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イギリス離脱決定。崩壊する「EUの理想」と3つの危機シナリオ=吉田繁治

EUを揺るがせた難民問題の原因

このEUを揺るがせたのは、アラブやアフリカからの難民問題(3200万人)です。

特に最近は、IS(イスラム国)も含み、内戦が続くシリアからトルコを経て、EU加盟のギリシャに入国する人たちが多い。国外に逃れた難民は410万人、シリア国内では1170万人と言われます。

賃金が高いドイツに逃れた難民は、2015年で110万人とされています。毎月10万人が押し寄せていますが、メルケル首相は受け入れを表明しているので、国内の反対が盛り上がっています(国民の40%が反対)。2015年11月にパリで起きた同時多発テロ、ドイツ各地での暴行や窃盗を、警察が「難民がらみ」と発表しているのも大きな理由です。

英国のEU離脱問題に波及

英国でEU離脱問題が起こったのは、加盟国を襲う難民問題、および国家主権回復への動きの高まりからです。保守層が多い60歳以上には離脱派が多く、30歳以下には残留派が多い。欧州諸国では、この問題に国民がとても高い関心をもって、英国の開票状況を注視していました。

想定される3つの危機シナリオ

英国のEU離脱による影響として考えられるのは以下です。

(1)自由貿易圏からの離脱による英国経済の弱体化。これはEU加盟国との貿易に関税がかかるようになるからです。
(2)金融面でのシティ・オブ・ロンドンの地位急低下。EUからの資金流入が減るからです。
(3)他加盟国のEU離脱を誘発。英国を皮切りにEU解体の動きが生じる可能性があります。

英国のEU離脱懸念が出始めて、英国ポンドは対円で163円から150円(6月中旬)まで下がりました。その後、残留派が勝つとの見込みから155円に戻していましたが、この週末のEU離脱決定を受け139円に急落しています。

南欧危機から回復していない経済

ギリシャ、スペイン、ポルトガルの財政問題は、ECBによる国債買いで小康を得ていますが、問題の根であるギリシャ、スペイン、ポルトガルの経済力は回復していないのです。その表れは、高い失業率です。

ギリシャ24.1%(5月)、スペイン20.1%(4月)、ポルトガル12.4%(第一四半期)、イタリア11.7%、フランス9.9%です。ユーロ圏全体の失業率は10.2%(4月)と高い状態を続けています。ドイツですら6.1%(5月)です。

失業率が15%を超えている経済は、恐慌に近いと言うべきです。
(注)日本の失業は3.2%(4月)、米国4.7%(5月)です。両国とも自然成長率に近い

2012年の南欧危機以降、ECBのマネー増発とマイナス金利の金融政策で、ユーロ経済は回復したかのように言われていますが、日本ではほとんど報じられないその実態は、物価が下がるデフレ型の大不況の持続です。3カ月国債の短期金利もマイナス0.27%であり、マイナス金利策を敷く日本の-0.03%より低い。

今後、ECBの金融政策で隠れていた欧州経済の悪さが露呈するでしょう。

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ビジネス知識源:経営の成功原理と実践原則』(2015年6月24日号)より一部抜粋、再構成
※記事タイトル、太字はMONEY VOICE編集部による

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