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なぜトヨタは「25%関税」に動じず、駆け込み輸出もしないのか。大荒れの自動車業界を制する次の一手=勝又壽良

NTT提携がプラス

トヨタは、「交通事故死傷者ゼロ社会の実現」を目指す、先進運転支援システム(ADAS)など車両の改良を進めている。ただ、これだけでは効果に限界があるので、車両やドライバーに加え、交通環境としてNTTの通信基盤「IOWN=アイオン」を事故防止に生かすことになった。車と車、車と道路なども連携させて事故の予知や回避に役立てるとしている。

NTTは24年11月、名古屋市でシャトル便としてバス定期運行の実証実験を始めた。交通量の多い都市部における幹線道路で、自動運転車両による定期運行は全国初の取組である。運転席にドライバーが座る「レベル2」で、都市部の幹線道路を走るものの、将来は運転手なしで運行が可能になる「レベル4」の実現を見据えたデータ収集である。定期運行の実証実験は、往復9.3キロメートルを走る。片側3〜4車線ある大通りで、制限速度は時速60キロメートルだ。ここで得られるデータが、トヨタにとっても有益だ。

総務省は、「レベル4」の自動運転の普及に向け、2026年度にも専用の電波を割り当てる。車線合流や隊列走行といった、完全自動に近い安定した通信で自動運転の精度を高めるもの。米欧と同じ周波数帯にすることで、対応車両や関連部品の開発を後押しする。関連するルール制定などの環境を整えるものだ。これは、日本が全自動運転車で世界標準技術への「前準備」を意味する。「ガラパゴス化」を避けようという配慮であろう。

車両が、専用電波を通じて近くの車や道路上の管制設備と情報を直接やりとりし、人が介在せずに周囲の車の動きに合わせた車線変更、合流などができるようになるという。車載センサーやカメラの情報に追加することで、衝突を回避しやすくなるもの。ここで用いられるのは、NTTが開発した「IOWN」とみられる。

IOWNは、光通信技術を基盤とした次世代ネットワーク構想で、低遅延・高容量・低消費電力を実現する。この技術は、自動運転車両間の通信や遠隔操作、リアルタイムデータ処理において極めて有効と太鼓判を押されている。特に、車線合流や隊列走行といった高度な自動運転機能には、安定した通信環境が不可欠である。IOWNの技術がその基盤を支えるとみられる。IOWNは、次世代通信網「6G」の最有力候補である。世界標準技術化が予想される技術システムだ。日本にとって、「お宝技術」である。

トヨタは、ソフトが車両の機能や特徴を決める「ソフトウエア・デファインド・ビークル(SDV)」の開発を進めている。NTTとの提携では、この車載ソフトとNTTの通信基盤に加え、両社でAI基盤を開発して組み合わせることになった。データを収集してAIに学習させ、危険な状況を探知することで、ドライバーの運転を支援するのだ。

政府が描いている自動運転車へのスケジュールは次の通りだ。

1)2030年頃に 専用電波対応の自動車が普及
2)2040年頃に レベル4の自動運転が一般化

政府が、ここまで具体的なスケジュールを立てていることは、技術的な裏付けができているからだろう。

Next: トヨタが自動運転をリード?国策半導体企業「ラピダス」も裏方で支援

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