBYDと激突する形である。世界一のトヨタ・ブランドの看板を背にした販売戦になる。しかも、30年には350万台目標である。テスラとBYDにとっては、脅威であろう。トヨタは、35年に最高級ブランドのレクサスの新車を全てEVに切替える。こうして「EV=最高級」というイメージを打ち立てる戦略だ。

Next: EVを悩ませている「キャズム」をトヨタが一掃する?今後の戦略

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